第26話 機械仕掛けのつばめは飛び立つ
アフリカが枢軸国の手に渡り、地中海の制海権すらも手放した連合国。
1940年10月、ヒトラーは旧フランスの地の、とある空軍基地に出向いていた。
屈強なドイツ空軍兵士が一糸乱れぬ整列を組み、右手を斜め45度に上げている。
ヒトラーが演説台に立つと、彼も右手を斜め45度に上げる。
1秒たつと、ヒトラーは腕を下ろし、それに合わせて空軍兵士たちも腕を下ろした。
演説台の左右にはゲッベルスとボルマン、後ろには親衛隊長官のヒムラーがいた。
「諸君!いよいよ第一フェーズは大詰めだ!ヨーロッパ最後の抵抗であろう大英帝国本土を狙う!かつて我々を敗者へと追いやり、金をむしり取った連中にこの上ない屈辱を与えてやるのだ!今こそ!勝者となりベルリン、いやゲルマニアへ凱旋しようではないか!」
すると、高揚に駆られた兵士たちは右腕をあげて声高に「ジークハイル!」と叫んだ。
彼らの背後には、とある戦闘機が大量に配備されていた。
それはレシプロが主流である現代において、奇妙で少し変わった機体だった。
メッサーシュミット Me262、そう、ジェット戦闘機である。
第二次世界大戦が始まる前に、ヒトラーが空軍研究所に突然訪れ、ジェットエンジンの研究開発を命じたのだという。
研究者たちは、普段はオカルトじみたことを信じることは少ないが、ことヒトラーにおいては、数多の暗殺を乗り越え、予言のようなことを言っては的中させることが度々あったため、今回もその類で命令に来たのだろうと考えてた。
しかし、この一件に関してボルマンは、杉内から入れ知恵があったと話しているだけでそれ以上は何もわからなかった。
それから数十分と絶たぬうちに、空軍兵士たちはMe262に吸い込まれるように搭乗し、ジェットエンジン特有の音を響かせながら鮮やかに離陸していった。
その機体の数は数百に上る。
一方、英本土は混乱に陥っていた。
チャーチルの精神崩壊が気にならないほどの混乱と騒乱がロンドンのシティを中心に英本土を支配していた。
アイルランド侵攻のパラノイアから始まった狂気は、半年続くイギリス株の大幅下落と日に日に増える空売り、加えてイギリス国債は昨日の購入分さえ紙屑になることも多々あった。
さらに常に電話線はパニックを起こし、国道でさえ常に渋滞で5キロ走るのに60分はかかるほどだった。
1940年10月某日、この日、イギリス空軍のレーダーは大量の奇妙な反応を捉えた。
ドイツ空軍の戦闘機と思われるが、それにしてはスピードが異様に速かった。
スピットファイアでさえ、最高速度は時速500キロ強の時代に、時速800キロをゆうに超える機体が、数機、いや数十機単位で捕捉されていた。




