第三十二審 『真実は雲隠れ』
失踪です。
7万文字を超えたらしいです。
「クソっ……どこに消えやがった……」
「お前の後ろだ」
振り向こうとするそいつの肩に、僕は片手を置いた。
すると、僕が手を置いた箇所から段々とそいつの体が段々と灰色に染っていく。
軈て体の大部分が灰色一色になった頃、僕はそこから手を離して手袋を付け直した。
「これで三人目だな。仲間が減っていっていたことにも気づかなかったのか?」
風に乗ってパラパラと散っていく灰色の欠片に問いかけるが、無論、返事なんてできるわけが無い。
ため息をつきながら通信機をもう一度触ってみるが、依然としてジャミングは続いているようで、どこかと繋がる様子は見せなかった。
人の気配がしなくなった街路を屋上から見下ろしていた僕は、振り返って下の階へ向かおうとした……が。
咄嗟に感じとった何者かの気配。
その方向に視線を向けると、黒い装いにガスマスク、赤髪に黒いメッシュの入った見知らぬ何者かがそこには佇んでいた。
「……雑魚狩りは楽しかったか?」
「自分の仲間を雑魚呼ばわりだなんて、お前には人の心が無いのか?」
「無いね。どこに置いてきたかも忘れちまった」
「嘘つくなよ。元から持ってなかったんだろ?」
鼻で笑いながらそう答えると、僕は再び手袋を外して刀を鞘から引き抜き、そいつの刀からは電流のようなものが点滅した。
奴から溢れ出る強者のオーラ……久しく感じていなかったこの感覚は、これから戦場になるこの場所に緊張感を齎す。
「やることは分かってるみたいだな。さぁ、かかってこいよ」
その挑発を聞き流しながら、僕は落ち着きを払い、刀を構えたまま大きく深呼吸をする。
次の瞬間、同時に駆けだした僕らの刃は交わり、戦いの火蓋は切って落とされた。
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「はぁ……少し時間がかかっちまったな」
そう小さく呟きながら、俺は街路を一人走っていた。
見張りだけを倒すつもりが、どうやら応援が間に合ってしまったらしく、かなり時間を消費してしまった。
通信機は当たり前のように使い物にならず、あいつらの状況は確認できない。
とりあえず手探りで後を追うしかないのだが、如何せん人の気配はなく、手がかりが掴めないのが現状だった。
今回の作戦はRebellionとの戦闘が目的では無いため、誰かひとりでも領主のもとに辿り着いて救出することが出来ればこちらの勝ち。
……だが、何か嫌な予感がしていた。
先程から、目を凝らせば分かるほどの薄さではあるが、霧がかかっている。
恐らく通信機が機能不全に陥っているのはこれのせいなのだろうが、発生源に心当たりは無い。Rebellionの何者かの異能力である可能性が高いだろう。
「後ろだよ」
唐突に背後から響いた何者かの声に、明確に敵意を感じ取った俺は、瞬時に足を止めて振り返り様に拳を振るった。
振るった拳は声の主であろう人物に直撃。
吹き飛ばされて近くの建物に打ち付けられ、項垂れたそいつの姿を直視してみるが、薄い紫色の髪に、丸いレンズの色素が薄めのサングラス……やはり見覚えは無い。
「言ったじゃないか。後ろだって」
息を整えようとすると、再び同じ声が背後から響いた。
同じく反射的に拳を振るうと、そこにいたそいつは体を後ろに反らせてそれを避ける。
「おっと、危ないねぇ。出会って直ぐに殴りかかるだなんて、血の気が多いこと」
もう一度振り返ってみると、先程殴り飛ばしたはずのそいつの姿が跡形もなく消えていた。
……なるほど、そういう異能力か。
となると、この霧の発生源は別にいるのか。
「君、今何か探してるね?死んじゃった父親かな?顔も知らない母親かな?それとも、はぐれちゃった仲間……とか?」
「……あぁ、そうだ。仲間を探している」
楽しそうに笑いながらそう告げるそいつとは対称的に、俺は淡々とそう答えた。
そいつは尚も笑顔を崩さずに続ける。
「お喋りは嫌いだったかな?それは悪かったね。なら、さっさと済ませようか」
そいつは片手に持つハンドガンをクルクルと回しながらそう告げたのを最後に、霧のように忽然と姿を消した。
「さぁ、見破って見せてよ」
お楽しみいただけましたか?
登場人物の異能力のヒントが何個か出てきましたね。
皆さんも答えを予想しながら読んで見てください。
では、次は第三十三審でお会いしましょう。




