第四十五審 『不可交力』
失踪です。
友達も界隈に参入してきました。追いつかれないように頑張ります。
「とりあえず、今回の件に関してはもう大丈夫そうか?」
「はい、いつもと変わらず体調もいいですし、問題ありませんよ」
僕は翌日、改めてお礼をしたいと言われたため、もう一度彼女の家まで足を運んでいた。
彼女には自身でも言うように、特に変わった様子は見られなかった。
「今回は本当にありがとうございました。今後、また機会があれば是非とも頼らせてください」
「あぁ、そりゃどうも。領主様からそう言って貰えるなら、これほど名誉なことはないな」
「あなた方の活動に役立つかは分かりませんが、これは私からのお礼です。受け取っておいてください」
差し出されたそれを受け取って確認する。
それには紋章のような何かが描かれているが、これはバッジだろうか?
「受け取っておくよ、ありがとう」
そう言ってそれをしまうと、彼女からとある質問を投げかけられた。
「そういえば、先程からケイの姿が見当たらないのですが、どこかで見かけたりしていませんかね?」
「いや……見ていないな。何かあったのか?」
「それが、全く心当たりがないんですよね。何か無自覚に彼女の気に障ることをしていたのかもしれませんけど……」
そう不安そうに告げる彼女を横目に、僕は近くに置いていた刀を手に取って立ち上がる。
「とりあえず、今日はもう拠点に帰ることにするよ。また何かあったら連絡してくれ」
「はい、分かりました。もうもう外は暗いので気をつけて帰ってくださいね」
繕ったように笑顔を浮かべる彼女に見送られながら、僕は彼女の家を後にした。
言っていた通り、外はもう既に日が落ち、すっかり暗くなっている。
早く帰らなければ、またあいつらに心配をかけてしまうだろうな。
そんなことを考えながら歩いていた時、反射的に背後から迫ってきていた何かに反応して回避する。
その瞬間、僕の顔の近くを舞ったのは白色の……自分の髪。どうやら少し切られてしまったようだ。
「……領主様が心配してたぞ。護衛をすっぽかしてこんなところで何をやってるんだ」
そう言い終わるよりも早く、そいつは影の中から姿を現した。
表情はいつもの黒いショートヘアに翳り、赤いインナーカラーも夜の闇に溶け込んでいる。
「……『鴻……ケイ』」
「変わらずだな。不意打ちすら届かないとは」
「その返事は今求めていない。目的を話せ。突然斬りかかってきておいて、僕になんの用だ」
「簡単に言う。お前を始末しに来た」
「は?なんで────」
反論しようとするが、お前には喋らせないと言わんばかりに即座に遮られてしまう。
「今回の件、思い返せば事態を突破する鍵はほとんどお前が握っていた。暴聖との戦いで私たちが倒れる中、最後まで生き残っていたのはお前。そして、禁足地で聖霊を授かったのもお前。更にセラム様を助け出したのもお前だ。あまりにも都合がいいと思わなかったのか?ただ、聖霊の躾はしっかりしておくんだったな。私はお前が領主様を攫った人間に肩を貸して並んで歩いているところを見た。お前の聖霊に導かれた先で、な。この一連の都合の良い状況は、お前が黒幕だと考えれば辻褄が合う。こうすればお前は行く手を阻む敵を薙ぎ倒し、命を懸けて領主を助け出したと称えられ、加えてBetter Tomorrow内部にリベリオンの人間を潜入させることもできる。いや、Better Tomorrowそのものが『黒』だという可能性もあるか」
「それは単なるお前の被害妄想、こじつけに過ぎない。考えすぎじゃないのか」
「お前に今なんと言われようと、私の目を欺くための工作としか思えない。無駄だ、諦めるんだな」
そう言ってそいつは構える。
どうやら、話し合いでは解決できそうにない。撤退を選んだとしても僕や組織への誤解は解けないだろう。
であれば、一度こいつを鎮める必要がある。
ただ、殺したり重症を与えたりすることはできない。セラムにどんな顔されるか分からないからな。
その瞬間、気配を感じ取り、抱えていた鞘に納まったままの刀を振るって迫り来るそれを弾き返した。
「頑丈……鞘すら斬れないなんて」
「ちょっとは公平にやろうって気持ちは無いのかよ……」
「無い。お前にかけてやる情けもな」
お楽しみいただけましたか?
合計3500PVを突破しました。最高です。
では、次は第四十六審でお会いしましょう。




