第四十二審 『サプライズ』
失踪です。
睡眠時間が不規則すぎて自分でもビックリしてます。
そこまで言われると、次に続く言葉が予想できてしまった僕は、呟くようにその言葉を零すのだった。
「『何か他に目的があるからこの場は別に負けようが関係ない』……か」
実の所……かなり正解に近い。
ただひとつ間違っているのは、別に僕は負けに来てるわけじゃないということ。
実質的な負けを前提に組まれたこの『計画』は、戦いに勝てたとしてもまた別のプランを取ることができるため、計画通りでなければならないということも無い。
……まぁ、話を聞く限り、ほとんど負け戦だ。
僕に任された役割は目の前の彼の引き立て役のみであり、そう考えていながらも初めから僕が勝つビジョンなんて見えていなかった。
「……可哀想な役回りだな」
「僕は一般的に言う信仰派だよ?『自分の役割が神様のためになる』と思えば、この程度安いものさ」
そう言いながら立ち上がり、再び僕は手元に握った結晶を手放して、足元にそれをいくつか転がした。
だが、それは掌からにとどまらず、服の袖からも多くの結晶とめどなく溢れ出す。
周囲の地面を埋め尽くす勢いで撒かれるそれらを見て、彼の表情は曇り始めたように見えた。
「驚いたかい?君と会話している最中、ずっと生成し続けていたんだ。僕からのサプライズ、受け取って欲しいな……!」
最後のひとつが地面に転がり落ちると同時に、最初に落ちた結晶から少しずつ輝きを放ち始めた。
一つ目が爆発すると同時に、その他の結晶たちは爆風で再び宙を舞う。
連鎖的に爆発を起こし、生じた煙で視界が満たされた時、爆発音に紛れて、僕ではない誰かの声が僅かに聞こえた気がした。
「『妄執』……『喪失』……『果たされぬ過去との調和』…………第一拘束、解除」
ℵ
「やめだ」
「……は?」
唐突に分身のうちのひとつがそう言うと、他の分身も全員構えていたピストルを下ろしてしまい込み、強制的に戦いを終了させた。
「一体どういうつもりだ?」
「どういうつもりもなにも、目的が達成されたから俺たちは引き上げる。それだけの事だ」
「お、おい!待て!」
呼び止めようとするのも虚しく、そいつはそう短く告げて跡形もなく消え去った。
そう、どの個体も跡形もなくこの場から消失してしまったのだ。
「やっぱり……そうだったか。私たちが戦っていたのは全て彼の分身だったってことだろうね。道理でどれだけ戦っても本物が現れなかったわけだ」
「読めていたのなら最初から教えてくれればいい物を……」
「確信がなかったからね。異能力の概要が読めなかったし、不用意に発言して君の思考を邪魔するのも申し訳なかったから。とにかく、ハルサの元へ向かってみようか。何か変わっているかもしれない」
奴らの目的というのも気になるところではあるが、それもこいつには検討が着いているのだろうか。
俺はそれに短く返事をして、少し先を歩くそいつの背中を追いかけ始めた。
──────
「チッ……時間か……」
それまで僕と刃を交えていたそいつは唐突に顔を顰めてそう呟くと、構えを解いて数歩後ずさった。
対して警戒を強める僕らに対し、そいつは捨て台詞のように言葉を吐いていく。
「俺の任務は終わった。残念だが、もうお前と戦う理由はない。さっさと引き上げさせてもらう」
「……そうか、ならもう仕事の邪魔をしないでくれよ」
その言葉にさらに少しだけ顔を顰めたのを確認できたと同時に、そいつは建物の屋根に飛び乗って、そのまま建物を伝って僕らの目の前から消えていった。
「……終わったか」
姿が見えなくなると僕は刀を鞘に納めて大きくため息をついた。
「これからどうしますか?私たちにはハルサさんたちの居場所も分からないでしょう。何か宛があるのなら話は違うんですが……」
「通信機は……まだ使えなさそうだな。とりあえずどうにかして探してみるしかなさそうだ」
「そうですね……。ビルの屋上にでも向かってみましょうか」
ノイズが鳴り響く通信機を切って、僕らは彼らとの合流を目指して歩き始めるのだった。
お楽しみいただけましたか?
眠いので寝ます。
では、次は第四十三審でお会いしましょう。




