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何でも屋に招かれた記憶喪失で妖刀使いの僕は、全ての依頼を切り刻もうと思います。  作者: 失踪 -Sisso-
第一部 『黎明奇譚 Restart The World』

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第二十九審 『狭間』

失踪です。

ちなみにアイン領に来てから出てきた味方陣営のキャラの中で、戦闘力がいちばん高いのはハルサです。

そしてその後。

日が落ちてきて気温が下がり始めた時間帯。

僕らは有刺鉄線の張り巡らされた森の前に佇んでいた。

その場所から漂う禍々しい雰囲気に、圧倒されてしまいそうになる。


「ここです。やっぱりこの威圧感は何回見ても慣れませんね……。ここからは何が起こるか分からないので全員できる限り固まって移動しましょう。誰かが潜んでるかもしれませんし、前提としてここは禁足地ですから」


有刺鉄線にかかっていた南京錠を解錠しながらそういう彼女は、入口を開けると先陣を切って森の中に入っていく。

その光景を眺めていた僕らもそれに続いた。


森の中を歩き出して数分と経たないうちに、周囲の景色は薄暗く、先が見えなくなっていく。

加えて微かに白い霧がかかっており、視界不良に拍車がかかる。


とても人がいるようには思えなかったのだが、ここまで来て引き返すこともできないだろう。

ここでRebellion(リベリオン)を取り逃した時のリスクを考慮すると、探索を継続する以外はすでに選択肢にすら入らなかった。


そのまま会話もなく歩き続けること数十分。

段々と濃くなっていく霧に、変わらない景色。

この森自体は繁華街ほどは広くないと聞いていたため、このまま歩き続ければいずれは外に出られるはずなのだが、今のところその気配は見えない。


「足元、気をつけてくださいね。霧も濃くなってきてますし、地面もとても平坦とは言い難いですから」


気を使って声をかける彼女の表情も少しずつ曇り始めているように見えた。


尚も歩き続けること更に数十分。

あのまま霧は濃くなっていき、隣を歩く人の顔を認識するのがやっとな程になってしまっていた。

先程まで暗くて不明瞭だった視界が、今となっては真っ白に染め上げられている。


「このまま進んで大丈夫なんでしょうかね……なんか出口のない迷路をさまよっている気分ですよ」


「そういえば、この区画に無断で立ち入った奴の話を昔聞いたことがあるな。今話すべきじゃないかもしれないが……聞くか?」


それを聞いて一瞬返事に迷ったが、ここまでくると静寂が(わずら)わしく感じてきた。仕方なく続きを話すように頼むことにする。


「数年前、領主の許可なくここに立ち入った男たち四人の話だ。当初そいつらは友達との肝試し的なノリで森に立ち入ったらしいんだが、その森の中の状況は今の俺たちと全く一緒。濃くなる霧に、良いとは言えない足場。霧も極限まで濃くなり、近くにいた友人の顔も確認できなくなっていった。恐る恐る進んで行くと、突然開けた場所に出たらしい。そこでそいつの記憶は途切れ、気づけば病院のベッドの上だった。医者曰く、森の近くで倒れていたところを保護されたとのことだ。他の三人は、数日経っても姿を現さず、捜査も行われたらしいが、結果的に行方不明のまま。一人だけ助かった理由も謎のままだな」


「……最悪な話だな。聞かなければよかった」


「でも、話せって言ったのはお前だろ?」


「それはそうだが。にしても三人も行方不明になるだなんて不思議だな。この森にはなにか住んでたりするのかもしれない」


「その可能性は大いにある。そうでないのなら、なにか超常的な現象が起こっていないと説明がつかない。まぁ、それでもなんで一人だけ森から抜け出せたのか謎のままではあるがな。住んでる何者かが手を加えたのであれば納得がいくんだが……」


やはり、この森には何かがある。

そんな話をしているうちに、既に限界まで霧は濃くなっており、隣の人間の顔を確認することすら難しくなっていく。


「あーあ。言ったそばからだな。お前ら、死ぬんじゃねぇぞ」


顔は見えないが、ため息混じりのバアルの声が聞こえてくる。

それを境に、周りからの音は途絶え、僕の足音以外の音は全て聞こえなくなった。

一応辺りを見渡してみるが……何の気配もない。どうやら進むしかないようだ。

先の見えない道をただ真っ直ぐ進んでいくが、やはり視界は悪いまま、白一色の単調な景色が続いていた。


……ここまで、あいつの話と全く一緒だ。

このまま行けば、この先に何かあるはずなのだが……。


その時、瞬きをした瞬間に突然、霧に囲まれていた周囲が、全く別の場所へと変わった。

僕を覆っていた霧はどこかへ消え去り、木々の隙間から妖しげな光が差し込んできている。

もう一度辺りを見渡すが、景色は先程まで僕らがいた森と似ていた。

だが、どこか雰囲気が違うような気がする。

夢の中にいるような……そんな現世では感じられないような感覚が周囲に広がっていた。

一歩、二歩と前へ進み出ると、聞き覚えのない何者かの声……いや、人に限りなく近い何かの声が聞こえてくる。


「……生者(せいじゃ)か、久方ぶりだな。貴様はこの辺境の地に、如何なる目的を持って踏み入った?」

お楽しみいただけましたか?

日曜日はなんにもやることがないです。


では、次は第三十審でお会いしましょう。

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