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W  作者: ちーす
はじまりの街編
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15/22

13.帰り道

俺たちは、焚き火を囲んで

今日の出来事を語り合っていた。


「シェルって、思ったより頼もしいんだな」


「思ったよりって何だよ」


「ほら、いつも後先考えてないイメージが

あったからさ」


「そんなにか?」


「俺が勝手に偏見持ってただけかもな」


「いや、ウチもそう思う」


「アンまで…」


「けど、今日ので見直したよ」


「へへへ、そうだろ?」


シェルが満更でもなさそうな顔をする。


「ベルデも、案外頭切れるんだな」


「一応、転移前はかなり頭良かったんだぞ」


学歴マウントをとってしまった。冒険者に関しての

知識はシェルの方が多いというのに、

何をしているんだ。


「冗談だよ。でも、たまには頼ってくれて

いいからな?」


「でも、そんな戦い方してたらいつか動けなく

なるぞ」


「はは、分かってるよ」


痛みは、もうかなり引いていた。まだ戦闘は

できないだろうが、ある程度の運動くらいはでき

そうだ。


「一昨日も話したけど、やっぱ癒士(ヒーラー)が欲しいな」


「その話だけどさ、俺、治癒魔法を覚えておこうと

思ってるんだ。癒士ってわけじゃないけど、

今日みたいな傷は治せるようにしたい」


「なら、今度ウチが人紹介してやるよ」


(アンはもう人脈を持っているのか…。どの世界に

おいても女子のネットワークというものは広い)


「サラさんって人で、ウチは時々魔法教えて

もらってるんだ」


最近よくいない日があると思ったら、そんなことをしていたのか。


「じゃあ、今度お願いしようかな」


そんな話をして、俺たちは眠ることにした。


――


朝だ。特に変な夢は見なかった。


(そういえば、昨日見た夢はなんだったんだろう?)


やはり、予知夢というやつだろうか。けれど、

どうしてあのタイミング、あの場面を夢に見たのか

が分からない。


(まぁ、夢のことなんて考えたって仕方ないか…)


他2人はまだ寝ている。体はまだ痛む。だが、

かなりマシになったようだ。


立ち上がり、外で軽くランニングをする。


(この調子なら、明日明後日にはもう戦えるように

なりそうだな)


【加速】を使えば、無傷の時と同じ速さが

出せそうだ。


【加速】


(…?)


体がズキンと痛む。まだ、加速を使っただけで

特に動いてはいない。まだ、体がジンジンと痛い。


一度、【加速】を解除する。すると、痛みは徐々に

引いていった。


【加速】


また、ズキンと痛み、その後も違和感が残る。

解除する。痛みが引く。


(今までは気づかなかったけど、【加速】を使うと

体に負担がかかるのか?)


それほど大きな痛みではないが、使いすぎは

良くなさそうだ。


昨日は戦闘中ずっとシェルに【加速】を

使っていたが、大丈夫だったのだろうか。

起きた時にでも、聞いてみるとしよう。


――


7時過ぎに、シェルが起きてきた。


「おはよう」


「悪い、片付けさせちゃって」


「こんくらいなんでもないよ」


ランニングを終えた後、俺は帰るためにテント周りの

片付けをしていた。


「そうだ、シェル、聞きたいことがあるんだけど…」


「どうした?」


「昨日、あのデb…ジャイアントゴブリンと

戦ってる時にさ、体に、こう、違和感とか

なかったか?」


「あー、どうだったかな?あんまり覚えてないし、あったとしてもそんなに大きなものじゃないよ。

どうしてそんなこと聞くんだ?」


「実は【加速】を使うのには負担がかかるっぽくて。

ほら、シェルは昨日ずっと使ってただろ?」


「なるほどな。大丈夫、心配いらないよ」


「なら良かった」


少なからず、万全な状態なら気になるほどの

負担はないらしい。逆に、体が傷ついていれば

使うタイミングを考える必要が出てきそうだ。


――


アンが起きたのは8時前だった。もう片付けは

終えていたが、アンを起こすわけにもいかず、

シェルと談笑しながら過ごしていた。

目を擦りながらアンがテントから出てくる。


「…起こしてくれても良かったんだぞ」


「別に急ぐ予定もないし、昨日あれだけ

頑張ったんだから好きなだけ寝てても許されるだろ」


「…そうか」


アンはテントの中に戻っていく。まさか二度寝を

する気ではあるまいな。予定はないが、夜道は

避けたいから本音だとそろそろ出発したい。


俺がジロジロ見ていることに気づき、

アンが振り返る。


「…着替えるだけだよ。そんなに見るな」


「ごめんなさい」


アンが着替えを終え、テントを片付ける。


「じゃ、帰るか」


俺たちはダンジョン跡地を後にした。


――


道中は、今のところ順調だ。魔獣と遭遇はするが、

行きよりもスムーズに進んでいる。この調子なら、

夕方には帰れそうだ。


俺の腰には、二つに割れてしまった魔剣が

ぶら下がっている。魔剣といっても、ただの

鉄の棒だが。街に戻ったら、本格的に剣を入手する

必要があるだろう。


よくよく考えてみれば、他2人は適正装備を

持っているのに、俺だけ鉄の棒なのがおかしかった

のだ。最近はお金も稼げているし、防具を買うのも

アリかもしれない。


というか、防具は俺よりもアンの方が必要なのでは

ないだろうか。

俺は皮の胸当てなどがあるが、アンはマントと

帽子だけ。防具というより、コスチュームだ。


「アンって、防具とか買わないのか?」


「ん?あぁ、ウチはしばらくはコレでいい。

後衛だし、こっちの方が動けるし戦いやすいんだ」


「そういうもんなのか?」


アンが首を縦に振る。そういうもんらしい。

なら、俺も遠慮なく防具を買わせてもらおう。


俺たちが話をしている間にも、シェルは道を塞ぐ

魔獣を斬り倒している。怪我はないが、その額には

汗が浮かんでいた。


「そろそろ変わろうか?」


「…でもベルデまだ不調だろ」


「おかげでかなり良くなったんだ。大丈夫だよ」


「そうか、じゃあ頼んだ」


シェルが疲れていそうだからというのもそうだが、

俺にはもう一つ理由があった。


折れた鉄の棒をそれぞれの手で持つ。不幸中の幸い

と言うべきか、棒は中央で割れており、長さは

ほとんど同じだった。


【魔剣】刀身=氷(アイスブレード)


二刀流だ。二刀流の魔剣士。憧れない理由がない。

ただ、まだ魔法の制御が難しくそれぞれに別の魔法

を込めることはできない。


(どうなるかな…?)


近くに手頃な魔獣を見つける。邪魔というほどでも

ないが、少し実験台になってもらおう。


――


結果は散々なものだった。今まで二刀流などまるで

習ったことがないのだから、当たり前といえば

当たり前だ。


まず、左手の剣をほぼ使わない。今まで右手一本で

戦ってきたのでぶっちゃけ無い方が安定する。


そしてリーチが短い。今までの半分しかない

リーチでは、必要以上に敵と接近してしまう。


(二刀流は、諦めなきゃな)


とりあえず、習う機会や必要な時がくるまでは

二刀流は封印することにした。


俺がそんな実験をしていると、いつの間にかもう

街が見えていた。行きは一日かかったが、この調子

だと半日くらいで着けそうだ。


俺たちは、ダンジョンの攻略を成功させ、確実に

自信をつけていた。その自信のおかげか、進む

スピードが段違いに速かった。


今まではアンの【極視】で常に周りを警戒しながら

進んでいたが、今は先頭が邪魔な敵を斬り、

後ろ2人は周りを見てはいるものの

リラックスしている。慢心はしていない…つもり

だが。


――


その日はコレといったトラブルもなく、街に着いた。

とりあえず宿に戻る。


途中で、ダルクルさんを見かけた。シェルが駆け

寄る。


「ダルクルさん、俺ら、ジャイアントゴブリン

倒しましたよ!」


「怪我は、無かったか?」


「あー」


シェルがこちらに視線を向ける。


「大きな怪我はないんですけど、ベルデが少しだけ…」


「そうか、それも、経験。冒険者、危険な職、

忘れたら、ダメ」


「はい!」


「それと、お前らに、伝えること、ある。

後ででいいから、ギルド、来い」


伝えたいこととはなんだろうか。

別れを告げて、宿に戻った。


――


「お前らに、謝ること、ある」


「俺らに…ですか?」


「俺、嘘、吐いてた」


「嘘、というと?」


「お前ら、行った、ダンジョン、

 Eランク、じゃない」

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