第二十審 『飛んで火に入る』
失踪です。
ついに二十話突破。よく毎日続いてますね。
それから数十分経っただろうか。
自室で椅子に座ってただ天井を眺めて待機していたのだが、何故だか眠気は全く訪れなかった。
体が何か良くない事態が訪れることを予兆しているかのような、嫌な感覚を先程から絶えず感じ取っているような気がする。
大きくため息をつき、椅子にもたれかかっていた体を起こした次の瞬間だった。
刹那、鼓膜を切り裂くような爆発音が部屋の外で響き、同時に部屋全体が揺れ動いたのではないかと思うほど、強い衝撃を感じ取る。
只事では無いと思い、反射的に枕元に置いてあった刀を手に取って部屋を出ると、同じタイミングで隣の部屋の扉が開いた。
「起きていたか!落ち着いて聞け、セラム様が何者かに拐かされた。すぐに今日最初に集まった部屋に来てくれ!!」
そう言うと慌ただしく去っていくそいつの後ろ姿を眺めながら、言われたその言葉を頭の中で反芻する。
あいつが攫われた……どこか予感してしまっていた自分がいたからか、別段取り乱すことはなかったが、焦っていることには変わりない。
考えられる可能性としてはやはりRebellionのメンバーが行った可能性が高いのだが……一体どんな目的があるというのだろうか。
近衛塔を占拠していたときや、勢力争いに首を突っ込んでいる可能性があるという話を聞いたときにも思ったことだが、本当に行動目的を読むことが出来ない。
……とにかく、今は少なくとも護衛の任務を受けている最中だ。一刻も早く動かなければあいつの今後も、僕の今後も危ういだろう。
そう考えた僕は足早にその場を去った。
ℵ
走って部屋へ向かうと、先程も見た顔ぶれが既に揃っていた。
「来たか。一旦座ってくれ」
ミロクに促されるまま椅子に座らされると、その近くに座っていたケイがその時の状況を説明し始めた。
「私の隣でセラム様が眠っていた時のこと。私は眠ることなく彼女の姿を見守っていたのだが、部屋の外壁を爆破して何者かが侵入。対象は部屋に入った瞬間にセラム様を人質にとり、部屋に空けた穴からそのまま撤退していった。その影響で部屋は半壊、フードを被っていて対象の顔ははっきりと確認できなかったが、その体つきはかなり男に寄っていたような気がする」
「犯人に心当たりは無いのだが、考えられる可能性としてはやはりRebellionだな。勢力争いをしている奴らがセラムを狙うとは考えにくい。あまりにもメリットが無さすぎる。となると現状目的が全く読めないRebellionが犯人であると考えるのが自然だ」
腕を組んで険しい表情をしているミロクの言葉に、少し考えてから続けた。
「……だな。だとするとかなりまずい。奴らは何を目的にしているか、何を隠し持っているか全く検討がつかない。セラムを探すのなら、まず奴らがあいつを連れていく可能性がある場所を割り出さなければならないだろう。となると、この領土で起きている戦乱が足を引っ張る。怪しい場所を手当り次第調べるとなると、途方もない時間をかけることになるんじゃないか?」
「そうなるだろうな。だがそこまでの時間をかけることもできない……か。闇雲に捜し回ることこそまさに悪手と言えてしまうだろう。何か手がかりが掴めれば動きやすくなるんだが……私から自警団の方にでも連絡してみるのはありかもしれないな。もしかすると何かしら情報が得られたりするかもしれないが」
「いえ、この時間帯に連絡しても返事が得られない可能性の方が高いでしょう。候補のひとつには入れておくべきでしょうけど、それに合わせて行動すると時間のロスが大きすぎます。……とは言いましたけど、それだと何を宛にするべきか……」
そこまで言ったミロクを遮るようにケイが割り込む。
全員が口を噤んだその場で、とある人物が声を上げた。
「……一つ、手がかりがあるかもしれない」
声を上げたのはそれまで口を閉ざしていたバアルだった。
……そうか。こいつは僕と初めて会った時、『自警団の幹部』だと話していた。重要な要素を見落としてしまっていたようだ。
「南西の地区にある町工場なんだが、前占拠していた集団を追い返してな。勢力争いをしていたやつらの仕業かと思っていたんだが、にしては少し不自然な部分があったんだ。アイン領出身かつ、勢力争いをしている連中の大半は、現段階で能力を会得できていない。だから、基本的に占拠した建物の中には大量の武器だの弾薬だのが持ち込まれて武器庫みたいになることが多いんだが、あの場所はそういうわけではなかった」
端末の画面に地図を用意して、それを僕らに見せながら説明を続ける。
「その場所に来たばかりで、まだそう言った準備が進んでなかったと言われれば納得できるんだが。そのときに取り押さえた何人かから話を聞く限り、あの町工場に移ってきてからすでに数週間経過していたそうだ。それに、そもそも当の本人達は所属を明らかにすることこそなかったが、信仰派であることはわかった。でも『派閥なんかどうだっていい』とも言ってたな。それがあいつらをRebellionだと裏付ける何よりの証拠かもしれない」
「なるほどな、そこを調べれば何かが得られるかもしれないと。ならすぐにでも向かおう。一応自警団の方にも連絡を入れて置いてくれ、今回は私も同行させてもらうことにする。ハルサは組織の方に連絡入れなくて大丈夫か?」
「まぁ、そう言うのなら後で入れておくことにする。今は移動を優先した方がいいだろう」
「そうだな。すぐにでも出発しようか」
そう彼女が言うと、僕らは四人並んでその部屋を後にした。時刻は既に深夜二時を回っている。
深くなりゆく夜に、僕たちは自ら向かっていくのだった。
お楽しみいただけましたか?
200pt突破してました。ありがたいですね。
では、次は第二十一審でお会いしましょう。




