第十六審 『信仰心』
失踪です。
最近調子がいいので本日二本目です。
そうして次の日、同じように屋敷へ向かうと、屋敷の入口で彼女らは既に僕を待っていたようだった。
その目の前には車が止まっている。
「心配なさらなくて大丈夫ですよ。時間通りなので。今日はよろしくお願いしますね」
そう言って並んでいた二人は、運転手らしき人物に促されて車に乗り込んで行った。
……まぁ、ケイには当然のように鋭い視線を向けられる訳だが。
車に近づくと、同じくその人物が目の前の車の扉を開け、僕は少し頭を下げて車に乗り込んだ。
それから車に揺られ、数時間経っただろうか。
目的地に到着した僕らは車から降りると、既に外で待機していた、黄土色の短髪が特徴的な護衛らしき人物がこちらに近づいてくる。
「待ってたぜ領主様。こっちの領主は既に席に着いてるぞ。着いてきな」
……この地域の第一印象だが、見回して見た感じ、目に入って来るのは廃れた建物ばかり。少なくとも領主の家の周りは整備が行き届いているようには見えるが。
なんとなくだが、面会が開かれる理由がわかったような気がする。
軈て建物の中に案内され、僕らはその先にあった部屋に足を踏み入れた。
「来たか。待ちわびたぞ」
その部屋にいた、ワイシャツにネクタイ、長いベージュのポニーテールを提げている女に対面の椅子に座るよう言われると、セラムは椅子に腰掛け、その後ろにはケイが佇む。
僕は部屋を見回していると扉の前に先程僕らを案内した護衛が立っているのが目に入った。
改めて見てみると、ジーンズにコートと、領主の何倍もラフな格好をしている。
すると、そいつと不本意ながら目が合った。
そいつも僕に気づいたのだろう。すると小さく手招きしてきたため、そいつの隣に移動する。
「はじめましてだな。俺は『雅 バアル』、この領土の自警団の幹部兼領主様の護衛だ。お前は今まで見なかった顔だが、そっちの領主は新しく護衛を雇ったのか?」
「まぁ間違っちゃいないな。ひとつ付け加えるなら、僕が任された仕事は家を出発してから家に帰るまでの護衛だ。元々の護衛の負担を軽くしたいだとかで一時的に雇われているだけ。僕がこの場にいるのも今回限りだろうよ」
「そっちの領主様は警戒心が強いんだな。お前、名前は?」
「ハルサだ。お前のとこの領主様はなんて名前なんだ?」
「そんなことも知らないのか?うちの領主の名前は『響 ミロク』だ。それはいいとして、お前は今回の面会の目的について聞かされているか?」
「いいや、全く聞かされてないな」
「これは俺の憶測だが、恐らく今回も難民に関する話をしに来たんだろう。アイン領は長いこと平和と呼べる状況じゃなかった。故に、耐えかねた住民は自分たちの意思で違う場所へ移ったり、居場所を追われたりすることが少なくない」
話し合いを続ける彼女らを眺めながら、バアルと名乗ったそいつは続けた。
「だが、略奪も横行しているこの領土で色々と被害にあった奴らが移動した先で普通に生活していけると思うか?当然、住む家も金も食うものも無い。結局はそいつらも他の奴らから略奪をして生きていく他無くなるわけだ。領主として、領土内でのそんな暴挙を黙って見過ごせる訳もないだろう。そう言った話題が過去数回に渡って結論の出ないまま続いている。今回は恐らく、難民による被害が増えてきてるから再度相談しに来た、ってところだろう」
僕も彼女らに視線を向けつつ話を聞いていると、その話し合いに徐々に感情が篭っていっているのが見て取れた。
「お前んとこの領主様は、やはり難民の流入を抑えたいんだそうだ。だがこっちの領主は了承しない。……まぁ、どちらかと言えば了承できないと言った方が正しいんだが。ともかく、この構図のまま膠着状態って感じだ」
確かに、難民が流れ込んできていると考えれば、ノーヴェル領に治安の悪い地域が点在していたことにも納得がいく。
ただ、その要求をあちらの領主が拒み続ける理由も疑問ではあるのだが……。
そんな話をしていた時、僕の耳に会話の一部が飛び込んでくる。
「私としてもそちらに迷惑をかけるつもりなんて微塵もない。できるならそうしたいんだが、そうもいかないのだよ。この領土で私の言葉に耳を貸すものは少なからず居れど、言葉通りに動いてくれるとも限らない。私の一声で争いが静まるのなら、とうに平穏など訪れていることだろうな。『Rebellion』の勢力も伸び続けるばかり。一度全て弾圧してしまった方が早いのかもしれないが、手間も時間も、数え切れないほどの犠牲も払うことになってしまうだろう」
僕は聞こえてきたそれを聞き逃さなかった。
Rebellion……あの組織は他の領土にも根を張っていると言うのか……?
「……なぁ、Rebellionってこっちでも名が知れてるのか?」
「あぁ、流石にな。この土地で元々起こっていた争いの元凶は、隣の領土との勢力争いだったり、それによって枯渇した物資を奪い合う内乱だったりするんだが。ここ最近、妙な集団が増えてきててな。恐らくそいつらがRebellionって奴なんだろう。しかもそいつらは明確かつ着実に勢力を伸ばしていっている。これも二人の交渉が成立しない原因にもなってるのかもしれない」
「なら、そもそもなんで隣の領土とは勢力争いが起こってたんだ?」
「それは、確か信仰派とそうでない者の派閥のぶつかり合いだったような気がするが……。明確なところは俺にもわかってない」
問答を続ける彼女らに目を向けると、彼の言った通りセラムの言葉に腕を組んで唸るミロクという構図で膠着しているようだった。
「なら、せめて行き場を失った人の居場所をアイン領に作るというのはどうでしょうか……!」
「あぁ……まぁ、それであれば─────」
刹那、付近から爆音が鳴り響く。
その場にいた護衛三人は、同時に音がした方向に視線を向けた。
「様子を見てくる。ケイは二人を安全な場所まで案内しておいてくれ」
「……了解。そっちは任せた」
「俺も様子を見てくる。そっちも気をつけろよ」
お楽しみいただけましたか?
こんな感じでたまに一日二本上がる日もあります。
では、次は第十七審でお会いしましょう。




