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W  作者: ちーす
施設編
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2/22

0.始まり

「じゃんけんぽん!」


「うげ、まじ?」


「じゃ、清家がジャグの準備お願ーい」


「えぇ〜。そこをなんとか…」


「ほらダッシュダッシュ!」


「めんどくせー。」


小走りで部室棟へと向かう。この数ヶ月で高校生活

にも随分と慣れた。県一の公立高校に入学し、

副会長にもなった。一年生の中で清家拓己という

名前を知らない人間はもう少数だろう。


有名であることが幸せなわけではないが、

俺は順風満帆な青春を送れているように思う。


部室棟に着き、階段を駆け上がる。

部室に入ろうと扉に手をかけ、止まる。


(あれ?開かないな…鍵はかかってないし…)


もう一度、とノブを握った瞬間。


ガンッ


と後頭部を何者かに殴られた。


「かはっ!」


口から空気が抜ける。思ったように体を

動かすことができない。助けを呼ぼうと

口を動かすも、声は出ずただ開閉を繰り返すだけ

だった。


(くそ…誰が、何で…。何か少しでも情報は…?)


犯人の顔を見ようともがく、結局、見ることは

かなわなかったが、壁にかかった時計を視界に

入れることができた。


(今の時間は…16時12分。

 せめてこれが、何かの役に立てば―)


そこで意識は途切れた。





――ろうな?」


「さぁ?でもきっと――」


「まったくどこから―――というんだ」


「分からないけど、いつかは―」


「そうだな。じゃあ――」


『目を覚ませ』





―長い、長い夢を見ていたようだった。

だんだんと意識が浮上し、目を開ける。


(ここは、どこだ?)


どうやらベッドで寝ていた様で、

最初に捉えたのは部屋の天井だった。

しかしその天井だけで、ここは学校でも病院でも

ない場所であることは容易に想像がついた。

体を起こし、あたりを見渡す。


天井と床、柱はおそらく木製、壁は石だか

コンクリートだかでできているようだ。


電気はなく、小さな窓から差し込む日の光だけが、

室内を薄暗く照らしていた。


(かなりボロいな、ここ)


先ほどまで寝ていたベッドは所々破れており、

毛布はもはやボロきれのようだった。


(机と椅子、あとはよく分からない壺が

 あるくらいか…ん?)


机の上に奇妙なものを見つける。


(あれは、ロウソクか?)


どこか古ぼけた部屋を大方見終わり、

思考を整理する。


(学校で殴られて気を失って、目が覚めたら

 ここにいた。少なからず俺はこんな場所に

 来た記憶はない。誘拐…が現実的な気も

 するが、にしてはこの部屋が謎だな)


再び部屋を見回して、気がつく。


(かなり、中世ヨーロッパっぽい内装だな。

 何かをテーマにした企画か?

 もしやデスゲーム的なものが…!)


そこまで考えて、思考を中断する。


(ダメだ、あまりにリアリティが無さすぎる…。

 とりあえず、部屋の外に出てみよう。

 もしかしたら何か分かるかもだし)


幸い扉に鍵はかかっておらず、

簡単に開けることができた。


(誘拐ではなさそうだよな…)


扉の奥には廊下があり、

さらにいくつかの扉があった。

雰囲気は部屋と変わらず、薄暗かった。


(誰もいないな…いっそ声だしてみるか?)


恐る恐る口を開き、声を出す。


「すみませーん、誰…か……」


自分の口から出た声に困惑し、

途中で口を閉じてしまう。


(何だよ、この声…?)


明らかに、自分の声ではないと悟る。

体に異常があるのではないかと目線を腕に落とす。


「ひっ…」


肌は白く、細い。高校から陸上部に入って、

腕は焼け太くなったはずだった。


(なんで…!?)


顔を細い両腕でぺたぺたと触る。


(クソっ!どうなってんだよ…!)


癖で髪の毛をわしゃわしゃと掻いてしまう。


「っ!」


髪の毛も違う。夏に入ってかなり軽めの

ツーブロックにしたはずだ。

しかし、今触った髪は毛量が多く、

もみあげも伸びている。


(訳わかんねぇ!)

 

思わず駆け出してしまう。


「誰か!」


一番近くにあった扉を開ける。

そこには誰もいなかったが、視界の端で

あるものを捉えた。


(金属だ!)


おそらく装飾であろう青銅が何かでできた

金属の円盤は、十分な光沢を放っていた。


(これで、今の俺の顔が…!)


そしてその円盤を覗き込む。


そこにいたのは、俺じゃない、誰かだった。

髪は緑で、頬は痩せこけている。

とても不健康そうな、誰か。


「………」


その事実は、再び俺を気絶させるには

十分なほどショックな出来事だった。

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