第二十三審 『次は?』
失踪です。
先に言っておくと、今回はセリフが極端に少ないです。
アウトレイジの異能力を読み取って戦闘を進めることが中心となっています。
そう叫ぶように告げたそいつに合わせて、そのメリーゴーランドに設置されていた証明は点滅し、目に見えて加速し始める。
加えて、先程から体を伝っていた妙な感覚もより一層強まっていく。
ふと手元を見てみると、片手に携えていた刀から漏れ出る紫色の光が、先程よりも明らかに強くなっている。
そこで漸く気がついた。
この妙な感覚の正体は『無理やり異能力の出力を上げられている』ことによるものだ……!
もしこれが正解だとするのなら相当まずい。
恐らく自分が発動している異能力の出力に、指定の数字分さらに出力が加算されるものだと思うのだが。あれが加速していっているのを見るに、時間経過で少しづつ引っ張り出される出力は加算されていくのだろう。
妖者は必ずしも自分の異能力の百%を扱えるとは限らない。というか、ほとんどの場合はそのはずだ。従って自分で出力をセーブしていたり、そもそも体が対応できずに一定の割合しか出力を上げれなかったりすることが多いのだが、そういう妖者にこの事象がどう働くのか全く予想ができない。
そして恐らく、対象の限界など考慮せずに出力が上がっていくものであるため、僕らにはこの結界に放り込まれた時点でタイムリミットが設けられたことになる。
つまり、結界内にいる人間は時間経過で必ず限界が来る。
この事象が今いる結界そのものに付与されている場合、結界を構築した本人にもこの事象が適用されていてもおかしくはないのだが、であれば本人には何かしらのメリットがあるのだろう。
そして、問題はそれだけにとどまらない。
僕は僕自身の限界を知らないのだ。だからこの事象にどれだけ体が耐えられるか全く想像できない。
しかし、現状の僕は刀の第一拘束を解除するだけでも無理をすれば気絶してしまうほどの強度だ。そう長くは持たないだろう。
まぁ、これが刀を使ったことによる体への負担なのか、それ以外の要因によるものなのか、僕には判別する術が無いわけだが……。
対処法は早期決着以外に無いが、ただでさえ移動速度の速いあいつのスピードがさらに上昇するのなら、仕留めるのは至難の業だ。
だが、できなければ生き延びる道は無い……!
「来ないのかい?なら、僕から行かせてもらうよ……!」
刹那にしてそいつは姿を消したかと思えば、一瞬のうちに僕との距離をギリギリまで縮めた。
咄嗟に刀を振り上げると、そいつは手に携えたナイフでそれを弾き返す。
判断が少し遅れてしまったが、僕が反応するまでそのナイフは振るわれることはなかった。
やはりこいつが言っていたように『殺す意思はない』のだろうか……?
そして、やはりこいつの移動速度も確実に上昇している。
元から途轍もない速度で移動していたそいつの動きが、より一層速くなっているように感じられた。
そいつは再びナイフを構えて僕との距離を縮めるが、気づけばそいつの横から何者かの拳が迫っており、直撃するかに思われたが、読めていたと言わんばかりに屈んで回避する。
好機だと感じた僕が狙ったのはそいつ……が、持っていたナイフだった。
屈んだそいつ目掛けて刀を大きく振るい、刃物同士がぶつかって激しく火花が散り、一本のナイフが宙を舞った。
すると僕の視界に再度映りこんだそいつが、もう片方の腕を大きく振りかぶり、屈んでいたそいつの顔面を捉えて放った拳は直撃。
空間が歪むほどの規模の衝撃波が周囲を震撼させ、それを受けたそいつは吹き飛ばされて地面を跳ねた。
軈て受身をとって着地するそいつは、図ったように足元にあるナイフを拾い上げて滴る衄を手の甲で拭う。
「……さぁ、そろそろかな」
そいつがそう呟くと、間もなくして何者かが地面に倒れたような音が聞こえる。
ℵ
私は取り出したピストルを構えたまま、距離をとって好機を伺っていた。
もし彼らに弾丸が当たってしまうようなことがあれば、命取りになることは確かだ。だからこそ慎重にならざるを得ない。
かと言って私が前衛をやろうとも、彼らよりも上手くはやれないだろう。
そしてこの妙な感覚……考えられる可能性はやはりあのメリーゴーランドだろうか。
恐らく結界内の異能力の出力に干渉するものなのだろうが、どうにもこの感覚には慣れない。
私の異能力の性質上、出力はあまり問われるものではないため、出力を保ったまま戦い続けるという経験はほとんどなかった。
もちろん異能力による攻撃は出力が上がれば上がるほど強化されていくが、その分彼らに当たってしまった時のデメリットが大きくなる。
つまりは攻撃を図るのなら、強制的にリスクの高い賭けを強いられることになってしまっているわけだ。
だが幸いか、弾丸を打ち込んだ腹部は回復されていないようだ。自己再生はできないのかもしれない。
まぁ、かと言ってあいつの動きが鈍っている様子も見えないのだが。
……その時、胸部に途轍もない苦しさが伝う。
考えているうちに限界が来てしまったようだ。
「すまない……な。先に失礼するよ……」
軈て地面に倒れ込んだ私はゆっくりと目を閉じて、意識を闇に落としていくのだった。
お楽しみいただけましたか?
読むのがキツかった人もいるかもしれませんね。申し訳ない。
では、次は第二十四審でお会いしましょう。




