第三十審 『燦メク刹那』
失踪です。
ウトウトしてたら投稿するの忘れてました。
一ヶ月目だって言うのに。
そこに佇んでいたのは白い布に身を包んだ『何か』であった。
被っているフードの奥は闇に包まれており、顔は確認できそうにない。
七聖と対峙した時のような威圧感は無いものの、本能が『こいつには勝てない』と、一目見ただけで確信している。
「……人を、探している。このくらいの背丈の、若い女性なんだが。知ってはいないか」
「知らぬな。最後にここに貴様のような人間が訪れたこと自体、もう十年近く前のことになる」
「そうか、残念だな。いくつか聞きたいことがあるんだが、僕の仲間は今どこにいるんだ?」
「ここではない『どこか』だ。この森は様々な場所に通じている。貴様らはこの森の深層まで辿り着いてしまった。それ故、この森に仕組まれた呪いによって、それぞれが違う場所に強制的に移動させられたのだ」
「なるほどな。なら、ここから抜け出すにはどうしたらいいんだ」
「私の力で外に転送することができる。お前の安全は保証されているものと見ても良い」
「……僕の仲間がいる場所は、安全である保証はあるのか?」
「絶対とは言えない。貴様の仲間が転送された場所に共通するのは『今は存在しない場所』であることだ。あの場所は過去の記録を復元し、保存しているようなものであるが故に、現世と違い常に安定して存在することができない。もしも今この時、その場所が崩れ去ってしまえば、貴様の仲間諸共存在ごと無かったことにされるだろう」
「なら、すぐにでも仲間たちと僕を森の外に集めて貰えるか。安全に、慎重に頼む」
「……あぁ」
敵意は感じられない。僕らを取って食おうというつもりも無さそうだ。
そう告げて来た道を辿ろうとそいつに背中を向けると、後ろから僕を呼び止める声が聞こえる。
「……待て。貴様、人間を探しているのだろう」
「あぁ、そうだが。それがどうかしたのか」
「私が手を貸してやろう。私の手に触れてみろ」
そう言うそいつの通りに差し出された色白の手に触れてみると、頭の中に直接なにか情報を流し込まれたような不思議な感覚を感じ取った。
「連れて行け、『風見の聖霊』だ。そいつに従えば貴様らが探している人間が見つかる。名前でもつけてやると良い」
そいつの手から手を離すと、僕の視界に緑色の光を放つオーブのようなものが映りこんだ。
これがこいつの言う聖霊なのだろうか……?
「『貴様のその持ち得た体質』に感謝するんだな。探している人間がいるのは貴様らが通ってきた領土の境界だ。詳しくは聖霊が導いてくれるだろう」
「ありがとう。これでかなり捜索が楽になる。お前の名前を聞いておいてもいいか?」
「人間に名乗る名など持ち合わせていない……が。『燦刹』とでも名乗っておこう」
「そうか。じゃあ、少なくとも次に会う時までは、こいつは借りて行かせてもらうぞ」
「……そうか。お前がそうしたいのならば、その刻を待つことにしよう。次また会うことがあればの話だがな────」
その言葉を最後に、僕の視界に映っていた景色は徐々に崩れ落ち、軈て周囲は再び白一色に染め上げられる。
僕はその空間を、歩き始めるのだった。
ℵ
そして、数時間後。
あの後、森の中で起こった出来事を、その場にいた四人及び、ミロクとルナに伝え、森から直接ノーヴェル領との境界に向かっていた。
日が落ち、暗くなり始めた時間帯、ミロクが車で目的地まで案内してくれたが、その間の空気は張り詰めており、誰も口を開こうとしなかった。
依頼満了によりエイルは一度本部に戻る必要があるらしく、彼女とは後ほど合流することに決まった。イオリはこのまま同行するらしい。
目的地に着いてから、ミロク本人から同行させてくれないかと問われたが、この領土の領主まで危険に晒すわけには行かないと感じたため、断ることにした。
燦刹と名乗るあの森に住まう者から受け取った聖霊は、淡い光を発しながら未だに僕の周りを漂い続けている。
「……恐らく、Rebellionの防衛ラインはあそこからだ。ハルサ、あれを掻き分けて内部に侵入すればいいんだよな」
「あぁ、その筈だ。そこからこの聖霊で居場所を探る。撤退の時も考えて、できるだけ数は減らしておいた方がいいかもしれないな」
「了解だ。合図をしたら走り出せ。俺があそこにいる見張りを沈める。そのうちにお前らは先に進め」
そう言うと、彼は深呼吸してカウントダウンを始めた。
軈てカウントが零になり、合図と同時に瞬間に僕らは駆け出す。
バアルがこちらに気がついた見張りに殴り掛かると同時に、空気を揺るがす程の衝撃波が生じる。
その奥へ走り続ける僕らは、周辺にいたRebellion達を払い除け、人気のない街路に辿り着いた。
「……不気味だな。さっきまではそれなりに人が多かったのに、不自然な程人の気配を感じない」
そう呟いて前へ進み出るイオリを横目に、慌ただしく動き始めた聖霊を眺めていた。
その姿は、まるで何かを伝えようとしているかのような……。
そこで気がついた、何者かの気配が迫る。
「イオリ、下がれ!」
お楽しみいただけましたか?
記念すべき三十話です。まだまだ続きますよ。
では、次は第三十一審でお会いしましょう。




