第30話 ロンドン攻防戦
1940年12月5日朝 ロンドン
ロンドン空爆から数日と経たないこの日は、瓦礫を片付ける建設業者に、オフィスに向かうサラリーマン、そして組織されたホームガードの軍事訓練など、一見すると日常が溢れているように見えて、皆正気ではなかった。
迫り来るドイツ軍と武装親衛隊に、発狂し精神的におかしくなった首相など、多くの不安を抱えながら生活していた。
しかもロンドン空爆と同時に軍用飛行場や民間の空港の滑走路とその周辺の道路が再び爆撃されたことで、大英帝国は徹底的に航空戦略を削がれていた。
12月6日夜...ロンドン市内にて
「くそっ!なんとしてもここは死守しろ!英国陸軍のの7割はやられてんだ!生き残った3割もほとんどはここにはおらん!」
1人の英国人民兵が声を荒げながら機関銃を仕切りに打っている。
ロンドンのテムズ川の沿岸で、ドイツ国防軍と武装親衛隊の猛攻は、戦闘開始から24時間以上経った今でも、絶え間なく続いている。
損害を見れば英国側が甚大なのは火を見るより明らかだった。
生き残った陸軍の地上部隊の8割はロンドン中心部での戦いに備えて待機している。
連装式になった機関銃をしきりに打ち続けている民兵は機関銃がオーバーヒートすると、すぐさま熱が冷めるまで、拳銃に取り替えて応戦していた。
別の機銃がないのは、英国の兵站が破綻しているうえ、ロンドン政府や参謀部との通信が途絶えているからだった。
1人の民兵がクールダウンを終えた連装式の機関銃を撃とうとしたとき、ヒューンという音とともに、砲弾が近くで炸裂した。
88mm対空砲を乗せたトラック、通称アハトラから放たれた88mm砲弾であった。
連装式の機関銃はゴムのようにぐにゃりと曲がっており使い物にならず、予備の機関銃も焦げて使い物にならなくなっていた。
咄嗟に物陰に隠れた民兵は、恐るべき光景を目の当たりにしていた。
十台、いや、二十台以上は連なるであろうアハトラが車列を成してロンドン中心部に向かっていた。
中心部の方に目をやればところどころ、煙が立ち上っており、一部は都市としての機能を失っているであろうことを民兵は理解した。
いや、中心部ですら、安全ではないことは明白だった。
その時だった...空を切り裂く飛行音とともに、超高速で何かが飛んでいったのだ。
それから一瞬すら感じない時間で、ロンドン市街中心部から爆発音が聞こえた。
とある民兵は振り返って、ワナワナと震えながらその方向を見た。
彼は自分の見た光景...聞こえる音...夢だと思った、いや、思いたかった。
なぜなら、飛翔体があたり、爆発して破壊したもの...それはロンドンを、大英帝国の繁栄を象徴する、ビックベンであったからだ。
倒壊しながら鐘の音を響かせるが、その音はまさに、大体帝国の没落を知らせる、終末の鐘の音だと...
そして12月8日の未明、アイルランド軍がマンチェスターを占領したとき、大英帝国は、ドイツ、日本、そしてアイルランドに降伏したのであった。




