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7.責任を取ってくださいね

7.責任を取ってくださいね


 宮部克也。ボクの同期だ。彼女をさらっていった男。そいつが出社するなりボクのところへやって来た。

「昨日は悪かったな。美奈子にどうしても付き合って欲しいって頼まれてさあ」

「その割には人の顔を見て逃げ出したじゃないか」

「お前たちのことは知っていたからな」

「にもかかわらず、お前は美奈子をさらった」

「誤解だってば…」

 必死に弁解しようとする宮部。その背後、入口の辺りに美奈子の姿があった。こっちの様子を窺うように見ている。ボクは宮部の言葉を遮るように言い放った。

「そんなことはもう気にもしていないし、美奈子と付き合いたいのなら付き合えばいい。ボクはもう美奈子とは関係ないから」

「いいのか?」

「最初からそのつもりなんだろう。向こうで美奈子が様子を窺ってる。とっとと行って安心させてやれ」

「サンキュー」

 軽い口調で言うと、宮部はボクのそばを離れていった。様子を窺っていた美奈子に宮部が何か話しかけると美奈子は笑みを浮かべた。一瞬、美奈子がこっちを見たような気もしたけれど、僕にはもう関係のないことだ。



 美奈子はボクの2年後輩だった。彼女が入社したときにボクが新入社員研修の担当になった。付き合うようになったのは研修が終わっての歓迎会がきっかけだった。美奈子はボクの隣に座った。

「松崎さんって、営業部なんですよね。私も営業部に配属されることになったんですよ。知っている人がいる部署に配属されてほっとしてます。よろしくお願いします」

「そうなんだ。こちらこそよろしくね」

「これからも色々教えてくださいね」

「いいとも」

 高卒で未成年の彼女は本来、酒を飲んではいけなかったのだけれど、お祝いだからとフルーツ系のカクテルを人目もはばからずに、けっこう飲んでいた。

「だって美味しいんだもの」

 そう言いながら、ボクに体を寄せて来た。

「もう、それくらいにしておいた方がいいよ」

「はい。先輩が言うのならそうします。その代わり、これが終わったらもう少し付き合ってくれますか」

「それはかまわないけど、みんな二次会へ行くって盛り上がってるみたいだよ」

「私、カラオケは苦手なんです」


 歓迎会が終わり、みな席を立ち始めた。

「浅井、二次会行くぞ」

 同僚たちが美奈子にも声を掛けた。

「ごめんなさい。気持ちが悪いのでもう帰ります」

 美奈子はそう言って席に着いたままうなだれている。

「じゃあ、先輩、浅井をよろしく」

 そう言って他のメンバーは二次会へ流れて行った。

「大丈夫?」

 ボクが尋ねると、顔をあげて舌をペロッと出して笑った。

「ウソついたの?」

「気持ちが悪いのはウソじゃないです。ちょっと飲み過ぎたみたいです」

「当たり前だろう。未成年なのに」

「それを知っていて飲むのを容認していた先輩も共犯ですからね。責任を取ってくださいね」

 美奈子はそう言った更に笑った。ボクが困った顔をしていると、さっと立ち上がり、腕を絡めて来た。

「さあ、行きましょう」


 店を出てしばらく歩くと、美奈子は急にしゃがみこんだ。そして、吐き始めた。

「大丈夫か?」

「大丈夫じゃないです。急にめまいがしてきて…。きっと先輩をからかった罰が当たったんですね。私、少し休めば大丈夫だと思うので先輩は先に帰ってください」

「バカ! 放っておけるわけないだろう」

 辺りを見回すと、ちょうど“HOTEL”のネオンが光っていた。

「あそこで少し休もう」


 美奈子をホテルの部屋まで連れて行くと、ボクは彼女を残して帰ろうとした。その瞬間、上着の袖を引っ張られて彼女の上に倒れ込んだ。

「すまん…」

 ボクが彼女に詫びると、美奈子は満面の笑みを浮かべてボクを抱き寄せた。




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