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W  作者: ちーす
はじまりの街編
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16/22

14.Dランク

「お前ら、行った、ダンジョン、Eランクじゃ、

ない」


「じゃない…ってどういうことですか?」


「お前ら、行った、ダンジョン、Dランク。

お前ら、十分、強い。Eランク、留まるのは、

もったいない」


(つまり、俺たちの実力が見合ったダンジョンに

送り込んだってことか…それは、どうなんだ?)


結果的には問題無かったが、これで誰かが大怪我

でもしてたら大問題だ。


「お前らの闘い、何度か覗いた。実力は、Cランク

相当」


(Cランク…そんな強いのか)


シェルは誇らしげな顔をしている。アンも

嬉しそうだ。冒険者のランクというより、自分の

実力を評価されたのが嬉しかったのだろう。夢に

一歩近づいたわけだ。


「でも、経験、足りない。今は、Dランクが、

適正」


(経験…か。こればっかりは、すぐには埋まら

なさそうだな)


「俺たち、Dランクのダンジョンを攻略したって

いうことは、昇格ですか!?」


シェルの鼻息が荒い。そんなに興奮しないで

ください。


「ああ。手続き、してこい」


――


こうして、俺たちは無事Dランクへの昇格を

果たした。


翌日、シェルに剣のことを相談すると、一緒に

買いに来てくれることになった。剣に関しては

シェルの方が良い物が分かるだろう。


「これとかどうだ?」


見せてくれたのは、黒い鍔と持ち手のシンプルな

鉄の剣。その素朴なフォルムが、厨二病心を

加速させる。


「いいな。刃も綺麗そうだし」


「おじさん、これいくら?」


「ん?そいつは金貨3枚だよ」


(金貨3枚…割とするな)


「はい、まいどあり」


(今日はもう予定もないし、簡単そうな依頼を一つ

くらいやろうかな…?)


「なぁ、ベルデ。前から思ってたんだけど…」


「どうした?」


「その、【魔剣】ってやつ、俺でもできそうじゃ

ないか?」


カッチーン。コイツは何を言っているんだ。


「そんなこと言うならやってみろよ」


「見てろよ…!」


シェルが剣を抜き、前に突き出す。そして、力が

込められる。


炎が出た。


しかし、それはシェルの手からしか出ず、

剣にまでは広がらない。


「あれ…?」


「俺がどれだけ【魔剣】を習得するのに苦労したと

思ってるんだ」


物に魔法を纏わせるという行為は簡単なことでは

ない。俺だって一年かけてようやく習得したんだ。

それでも精度はまだまだだけど。


「これの特訓ばっかりしてたから、剣も魔法も

2人とは差が開いちゃったけどな」


「そうか?」


「そうだよ。一対一したら俺がボコボコにされる」


「そうは思えないけどなぁ。ダンジョンの時も、 かなり助かったし」


「前にも言ったけど、頭には自信があるんだ。

魔獣相手ならどうにかできるけど、対人となると

流石に敵わないよ」


「へぇ」


シェルが剣を鞘に戻す。


「それなら、これからもっと強くならなきゃだな」


「お互いにな」


――


「君がベルデくんかな?」


「はい。よろしくお願いします」


翌日、俺はアンに紹介してもらったサラさんに

治癒魔法を教えてもらっていた。


「まずこの治癒魔法なんだけど、ちょっと他の

魔法と違うんだよねー」


「違う…といいますと?」


「魔法だから魔力を消費するんだけど、基本的には

神様の力を借りるんだよね。そのせいで魔法だって

認めない人達には癒術とも呼ばれてるんだよ」


神…となると、信仰とか必要なんだろうか。


「まぁ、形式的なものだからちょっと別モノなだけ

って思ってくれればいいよ」


「なるほど」


「で、こっちの方が大事なんどけど、神様の力を

借りるには詠唱が必要になるんだよね」


「詠唱ですか…!」


「そ。そんなに難しくないけど、正しく唱えなきゃ

発動できないからちゃんと覚えようね」


「はい」


その後のサラさんの説明によると、治癒魔法は

詠唱の種類により等級が変わるらしい。等級ごとの

治癒できる怪我の内容は、俺風に解釈すると

こんな感じだ。


初級:病院には行かない程度の怪我


中級:病院が必要になる程度の怪我


上級:入院級の怪我


聖級:身体の一部欠損


俺は、とりあえず中級までは習得しておきたい。

サラさん曰く、上級治癒魔法からは本職…つまりは

癒士が扱うモノらしいし。


「流石に人を蘇らせたりはできないですよね」


「うーん、一応そういった研究をしてる人も

いるけど、一般的ではないかなぁ」


研究はされているのか。やはり死者蘇生は人類は

一度は夢見るのだろう。ましてや魔法なんてものが

あれば元の世界よりもあり得る可能性は高い。


「とりあえず、今日は初級治癒魔法の練習を

しよっか」


「よろしくお願いします」


「じゃ、まずはお手本ね」


そう言うと、サラさんは急に持っていたナイフで

自らの腕に切り傷をつけた。


「え…!?」


大きな傷ではないが、出血もしているし相当な

痛みはあるはずだ。


「ん?あぁ、ごめんごめん。説明してなかったね。私は【鈍痛】っていう特性を持ってるんだ。

文字通り、痛みに鈍いからこれくらいはなんとも

思わないから、安心して」


体は大切にしてほしいけど…本人が気にしてい

ないなら、別にいいか。


「今から使うから、よく聞いててね」


「はい」


「傷つきし身よ、流れし血よ、神アハムの御名の

下に、此の者へと還らん。―ヒール!」


すると、まず出血が止まり、だんだんと傷口が

塞がってゆく。そして、元通りの透き通った肌が

現れた。


「こんな感じかな」


「おぉ!」


両手でぱちぱちと拍手をする。詠唱は思ったよりも

短いし、なんとかなりそうだ。


――


なんとかならなかった。サラさんの計画だと今日は

初級治癒魔法を

3分の1くらいの精度で出せるようにしたかった

らしい。ところが俺は5回に1度出せたらいい方だ。


この原因はおそらく【魔剣】にある。


治癒魔法というものは、治癒をしたい相手の体内に

魔力を流すイメージだそうだ。これが【魔剣】と

相性が悪い。


俺の【魔剣】は、対象の外側に魔力を纏わせる。

1年かけてつくられたその癖は、簡単には消えて

くれない。


「これは…慣れてもらうしかないね」


「はい…」


サラさんも冒険者としての仕事があるので、一緒に

練習できる機会は多くない。


(自分でなんとかしなくちゃな…!)


とはいえ、サラさんがいないと治癒魔法を使う

相手がいない。自分で試すという手もあるが、

自傷行為に慣れてしまうのはまずい気がする。

自主練の方法も聞いておくんだった。


――


色々考えた末、俺は魔獣討伐に来ていた。最近個人

で魔獣討伐をしていて、あることに気がついた。


(アンの【極視】ってやっぱすごかったんだな)


以前は一日で30匹もの討伐ができていたが、

1人ではせいぜい10匹が限界だ。


そんなことを考えていると、茂みから魔獣が

飛び出してきた。


(今日は幸先良さそうだ)


討伐の依頼も兼ねているが、本命は治癒魔法の

練習だ。結局人で試す勇気が出なかった俺は、

ひとまず魔獣で試すことにした。


(効果があるかは分からないけど、

 やって損はないだろ)


「フリーズッ!」


魔獣の足元を狙い、凍らせる。随分器用に魔法が

使えるようになったものだ。これで魔獣は身動きが

取れない。


「ちょっと失礼っ」


魔獣の背中に剣で傷をつける。


「傷つきし身よ、流れし血よ、

 神アハムの御名の下に、此の者へと還らん。

 ―ヒール!」


魔獣から流れていた青い血が止まり、傷がみるみる

うちに塞がっていく。


(よしっ!一発成功!)


魔獣相手でも効果はあるようだ。


(もしかしたらコイツ、懐いたりするんじゃ

ないか?)


「グルルッ!」


到底懐く気は無さそうだ。まぁ、俺がつけた傷を

治しただけだし当然か。本当かは知らないが、

魔獣は理性を持たないといった話を聞く。確かに、

明らかに他の生物とも違うし、理性がなくとも

おかしくはない。


ということで、遠慮なく斬りつける。


「―ヒール!」


失敗した。


「―ヒール!」


失敗。


「―ヒール!」


失敗。


―――成功した!


今の所精度は4回に1度くらいだ。以前と比べれば

悪い結果ではない。だが…


(めっちゃ疲れるな、これ)


前回は1度やったらアドバイス、1度やったら

アドバイス…と、短いとはいえクールダウンが

あった。ただし今回はできていないと分かれば

すぐにもう一度詠唱を始めている。


ほとんど動いていないのに、もう息が上がっていた。

失敗した時もそうだが、成功した時にグンと体力が

持ってかれる。一発で成功させれば大したことは

ないだろうが、そう何回も試行するような魔法では

なさそうだ。


まだまだ、俺の治癒魔法特訓は続く…!

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