第三十七審 『公平性の破棄』
失踪です。
今回のタイトル普通に3時間くらい悩みました。
そしてここに来てなんとキャラクター設定資料を公開しました。随時更新していくので興味のある方は是非どうぞ。
激しく散る火花。幾度となく響く金属音。
あれからあいつの出血は止まる様子を見せず、未だに血を滴らせながらナイフを振るっていた。
「……よくまだそんなに動けるな。そろそろ失血死するんじゃないのか?」
「心配してくれてるの?でも、私が失血死することは余程のことがない限りないかな。それと、私はとっくに痛覚が壊れちゃってるから、痛みはあんまり感じないんだよね」
刃物をぶつけ合いながらそう言うそいつは、大きく両手の刃を振るう。
僕はそれを瞬時に回避しようとするが、避けきれずに左の頬に刃先が届いてしまった。
そのまま距離をとった僕は、斬られた箇所に触れてみるが、血が流れ出ているのが分かる。かなり深く斬られてしまっているようだ。
その一瞬のうちに、僕との距離を詰めてくるそいつの攻撃をはじき返し、刀を振るった僕の攻撃はそいつの二本のナイフに受け止められる。
その最中も、頬から流れ出る血液が首元を伝っているのが伝わってきた。
その瞬間、そいつは口に含んでいたものを僕の顔に吹きかけてくる。
視界に映りこんだ瞬間に、それが腹部から競り上がってきた血液であることがわかった。
「『朱血』《ブラッド・ナスティ》……!」
そう唱えられた瞬間、僕に付着していたもの含め、今まで飛び散ったままになっていた血液が一斉に燃え盛り始める。
「クソっ……!」
顔の皮膚が焼ける痛みに、僕は反射的に顔に付着した血液を払った。
その火は消し止められたが、如何せん顔の大部分の皮膚は痛む。
「そろそろフィナーレと行こうか!!」
その瞬間、燃え盛っていた炎は血液が付着した箇所から生成された氷塊によって上書きされ、周囲には打って変わって冷気が流れ始めた。
「……まぁ、最初に手の内を全て晒すほど、私も馬鹿じゃないよ。このくらいは隠しておかないとね」
「お前が未だに血を滴らせながら戦える理由も、ご享受いただきたいがな」
「うーん、そうだなぁ……。君、流石に『妖力』のことは知ってるよね。異能力を発動するために必要なエネルギーのこと。それがゼロになると大抵の場合意識を失ったりしちゃうんだけど、一度の消費量が多いほど、規模も効力も大きくなる傾向がある。もちろん、人によってどれだけ妖力を溜め込めるかは差があるし、それこそ七聖なんかは底なしなんじゃないかと思うほど多いしね。私は、その妖力を自分の血液に変換することが出来る。燃費もかなりいいから、たったこれだけの出血なら流れる血の量を増やし続けるだけで対処出来る。つまり、私の体内に流れてる血液の量は、戦闘を始めた時とほとんど変わってないってことだよ」
聞けば納得してしまった。というか、そうでなければ説明がつかないほどの出血をこいつはもうしてしまっている。
となれば、つまりこいつには出血による限界はほとんどの確率で回ってこないということにもなるだろう。
痛みによって怯まず、出血も厭わない、血を流せば寧ろカウンターを食らいかねないこいつの異能力は、改めて考えればかなり厄介だ。
それにこの氷を作り出す異能力も、動きを拘束される可能性を考えればかなり危険だろう。できれば再度使われる前に決着をつけたいのだが……。
「じゃあ、今度は私から行かせてもらうよ……!」
こちらとの距離を詰めてくるそいつを一点に見つめながら、僕はこいつの異能力に対抗する方法を、ひとつ思いついていた。
だが、リスクが高い。しくじれば致命傷を負うのは僕の方だろう。
だが、このまま戦い続けてもしっぺ返しを食らうのは僕の方だ。なら、やるしかない……。
僕はそいつが振り抜いたナイフを屈んで回避し、地面に刀を突き立てて、そのまま腹部に拳を叩き込む。
衝撃で吹き飛ばされるそいつを横目に、僕は手の甲で頬から滴る血液を拭って前に進み出た。
「……かなり思い切ったね。腹括っちゃったかな」
……まぁ、そう言うのも無理ない。地面に両膝と片手をつきながら僕にそう問いかけるそいつの視界に映っていたであろう光景は、丸腰で前に進み出る僕の姿だったからだ。
お楽しみいただけましたか?
彼はフェアな戦いを捨てました。
では、次は第三十八審でお会いしましょう。




