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何でも屋に招かれた記憶喪失で妖刀使いの僕は、全ての依頼を切り刻もうと思います。  作者: 失踪 -Sisso-
第一部 『黎明奇譚 Restart The World』

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第四十九審 『多忙が故に』

失踪です。

第三章、開幕の予感がします。

「……で、どうだ、怪我の調子は」


「お陰様で、僕が目覚めた時には跡形もなく治療されてたよ。そんなことより、君にいくつか聞きたいことがあるんだけど」


「あぁ、どうぞ」


「リーダーにはどうやって話を通したんだい?正直に『領主を攫った犯人を拾った』なんて言ったら普通に君諸共組織から放り出されてもおかしくないだろう」


「それは大丈夫だ。スラムを彷徨ってた人間を勧誘して連れてきたって話したからな。信じてもらえてるかは分からないが。どうにも、ルナには全てを見透かされていそうな気がする」


「考えすぎだと思うけどね。他の行動隊の人にはもう話してあるのかな?」


「あぁ、さっき話してきたよ。別に何か探ってくるようなこともなかったから、気づかれてはいないと思うが」


「そういえば君、数日前に領主の家を訪れてからボロボロの状態で拠点に帰ってきたらしいじゃないか。いや、帰ってきたと言うより運ばれてきたって言った方が正しいかもね。どう考えても只事ではなさそうだったけど、何かあったのかい?」


「……待て。数日前って言ったか?」


「あぁ、そうだけど。君はここに帰ってきてから数日間、死んだように眠ってたよ。黒い髪の子がずっと君に付きっきりだったけど、余程心配してたんじゃないのかな?」


「……なら、お前はなんで医務室にいるんだよ」


「数日後にもう一度来るように言われたんだよ。担当の人は君が来る数分前にどこかに出てっちゃったけどね」


「そうか。ここに来てからルナとは会ったか?」


「あぁ、会ったよ。君が言うように不思議な雰囲気の人だったね。七聖に匹敵するレベルで強いって噂も流れてるみたいだけど、あながち間違いでも無さそうな気がしてきた」


「まぁ、確かに。実際あいつからは底知れない何かを感じる。七聖と戦闘になった『あの時』でさえ全く本気を出していなかっただろう」


「……そろそろ先程出てった彼が戻ってくる頃合だけど、君はまだここに残るかい?」


「いや、僕はここで引き上げさせてもらうよ。まだやることがあるんでな。お大事に、タクト」


「それはお互い様だろう」



「……おや、数日ぶりだね。護衛の任務お疲れ様。大変だっただろう。不祥事もなんとか解決できたし、君は役割を完璧に果たせたと言ってもいいんじゃないかな」


「あぁ、どうも。血反吐吐くまで頑張らせて貰ったよ」


無気力にそう告げると、会議室に佇んでいたルナは微かに微笑んだ。

それまでしていた作業の手を止め、僕の方に向き直って椅子に座るよう促してくる。


「君が連れ帰ってきた新人、かなり酷い怪我だったけど私があの場を離れた後に何かあったのかい?」


「いや、詳しくは分からない。境界周辺のスラム街でRebellionと交戦しているところを見かけて助太刀した程度だからな。その後話を聞くに、居場所を失って彷徨っていたとのことだったから勧誘してみただけだ」


「そうか。じゃあ配属はアクトチームになりそうだね。君も怪我の状況は良くなったかい?」


「お陰様でな。そういえば、なんであの時お前が単身で援護に来たんだ?別に他のメンバーをこっちに向かわせるとかでも良かったんじゃないのか?」


「そうできれば良かったんだけどね。アクトチームの人員はほとんど任務に出払ってしまっていて、すぐに動けるのが私くらいしかいなかったんだ」


そう言いながら、彼女は再びテーブルの上に置いてあった書類に手を伸ばした。


「……その書類、またどこかから依頼か?」


「そんなとこだよ。君に次の仕事を振る日もそこまで先の話じゃないと思うから、準備しておきな」


彼女は喋りながら眺めていた書類を何枚か僕の方に移動させてくる。

差し出された書類に軽く目を通すと、その依頼の内容が簡単にだが読み取れた。


「『住民の……行方不明事件』……またか?」


「あぁ、でも今回は規模が違うし、連続で何度も発生したりはしていない。前回のように被害者に共通点がなかった訳ではなくて、該当地域周辺の人間が丸ごと消滅してしまったんだ」


そういう彼女は、一度ため息を着くように唸った。


「どうやらノーヴェル領南部の一部地域でのみ発生している事例みたいだね。一部と言っても、領土の境界付近。言うなれば『シーカ領』との境界に近いかな。今回も犯人に関する情報は割れてないけど、近頃の傾向を見るにRebellionが関わっている可能性は大いに有り得るだろうね」


「つまり、次の依頼の目的地はそのシーカ領って場所になるのか?」


「いいや、犯人はノーヴェル領にいるとほぼ確定してるから、わざわざ向こうの領土まで(おもむ)く必要は無いよ。シーカ領は領土全体が高度で巨大な結界で覆われていて、その上見張りが境界周辺を徘徊していることも知られている。領土内に入るには特殊な手順を踏まなきゃならないから、恐らく犯人たちと同じく、入りたくても入れないだろうね。そもそも、シーカ領内部で同じような事件があったという報告もないし、私たちが調査するのはノーヴェル領だけで大丈夫。詳しい行動内容に関しては追って説明するから、それまでは自由に行動してもらって構わないよ。たまにはどこかに出かけてみてはどうかな?」


そう言われ、思わず首を傾げてしまった。

私用で外に出かけたりすることはほとんどない。行こうと思ったこともそこまで無いかもしれない。

最後に自分の用事で外出したのは、それこそフレアに絡まれた時以来だろう。


……まぁ、それ以外にもホタルに連れられて外出することは何回かあっただろうか。


「そういえば気になってたんだけど、君って報酬として振り込まれたお金は何に使っているんだい?」


その言葉に、僕は少し悩んだ素振りを見せて、少し言いづらそうにしながら言葉を発した。


「…………使って……ないな」

お楽しみいただけましたか?

百話達成目指して頑張ります。


では、次は第五十審でお会いしましょう。

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