第4章:世界的知名度の獲得と膨らむ虚栄心
「信じられない……海外からのアクセスが、昨日までの十倍以上になってる……!?」
昼下がりの薄暗い部屋で、咲良はPCモニターに映し出されたダッシュボードの数値に目を剥いた。
前夜の夜通し配信の切り抜き動画が、海外の大手掲示板RedditやTikTokで爆発的に拡散されていたのだ。
『日本の不眠症イラストレーターが美しすぎる』
『彼女は本当に寝ていない。だがその瞳は神聖なまでの快楽に満ちている』
『作業中の吐息と身体の震えがエロすぎる。彼女は何と戦っているんだ?』
翻訳ツールで追った海外のコメント欄には、絶賛と性的好奇心が渦巻いていた。
不眠で絵を描き続ける壮絶さと、服の下で耐え忍ぶ絶頂の波が見せる妖艶な表情。二つが奇跡的なシナジーを生み、「不眠の美しき天才クリエイター」として世界中にバズり散らかしていたのだ。
フォロワー数は一晩で数万単位で 跳ね上がり、海外の通貨で打ち込まれる高額なスパチャが画面を埋め尽くす。
数日前まで貧乏フリーランスとして惨めに擦り減っていた自分が、今や世界中から注視され、崇められている。
(私……本当に『特別な存在』になれたんだ……!)
ピロン、とスマホが鳴った。神谷からのメッセージだ。
『大反響ですね、咲良さん。今夜は出力をもう一段階上げましょう。世界中のファンが、君の“集中状態”を待っていますよ』
「はい……神谷さん。私、どこまでも行きます……!」
咲良は迷うことなく返信した。罪悪感も恐怖も、世界からの承認という甘美な毒の前に吹き飛んでいた。
その夜の配信は、異様な熱気に包まれていた。
同時接続人数は過去最高の五万人を超え、何十言語ものコメントが狂ったような速度で流れていく。
午前三時。神谷の遠隔操作が本格化する。
体内のモーターが激しく脈打ち、膣壁を狂おしく押し潰す。
「ふあぁっ……っく、あ……!」
咲良は両手でペンを握りしめ、机に突っ伏しそうになる身体を必死で支えた。
画面の外、膝の間からは溢れ出た愛液が伝い落ち、椅子のシーツをぐしょぐしょに濡らしていく。漏れ出る甘い喘ぎ声と、絶頂の波に耐えるたびに聞こえる不自然な水の音が、マイクを通して世界中に拾われていた。
『まただ! ゾーンに入った!』
『なんて美しくて官能的なんだ』
『神谷のサロンに入ればこんな超人になれるのか?』
ドル、ユーロ、ポンド――様々な通貨のスパチャが画面を鮮やかに彩る。
股間から脳へと突き抜ける過激な性的快楽と、巨額の金、そして世界中からの無数の視線。それらが咲良の精神を完全に麻痺させていた。
「んっ……ふふ、まだまだ……描けますよ……私、全休なんて……いらないんですから……っ」
真っ赤に染まった顔で、うっとりと歪んだ笑みを浮かべる咲良。
彼女はもう、自分が性的玩具で遠隔操作される不眠の道化師であることすら忘れ、世界を支配する「ショートスリーパーの姫」としての全能感に酔い痴れていた。
だが、その熱狂の渦中、画面の向こうで牙を研ぐ「最悪の悪意」に、咲良はまだ気づいていなかった。




