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何でも屋に招かれた記憶喪失で妖刀使いの僕は、全ての依頼を切り刻もうと思います。  作者: 失踪 -Sisso-
第一部 『黎明奇譚 Restart The World』

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第十九審 『領主の苦悩』

失踪です。

ランキングの通知がちょいちょい来てます。

「私の感覚ではあるんだが、奴は恐らく『歳をとっていない』」


「……は?そんなこと有り得るのか?」


「分からない。前述した筈だが、これはあくまで私の憶測に過ぎん。しかし、確かに奴は私が子供だった頃から全く歳をとっている様子が見えないのだ。有り得るとすれば、そういう能力が備わっているのだろうな」


そこまで言うと、彼女は大きくため息をついて悩むように唸った。


「だが、これはお前も覚えているかもしれないが、現状この島国には亜人(あじん)などの種族の生き物も生活している。もしかしたら過去に潰えた種族の生き残り……という可能性も考えられる。しかし、これが真であるのなら、より一層奴の正体に辿り着くのは困難を極めるな。まぁ、可能性のひとつとしてってところだ」


「なるほどな……。その亜人っていうのは現状どのくらいの割合で人間に紛れ込んでいるんだ?」


「おおよそ全体の一割から二割くらいだ。人通りの多い地域であればその辺ですれ違うこともある程度だろうな。だが、人間と目立った相違点がない者も多く、見た目で判別することは至難の業だろうな。まぁ、可能性のひとつとしてってところだ」


再度ため息をつきながら椅子の背にもたれ掛かるそいつは、(やが)て再び口を開く。

だが、何故か少し言いづらそうにしているような気がした。


「……後でお前たちに伝えようと思っていたんだが、この際お前には先に伝えておくことにしよう。つい数時間前、アイン領とノーヴェル領の国境を占拠する正体不明の集団が現れた。奴らの正体がRebellion(リベリオン)なのか勢力争いをしていたいずれかの派閥なのかはわからないが。恐らく、お前たちは当分ノーヴェル領に帰ることはできないだろう」



結局あの後、セラム達にも同じようにノーヴェル領に(しばら)く帰れない旨の通達がされ、滞在しているうちはミロクの屋敷に寝泊まりすることになった。

護衛という立場ではあるが、僕は一人で隣の部屋へ、ケイとセラムは相部屋という形で纏まった。

ふと組織の方に連絡を入れておくべきかと思い、組織に加入した段階で受け取っていた端末でルナに電話をかけてみる。

すると、数コールもしないうちに応答した。


『もしもし、どうかしたのかい?こんな時間に』


「さっき入ってきた情報なんだが、僕らが領土の境界を越えて領主の屋敷にいる間に、正体不明の集団がその境界周辺に跋扈(ばっこ)し始めたらしい。アイン領の領土曰く、暫くは帰れそうにないとのことだ」


『その話か、私の方にも既に伝わってきてるよ。その集団っていうのはまず間違いなくリベリオンだろうね。アイン領、ヴォルグ領でも勢力を伸ばしつつあるとも聞いたことはあるし、君たちがアイン領に向かったタイミングで勢力争いをしていた人々が図ったようにその場所を陣取るとは思えないしね』


「……まぁ、そうだな。とりあえず、なにか要件があれば連絡してくれ。緊急であれば、奴らを薙ぎ倒してでもそっちに向かってやる」


『それは心強い。それに……。随分、私たちに対して愛想良くしてくれるようになったね。加入直後はあんなに素っ気なかったのに』


「……気の所為だろ。まだ領主の護衛もあるからそろそろ切らせてもらうぞ」


『はいはい。お疲れ、ハルサ』


それに短く返事をして通話を終了した。

母親のことは覚えていないが、あいつからはどこか保護者のような雰囲気を感じてしまう。

肩を落として大きくため息をつくと、もとから気づいていたかのように近くの廊下の角に向けて問いかけた。


「気づいているぞ、何の用だ」


「……気づかれてしまっていましたか。電話のお相手はお母様ですか?」


「馬鹿言え、Better(ベター) Tomorrow(トゥモロー)のリーダーだよ。僕には両親がいた記憶も兄弟がいた記憶も残ってない」


「それは……大変失礼致しました。私の配慮が足らず……」


「おいおい、領主ともあろう人間が一般人なんかにこの程度で頭下げんなよ。第一、そんなに重く捉えられる方が僕としてはやりづらい」


「いえ、私は領民の皆様と対等な関係を築きたいんです。その点で言えば、私はミロクさんが羨ましいのかもしれません。少し形は歪んでいますが、領民の方々とお互いにある程度言いたいことは好きに言えているような関係性ですし、距離も離れているように見えません。私も領民の方々と距離を縮めたくて色々と考えてはみているのですがなかなか状況は好転しないもので……。そういう意味では、あなたと初めてお話した時は驚きました。あなたと同じような態度で私に接してくれる人など今までいませんでしたから」


「……その話、ケイは知っているのか?」


「はい、恐らくは。しかし彼女の意見としては『領主という立場である以上、領民との距離はある程度保つべきだ』と。勿論、彼女の意見も分かります。ただ距離が近ければいいというわけではないことも、トラブルに巻き込まれるリスクが高くなることも分かっていますから。護衛としては至極真っ当な意見です」


「なるほどな。それはそれとして、お前はなんでこんな時間に一人で部屋から出てきたんだ?」


「眠れなくなってしまって外の空気を吸いに来たんです。それなりに疲れてるはずなのに、何故でしょうね」


「じゃあ、今から少し外に出てみるか?この屋敷にはそれなりに広い庭があったはずだが」


「いえ、今日はもうこのまま部屋に戻ることにします。ケイにも心配をかけてしまうかもしれませんし」


「そうか。不安から少し思い詰めていたのかもしれないな。今日はもうゆっくり休んでくれ」

お楽しみいただけましたか?

最近は色んな人の小説を読んでみたりしてます。

時間がある時にしかできないですが、結構面白かったり。


では、次は第二十審でお会いしましょう。

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