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何でも屋に招かれた記憶喪失で妖刀使いの僕は、全ての依頼を切り刻もうと思います。  作者: 失踪 -Sisso-
第一部 『黎明奇譚 Restart The World』

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第四十七審 『目眩』

失踪です。

今回は僕のお気に入り回です。

一旦話に区切りをつけるので若干長めです。

地面に刀を突き立てて、咳をしながら口元を拭い、もう一度立ち上がる。

もう……残された時間は長くない。

赤く染った手の甲を眺めながらそんなことを考えてしまう。


あいつは未だにあの場所から大きく移動したりしている様子は見えず、加えて、異能力のクールタイムも無い可能性が高い。あったとしても数秒もないだろう。

中距離攻撃を際限なく繰り返すあいつと、近接戦闘メインの僕は明らかに相性が悪い。


大きく深呼吸して再び視線の先にいるそいつに狙いを定めて大きく刀を振りかぶった。

すると、これまでよりもさらに力が加えられた斬撃が打ち出される。

その斬撃を回避しようと、そいつが動き出したその瞬間。そいつは斬撃に合わせて移動していた僕の存在に気がついたようだった。


この動きを目で追うのは至難の業。斬撃に気を取られているのなら尚更。

未だに一発目の斬撃が移動を続けている最中、そこで再び振るった刀から、さらに斬撃が打ち出された。


二方向からの攻撃の対処を要求され、彼女がとった行動はやはり僕の予想通り。

異能力を発動しようと構えた彼女に向かって、僕は瞬時に地面を蹴って首元に掴みかかった。

行動を見る限り、取ろうとした策は『相殺』だろう。


だが、僕は知っている。

これを相殺するのは並大抵の妖者では無理だ。僕の経験がそう語った。

正面から受け止めようとしようものなら、受け止めたり、方向転換させることは疎か。打ち消されるのは彼女の斬撃だけだろう。その後の展開は言うまでもない。

そのため、彼女にこの斬撃が直撃する展開はどうやってでも避けたい。というか、そもそも当てる気も更々無いのだが。

つまり、この二発の斬撃は、彼女の意識を逸らすための(おとり)に過ぎない。


彼女の首を鷲掴みにして斬撃に当たらないように無理やり動かしながら、首を掴んだまま地面に押し倒した。


「聞け。僕があいつを組織に招いた理由は、行き場を失ったあいつの居場所を作ってやる為に他ならない!」


「だとしても、それはセラム様を攫った人間を仲間に引入れる理由には不十分だ!!」


「敵だったとは言え、Better Tomorrowにはかなりの精鋭が集まっている。再び反乱を起こそうとしてもそう簡単には行かないだろう。それに、僕はそいつが組織に加入するにあたって、一つ条件を提示した。

Rebellionに関する情報を全て話すこと、これが奴らの正体を突き止める一手になると考えたんだ」


「……お前たちは、ノーヴェル領に拠点を構えているのに、何故わざわざ領主から反感を買いかねない行動をとっているんだ」


「簡単な話だ。居場所がなかった僕を拾ったのはBetter Tomorrowであり、これは覆しようのない事実。そして、他のメンバーもそうだ。無関係な奴から見れば、ただの武闘派の組織にしか見えないだろうが、所属している奴ら全員の居場所なんだよ。『敵だったから』なんて理由で仲間外れにしちゃ可哀想だろ」


そこまで言った瞬間、腕の力が抜けてバランスを崩しかける。


「……そろそろ、限界みたいだ。僕を始末したいのなら好きにするといい……。後悔のない選択を……しろよ……」


僕の視界は少しずつぼやけ、軈てブラックアウトする。

今回の件で刀を使った状況は不可抗力だった状況が多かったとは言え……流石に……無理をしすぎたか……。



元々アイン領に住んでいた私は、領土の勢力争いに巻き込まれて居場所を追われた。


たまたま隣の領土との境界が近くにあった影響で、行く宛てもなくフラフラと歩いていた私はいつの間にかノーヴェル領に辿り着いていた。


だが、そこは見るからにスラム街。

当時の私でも、勢力争いの影響でこの領土も境界付近の治安は良くないことくらいは分かっていた。


でも、当時の私自身にはその場所が相応しいと思えてしまった。


歩き疲れてその辺に背中を預けて座り込み、ただ何も考えずに空を見上げるだけの日々が何日も続いた。


最後に食べ物を口にしたのは何日前だろう。飲み物を口にしたのは何日前だろう。睡眠をとったのは何日前だっただろうか。


だが、ある日。とてもスラム街にいるはずがないような、伸びた髪を纏めたひとつのベージュの三つ編みが目立つ、綺麗な身なりの女性がそこに現れた。

私と目が合ったその女性は、少しづつこちらに近づいてきた。


「こんにちは。私はセラムと申します。少しお話させて頂いてもよろしいですか?」


断る理由は……なかった。無論、それを承る理由も。

その女性は私が返事をする前に目の前に屈んで目線を合わせてきた。


「お嬢さん、お名前は?」


「…………鴻……ケイ」


「ではケイさんですね。あなたはなんでここに来たんですか?ご両親はいらっしゃらないんですか?」


「家族は……いない。気づいたら一人だった。家も……ない。居場所を求めてただ歩いてて、ここに辿り着いた」


なるほど……と、小さく呟きながら彼女は立ち上がって中腰になり、片手を私に差し出した。微笑みは保ったまま。


「ケイさん。私の下で働いていただけませんか?」


「……は?なんで私が……」


「居場所が欲しいのなら私が提供してあげます。食事も、寝床も。こんな場所にいるよりも、きっといい生活ができます」


「でも、私の居場所は……」


「そう、ですよね。あなたの居場所はどこに行っても変わらないでしょう。でも、私は別に一番になりたい、だなんて思っていません。まぁ、空席に入り込めれば私は嬉しい限りですが……。あなたにとっては、この場所も『自分の居場所』なのかもしれませんし、私が提供できるものではあなたを満足させられないかもしれません」


「なんで……こんなことを……?」


「居場所を欲している人を、捨て置くような真似はしたくないんです。いずれは、このスラムの人々も何とかしてあげたいんですが、今すぐにというのはとても難しい話です。でも、私はその第一歩として、あなたを選び取りたいと思いました。それだけの事です」


不意に、そこにあるはずのない光がちらついたような気がした。


その光は、私がこれまでの人生で目の当たりにしたどの輝きよりも、一段と輝いて見えるようだった。


「どうか、『後悔のない』選択を」


ただ、それは完全に光を失った私の心にはあまりにも眩しすぎた。

その時の私は、目が眩んでいたのかもしれない。


だが、私は私自身のその選択を、一度だって悔いたことは無い。これまでも、この先も……。


「さぁ、行きましょう!」


私の手を引く彼女の笑顔は、今でも鮮明に思い返すことが出来る。


「あぁ、私とは……真逆なんだな……」

お楽しみいただけましたか?

領主奪還作戦(第二章)はこれにて閉幕。次はどんなストーリーが待っているのでしょうか。


では、次は第四十八審でお会いしましょう。

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