第32話 赤髭の皇帝は、東征する
北アイルランドからユニオンジャックは取り除かれ、代わりに緑、白、橙の三色の旗が靡いていた。
ブリテン島には、赤い背景に黒のバルカンクロイツの旗が翻っていた。
1941年6月某日、イギリスはドイツの支配下に置かれたのであった。
同日未明、旧ポーランド領チェンストンホバン。
ドイツ国防軍と武装親衛隊が続々と集結していた。
果てなき軍用車の車列に数えきれないほどの戦車の大群。
地平線まで覆いつくしそうな戦闘機の数。
加えて50を超えるであろう大型の爆撃機まで揃っていた。
1941年6月22日、ドイツ・ソビエト国境地帯
大量のドイツ軍が国境を超えて、大量のHe177が、Me262とスツーカを従えるかのように空を飛んでいた。
そして、大量の爆弾を投下し、ルブリンやブレスト、スバウキなどソ連が支配する都市が瞬く間に地獄へと変貌したのである。
オペレーションバルバロッサ。極右の大国と極左の大国にして、陸軍の大兵力要する両者がぶつかったのである。
同年6月23日、大日本帝国帝都
「杉内総理!ドイツがソビエトに侵攻しました!」
「やはりそうなってしまったか...まあ、独ソ戦前提での作戦立案だ。石原大臣!現地の辻くんにソ連侵攻作戦、『護国の騎士作戦』の発動を伝達してくれ」
「わかった!直ちに連絡しよう!ちなみにイランにいる日本陸軍皇道派については?」
「荒木大将に連絡して直ちに『黒金作戦』の発動を伝達してくれ!」
「了解!ただちに両名に指示します!」
『黒金作戦』それは、石油が黒く金になる液体であることから名付けられた。
イランソビエト国境部、パールサバードにて
江口准尉が河南大尉に尋ねる。
「河南大尉殿。作戦ですが...」
「ああ、第一フェーズは、シアザンまで一気に進軍し、シアザンを占領する。すなわち、モスクワとバクーを物理的に遮断する。第二フェーズ、バクーに向けて軍を動かしバクーを占領。一応バクーの油田には我が国の特務機関が工作している。」
「なるほど、バクーを占領できた後は、そこから本番ですかね?」
「ああ、そうだ。スターリングラードまで一気に北上する!交通の要衝を確保する!」
「しかし、地図を見ると、ソビエトはなんと大きい国ですと...」
「ただこうは考えられないだろうか。ドイツは今や西ヨーロッパを支配し、北欧も中立のスウェーデンを除けばドイツに制圧されている。まあ、フィンランドは対ソで利害が一致しているがな。つまるところ、陸軍大国であるドイツに加え、あのシモヘイヘがいるフィンランドを相手にしないといけなくなる。しかもルーマニアまでついてくる。」
江口准尉ははっとした表情をして
「つまり、いくら畑から兵士が取れるソ連といえど、これだけの国を相手にするのは厳しいということですね。」
「ああ、そうだ。すでにドイツはリガまで侵攻し、バルト海の制海権を握った。おまけにソ連軍はタリンまで後退している、」
「たしかソ連側には、二隻ほど完成したソビエツキーソユーズ級戦艦があったと思うのですが...」
「ああ、それにクロンシュタット級巡洋戦艦二隻も完成していたらしいが、戦艦の方は、42cm砲を積んだビスマルクと50.8cm砲を搭載したフリードリヒ・デア・グロッセに、クロンシュタットに関してはロスバッハに、それぞれ撃沈されたらしい。」
「やはりよくも悪くもソ連は、陸軍国家なんですね。」
「ああ、そしてこの対ソ戦は、俺たちバクー攻略にかかっている。」




