第5章:股間の玩具と特定班の始動
それは、配信の同時接続者数が七万人を超えた、午前四時十二分のことだった。
神谷の遠隔操作は、すでに悪戯の域を遥かに超えていた。
アプリの画面上で過電流モードへと切り替えられたのか、体内の玩具が火花を散らすような超高速のパルス振動を繰り出し始めたのだ。
「ひぐっ……!? あ、ああっ……!!」
子宮の奥を直接焼きゴテで抉られるような激痛と、全身の毛穴から脂汗を噴き出させるほどの苛烈な絶頂。
あまりの衝撃に、咲良の腰が跳ね上がった。ペンタブのペンが指先から弾け飛び、床へと転がり落ちる。
(だめ……これ以上は、耐えられない……っ!)
ペンを拾おうと、咲良は無意識に屈み込んだ。
だが、絶頂で痙攣する足は完全に言うことを聞かなかった。バランスを崩した身体がデスクチェアからずり落ち、履いていなかったはずの下半身が、カメラの画角の真下へと大きく開かれたのだ。
めくれ上がった白いカーディガン。
無防備に晒された太ももの間、濡れそぼった秘所から覗く、鮮やかな桃色のシリコンパーツと、妖しく青く点滅するBluetoothのインジケーターランプ。
愛液まみれの玩具が、生々しい肉の隙間でブルブルと震えている光景が、高画質カメラのレンズを通して全世界へストリーミングされた。
時間にして、わずか一秒にも満たない瞬間。
「キャあっ……!!」
咲良は悲鳴を上げて床に倒れ込み、這いつくばるようにしてPCの配信停止ボタンを乱暴に叩き押した。
画面が暗転し、部屋に重苦しい静寂が戻る。
「はぁ……はぁ……っ、見えてない……よね? 一瞬だったし、服の影だったはず……」
荒い息を吐きながら、咲良は震える手でスマートフォンを手に取った。
しかし、その祈りは秒速で無残に踏みにじられた。
X(旧Twitter)を開いた瞬間、タイムラインは見たこともない速度で激流のように更新されていた。
『【速報】不眠の天才美女イラストレーター、配信中に股間のバイブをポロリ』
『ショートスリーパー(笑)の集中法、ただの遠隔オナニーだった件』
『これ神谷のサロンで配られてるやつと同じ型番じゃね?』
特定班の動きは、恐ろしいほど迅速で無慈悲だった。
わずかコンマ数秒の配信事故シーンは即座に高画質でキャプチャされ、明度とコントラストを極限まで引き上げた拡大画像がネットの海へバラまかれていた。
股間に深く食い込む桃色の玩具、点滅する青いLED、溢れ出る体液の光沢に至るまで、鮮明に解析されている。
さらに、ガジェット特定班によって玩具のメーカー、型番、アプリの遠隔操作仕様、そして神谷が過去にSNSで自慢していた「特注遠隔バイブ」とBluetoothの識別シグナルが完全一致していることまで暴かれていた。
『海外勢も大爆笑してて草』
『不眠でゾーンに入ってたんじゃなくて、遠隔でイかされてただけw』
『神谷の肉便器確定だな』
嘲笑、罵倒、そして下劣極まりない性的好奇心。
昨日まで咲良を「美しき天才」「不眠の女神」と崇めていた世界中のファンや野次馬たちは、手のひらを返してハイエナのように彼女の恥部に群がり、貪り始めた。
「嘘……嘘でしょ……? 消して……誰か、消してよぉっ……!」
咲良は頭を抱えて床を転がり、絶望の叫びを上げた。
だが、ネットの海に一度放たれた汚辱のデジタルタトゥーは、二度と消えることはない。それどころか、炎上はさらに最悪のフェーズへと移行しようとしていた。




