第五十九審 『吹雪の意思』
失踪です。
お待たせいたしました。ご注文の『謎』でございます。
数十分後、雪が降る中、僕は一人で外へ出ていた。
昨日、ルナから一件の電話があった。
『君もここへ来たついでに周辺の探索をしておいてくれ』との事だ。合流にはまだ時間がかかるらしい。
生憎の天候だが、他にやることも無いためとりあえず外へ出てきたが、いつもよりも見るからに人通りが少ない。
イザナギが言っていた領民への警告の影響か、天候の影響かは分からないが、どちらにせよ僕にとっては周囲を見渡しやすくて少しありがたかった。
ただ、かなり寒いな……前日との寒暖差がかなり大きい。一体どうなっているんだと思わざるを得ない。
「そこのお兄さん、こんな天気の中一人で歩いてどうしたの?」
視界の外から声をかけられる。
反射的に声がした方向に視線を向けると、この天候に見合わない薄着で金髪ウルフカットの女が、出店のカウンターからこちらを見つめていた。
「……いや、この場所に来るのは初めてだから、近くを見て回ろうと思って」
「物好きだねぇ。こんな雪が降る中出かけようと思うだなんて」
「それが良いんだ。人が多いのはあんまり好きじゃない。こういう環境の方が、息苦しさを感じないからな。そういうお前はかなり薄着なように見えるが、寒くないのか?」
「うーん……ちょっと肌寒いくらいかな」
「嘘だろ……僕でも割と寒いくらいなのに」
「いやぁ、着込むのが面倒なんだよねぇ。それに、あんまり厚着するとなんか窮屈だし。にしても君、そのナリは観光客かな?どの道、災難だね、家に帰れない上に雪にまで降られるなんて」
「だから雪に関しては気にしてないんだが……」
「そういえばこの雪、どうやら明確に何かが原因らしいんだよね。そんな話、聞いたことない?」
「……いや、聞いたことないな」
「なら教えてあげよう。私も人伝に聞いただけだから与太話として聞いてもらって構わないんだけど。まず、この島国では常にどこかで雪が降ってるっていう話は知ってる?」
「まぁ、聞いたことはあるな」
「普通に考えておかしいよね。季節に関わらずどこかで雪が降ってるっていうのも。それに、その降雪範囲は突然別の場所に移動したりするんじゃなくて、狭まることなく各地を歩くように移動し続けている」
「まるで、意思を持って動いているかのような言い方だな」
「前にその雪の原因を確かめに行った人たちがいたんだけど、戻ってきた時には全員、体が何ヶ所も凍って見るに堪えない状態だったらしいよ。その人たちが言うには、中心に近づくほど吹雪は強くなっていってたんだって。つまり、その降雪範囲の中心に、この天候の原因がある可能性が高い。でも、現状それを確かめられた人は存在しないけどね。無理に探索を続ければ、通信機は凍りついて使い物にならなくなるし、火を起こすための木材とかも凍りついて、ただ死を待つ状況になりかねない。結局、原因は分からずじまいって訳。ただ不思議なことに、その降雪範囲の中心がこの領土に直撃したことはないんだよね。まるでこの領土の結界に弾き返されるみたいに。なんでなんだろうね」
そんなこと僕に聞かれても分からない、という言葉を押しとどめて、他の話題を振ってみることにする。
「お前はこんな天気なのになんでこんなところで突っ立ってるんだ。客もほとんど来なくて暇なんじゃないのか」
「うーん、暇ではあるけど、他にこれといってやることも無いしなぁ。それに、こんな天気だからこそ、こういう出店を求めてる人もいるかもでしょ?他の店は今日は諦めて店を閉めちゃってたり、そもそも連日の騒動でそもそも店を開くつもりがなかったりするから、営業してる店自体そこまで多くないんだよね。この環境でも外に買い物に出てる人は少なからず居るし、そういう人は困ってるだろうと思って。私としては暇潰しになるし利益も出るし、辞める理由もないと思うけどね」
「……そうか。でももう少し厚着した方がいいと思うがな。あまりにもこの風景にお前の服装が馴染んで無さすぎる」
「はいはい、わかったよ。それと、これ。話に付き合ってもらったお礼だよ。持って行きな」
そう言いながら肘を着いていたショーケースから取り出して紙袋に詰めたものを僕に差し出した。僕はそれを受け取る。
「ありがたく受けとっておくよ。じゃあ、また機会があればな」
「はいよ、気をつけてね」
手を振る彼女に別れを告げて、僕はその場を後にした。
お楽しみいただけましたか?
雪降らないかな。
では、次は第六十審でお会いしましょう。




