第三十四審 『出血多量』
失踪です。
そろそろ書き進めないとと思いながらあんまり進んでません。
僕は聖霊に導かれるまま走り続け、軈てそれらしき建物が見えてきた。
漸くたどり着いた……。そう考えた瞬間、どこかから何者かの気配が近づいてきているのに気がつく。
立ち止まり、周囲を見渡していると、何者かの声が響き渡った。
「上だよ!上!」
そう聞こえると、僕は咄嗟に後ろに踏み切り、落下してきたそいつを回避する。
強大な衝撃により、そいつが着地した地面は粉々に砕け散り、抉れていた。
巻き上がった砂埃が晴れていくと、そこには両手に刃物を抱えた、特徴的な赤茶色の髪を後ろで結った女が佇んでいるのが視界に映る。
「残念だけど、タダでここを通すわけには行かないよ。君はどうせこの先に用があるんだろうけど、まずは私としてお手合わせ願えるかな?」
「嫌だ……と言いたいところだが、その様子だと僕が断ろうが関係ないんだろう。かかってこい、手早く済ませるぞ」
「そう来なくちゃね……!」
そう答えると、そいつは待っていたと言わんばかりに手元の刃物を回しながら僕との距離を瞬時に詰めた。
僕は咄嗟に鞘に納まったままの刀を手に取り、繰り出された攻撃をはじき返す。
立て続けに振るわれる刃物をなんとかはじき続け、隙を見てそいつの腹部を蹴飛ばして無理やり距離をとった。
「『妄執』、『喪失』、『果たされぬ過去との調和』……。応えろ、妖刀」
そのうちに僕は鞘から刀を引き抜き、オーブが舞った瞬間に大きく深呼吸すると、再び来るであろう攻撃に備えるよう構える。
「……雰囲気が変わったね。その紫色に輝く刀……しかも、かなり特殊な詠唱。珍しい」
「僕も僕自身についてあまり分かっていない。これは『僕の異能力』なのか?」
「うーん……。私に聞かれても分かんないかな。その刃物に付与されてる能力なんだとしたら、君の異能力じゃない可能性はあるね」
そう言うと、その女は徐ろに一本ナイフを鞘に納めると片手のナイフの持ち方を変え、刃先を自分のもう片方の腕に向けた。
「じゃあ、君に倣って私の異能力も見せてあげるね」
刹那、そいつは自分の手首を腕と平行に切り裂いた。
すると、ダラダラと流れ出る深紅の液体を周囲に撒くように、血が滴る腕を大きく薙いだ。
そう思った瞬間、血液が付着した箇所に一同に火が点る。
「どう?これが私の異能力。これだけでどういう異能力か分かるのなら、元々この勝負に私に勝ち目は無いね」
見た感じ……自分の血液を媒介にしてなにかを行っているように見えたが、流石にそれ以上のことは分からない。
それに、血液を消費して戦うのなら、長期戦になるにつれて不利になるのは相手の方だ。
この行動にどういう意図があるのかは分からないが……。
そいつは血が流れ出る腕をそのままに、再度ナイフを諸手に携えた。
「先行は君にあげるよ。かかってきな」
そう告げられて間もなく、僕は大きく刀を振りかざし、紫色の斬撃を打ち出した。
だが、それは寸前に構えられたそいつのナイフによって軌道を逸らされる。
正面から防御して相殺を狙わなかったのは、恐らく様子見をしていたのだろう。この状況で咄嗟にその判断ができる時点で、その辺の妖者とは一線を画しているのが感じ取れた。
斬撃を打ち出すと同時に距離を詰めた僕の刀は、そいつの二本のナイフに受け止められ、激しく火花が散る。
「容赦ないね……!」
「……」
そのまま僕の刀は弾き返され、その隙にそいつから放たれた一撃が鼻先を掠める。
その後も激しい剣戟が続くが、相手は二刀流ということもあって、なかなか隙が見いだせなかった。
異能力がほぼ関与しない、実力でのぶつかり合いが生じた瞬間だったが、剣技はほとんど互角と言っても過言では無い。この調子だと、先に体力が尽きた方が負けるだろう。
そんな無謀な賭けをするくらいなら、どこかで違う手を絡めるのが正しい判断なのだろうが……。
「『朱血』《ブラッド・ナスティ》」
その時、小さくそいつが口にしたのが聞こえ、足元の地面が突然発火する。
瞬時にお互い後退すると、そのトリックは瞬時に理解できた。
先程腕を切った影響で、刃を交えていた時も血が滴り続けていたのか。それを発火させたのだろう。
「……速いね、こっちは武器が二本。相手にするのが難しい筈なのに隙が見えない」
それはこちらも同じ感想だ。
異能力の特性上、近距離に持ち込むとやや不利だろうか。だが僕には相手と距離をとる手段などない。
距離を少しでも取れれば、手軽に中距離攻撃が放てる僕に部があるのかもしれない。
そう考えながら、若干焼けた片腕を擦る。
次の瞬間、再び距離を詰めてくるそいつに、僕は即座に刀を振るった。
お楽しみいただけましたか?
今回は区切りをつけるのが難しくて若干キリが悪いような気がします。
では、次は第三十五審でお会いしましょう。




