第二十四審 『Final Lap』
失踪です。
アウトレイジ君の身長は165cmで想像してます。
割と小柄。
「おっと、もう限界がきちゃったみたいだね。まずは一人目……次は誰の番かな?」
僕の視線の先には地面に倒れ込んだミロクの姿。息はあるが、意識を失っているようだった。
駆り立てられる焦燥感に、頬を伝う汗。僕は歯を食いしばる。
やはり僕の読みは間違っていなかった。
ミロクは異能力の過剰な使用によって体に限界が来たのだろう。
「怯むな!ハルサ!俺たちが落ちる前に決着をつけないと勝機はないぞ!」
「そんなことは……理解している……!」
着実に限界が近づいて来ている気配。
依然として目の前のそいつは嘲るように笑みを浮かべ、こちらを伺っている。
鉛のように重くなった足に体中の力を集約させ、地面を蹴って距離を詰めようとした瞬間、ほんの一瞬の出来事だが、目の前を黒い影が通過していき、僕は咄嗟に足を止めた。
次々と降り注ぐそれは、目の前のそいつ目掛けて飛んでいくがいずれも回避され、直撃した地面を抉っていく。
その時、地面と何かがぶつかり合う音に、反射的に音がした方向に視線を向ける。
そこには膝を地面に着いて、呼吸を整えようとしているケイの姿があった。
咄嗟に近づこうとすると、強く静止をかけるように、彼女は声を張り上げる。
「寄るな!今の私に近づいたらお前は三枚おろしじゃ済まないぞ。私のことは気にするな、恐らくそいつが狙っているのはお前だけ。私たちの心配をする前に、自分自身の心配をしろ────」
そう告げたのを最後に、糸が切れたように彼女も地面に倒れ込んだ。
そんな中で、目の前のそいつの笑い声はより一層煩わしく耳に残った。
……まずい。着実に少しづつ追い詰められていっている。何も得られないまま人員だけが削られる状況に、二重に焦りを覚えた。
「残ったのは君たち二人だね。あとどれだけもつかな?」
目の前数十米先にはそいつの姿があり、その奥にはバアルの姿が確認できた。
あいつの表情からは、既に余裕は消え失せている。互いに限界はそう遠くないのだろう。
そして頭を過ぎるのは先程ケイに言われた言葉……確かに思い返してみればそうかもしれない。
僕以外の三人は、殆どこいつからの攻撃を受けておらず、僕だけが執拗に狙われ続けている。
「ハルサ!飛べ!!」
その時、唐突にバアルの声が耳に飛び込んでくる。
声の指示通りに飛び上がると、見てわかるほどに周囲の地面が大きく波打ったような気がした。
……なるほど、そういうことか。
意図を汲み取った僕は着地すると即座に地面を蹴飛ばして、そいつとの距離を大きく縮める。
突然の事象に対応できず、体勢を崩したそいつは、僕が放った一撃を回避することはできないと読んだのだ。
僕がそいつに接近する僅かな時間だが、そいつの表情から初めて余裕が消え失せていたような気がする。
縋るような思いで振りかざした刀は、僕が付近を通過すると同時にそいつの腹部を切り裂いた。
直前にそいつが身を捩ったため、狙っていた場所からは少しずれてしまったが、かなりの深手を負わせることができただろう。
普段よりより一層輝きを放つ刀を振り抜き、顔を上げると近くにいるはずのバアルの姿が見当たらない。
咄嗟に振り返ると、アウトレイジの首を片手で掴みあげるバアルの姿が視界に映る。
想像を絶する速度で投げ飛ばされたそいつは、その先にあったメリーゴーランドの柵に叩きつけられるが、巻き上がった砂埃が晴れる頃には既に立ち上がっていた。
「……この程度じゃ僕は倒れないよ。でも、君もそろそろ限界なんじゃない?」
先程まで張り付いていた気味の悪い笑顔がまるで嘘であったかのように、鋭い目つきで僕を見つめるそいつは、頬に着いた血を拭いながらそう僕に告げる。
腹部からはとめどなく血が流れ出ているが、そんなものには目もくれず、僕を一点に見つめ続けた。
そいつの言葉の真意に気づき、バアルがいる方向に視線を向けたときには、そいつが力なく倒れる瞬間が目に入ってきてしまった。
……もう、僕一人だけになってしまったわけか。
どうしようもないところまで追い詰められてしまったのかもしれない。そう感じながらも、僕は刀を握る手に力を込める。
「剣聖に匹敵する実力……君の本気を見せてみてよ……!」
お楽しみいただけましたか?
アウトレイジ君クアトロキルなるか
では、次は第二十五審でお会いしましょう。




