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何でも屋に招かれた記憶喪失で妖刀使いの僕は、全ての依頼を切り刻もうと思います。  作者: 失踪 -Sisso-
第一部 『黎明奇譚 Restart The World』

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第四十六審 『刀の代価』

失踪です。

ノってきたところです。

その瞬間、気配を感じ取り、抱えていた鞘に納まったままの刀を振るって迫り来るそれを弾き返した。


「頑丈……鞘すら斬れないなんて」


「ちょっとは公平にやろうって気持ちは無いのかよ……」


「無い。お前にかけてやる情けもな」


そう吐き捨てると、立て続けに斬撃が迫ってくる。

なんとか弾き返すが、こいつの攻撃は『ほとんど視認できない』ため、刀を振るうタイミングはほぼ感覚であると言っても過言では無い。


喋っている最中も、絶えず斬撃が飛び交う。

回避と迎撃を繰り返すが、相手がこの調子だと、殺さないようにすることは可能でも、怪我をさせないのは流石に無理だ。

この状況、鎮圧するためだったと言えばセラムも許してくれるだろう。

それに、こいつはその辺の有象無象と比べて明らかに強い。僕の知り合いの中でもかなり上澄みの部類かもしれない。

……だが、僕にはまだ躊躇いがある。


「集中出来ていないようだな」


気づけば目の前にいたそいつは僕の片腕を掴みあげ、近くの建物に向かって投げ飛ばした。

巻き上がる砂埃に、轟音が響き渡る。

なんとか体勢を持ち直そうとするが、そんな隙すら与えないほどの密度の斬撃が僕の目と鼻の先まで迫ってきていた。


……ダメだ。これを受け切ることは出来ない。

見えもしない斬撃を数十発も連続で受け切るのはまさに人間離れした所業と言えるだろう。

それに、一発一発の攻撃もとても軽いとは言えない。簡単に受けられるとも言い難かった。


必死に迫る気配を読み取って、何発か刀で受け止めながら機敏に回避していく。

頬、腕などに斬撃が伝う感覚。軈てそれらは血が流れ出る感覚に変わっていった。

そして全て避けきると、そいつは不満気な表情で告げる。


「……お前、その得物は飾りか?私程度、本気を出さずとも事足りると考えているのなら、随分と舐められたものだな」


僕が刀を使わないのはそんな理由では無い。

とある都合上、様子見をする他無かったのだ。

できることならこのまま済ませたかったのだが、どうやらそうも行かないということは何となく理解してしまっていた。


「そこまで言うなら覚悟しておけ……後悔するなよ……!」


後悔するのは僕の方かもしれないのだが……。

片手で鞘を、片手で柄を握り、大きく深呼吸してから刀を鞘から抜き始めた。


「『妄執』、『喪失』、『果たされぬ過去との調和』……。あくまで身を守るためだ、誤解するな」



こうやって詠唱をしている最中も、斬撃の気配は耐えないのだが、何かにぶつかって相殺されるような音が聞こえてくる。

目を瞑っていたため、僕には何が起こっていたかは分からなかった。

そうして目を開けたのは刀を鞘から完全に引き抜いた後。紫色に輝く刀身が、周囲の何よりも眩しく輝いている。


オーブが浮かぶたった数秒の間に、僕は大きく刀を振りかざすと、そこから斬撃が打ち出された。

だが、飛来したそれは彼女の頬を掠める程度で通過していく。

間髪入れずに放たれる斬撃をひたすら打ち返し、繰り出される攻撃に回答する。


「なんなんだ……お前の異能力は……!」


見出した一瞬の隙に、すかさず刀を振るって斬撃を打ち出すと、そいつは咄嗟に片手を構えて異能力で対抗しようとする。


「避けろ」


「……?!」


寸前で僕の声が届いたのか、そいつは屈んで飛来した斬撃を回避する。

その一瞬の隙、逃す訳もなく、僕は一気に接近してそいつの腹部に拳を叩き込んだ。

吹き飛ばされるそいつを横目に、僕は大きく深呼吸する。


前よりも確実に刀を引き抜いてから息が上がるまでの間隔が短くなっている。あまり長引かせるのは得策では無いな……。


そいつは苦悶の表情を浮かべながらも屈んだまま大きく片腕を振るった。


反射的に体を反らせて回避するが、首元に僅かに斬撃が通過する感覚。一瞬だけ痛みが迸るが、その程度のことは気にしてなどいられない。

続いて迫る攻撃を弾いた時、反動で大きく押し返されてしまう。当然、迫っていたのは一撃だけでは無い。

立て続けに斬撃を受け止め、地面を滑る僕の体は、既に悲鳴をあげていた。


「……少し……酷使しすぎたか……」


地面に片手と片膝をついて、息を整えながら頬を伝う汗が地面に滴り落ちる様子をただ眺める。

ここ最近、刀を使う機会がどうにも多く、とうに体は限界を超えていたようだ。


刀にも目をやるが、その輝きは衰えない。

僕から生気を吸い取っているのではないかと感じてしまうほどに。


その瞬間、突然喉元に何かが競り上がってくる感覚。

立ちあがろうとすると体の力が抜けて再度地面に膝を着き、それは僕が抑えようとする間もなく口から外に流れ出る。


飛び出した真紅の液体は僕の足元に広がっていった。

お楽しみいただけましたか?

ハルサ、負けるのか……?


では、次は第四十七審でお会いしましょう。

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