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W  作者: ちーす
はじまりの街編
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11/22

9.Eランク

「Eランクだ」


「Eランク!?」


…といっても、一つランクを上げるのにどれだけの

労力が必要かが分からない。


「Bランクになるには、どんくらい時間が

かかるんだ?」


シェルがむっとした顔になる。


「時間で解決できる問題じゃねーぞ!」


ということで、シェルくんによる冒険者ランク講座

の始まりである。


「まず、冒険者のランクはEからSまである」


(なるほど。ZZZとかはないのか)


「で、特に差が大きいのがBランクとCランクだ」


(ど真ん中か)


「Cランクまではいわばアマチュア。

職に悩んでとりあえず冒険者をしてたり、

他の戦闘系の仕事の人が暇な時にやったりってのが

ほとんどだ」


(こっちの世界に副業という概念が…?!)


「Bランクからは本職だ。冒険者のほとんどは

Bランクで、Aランクともなれば有名人!

10人に1人くらいは知ってる。Sは世界のトップで、

今はいない」


(Sがいないということは、相対じゃなくて

絶対評価か)


「とりあえず、俺らはBランクを目指す」


(ふーむ、わかりやすい。要は俺らはBランクを

目指すということだ。完全に理解した)


アンが気まずそうに手を挙げる。


「あの、ウチは別に冒険者志望じゃなくて魔導士に

なりたいんだけど」


待っていましたと言わんばかりにシェルが不敵な

笑みを浮かべる。


「甘いなアン!魔導士の6割はBランク以上の

パーティに所属していた過去がある!…と、

ロウさんが言っていた!」


「なんだと…!」


(なんだこの茶番は…)


総意ということで、俺らの当分の目標はBランク

到達に決まった。


――


俺たちは、再び掲示板の前に立っていた。


ダルクルさん曰く、各依頼には推奨の

パーティランクが書いてあるが、実際のランク

より高い依頼を受けても問題はないとのことだ。


(とはいえ、最初は慎重に…)


「おい、これなんかどうだ?」


シェルが興奮気味な声をかけてくる。


(どれどれ…って、推奨ランクC?!)


「ダメだダメ。温度感分からないんだから、最初は

適正ランクでやろう」


「えー!ケチ」


文句は言いつつも納得はしたようで、Eランクの

依頼から探すことにした。


「ほら、これとかどうだ?」


アンの見せてきた依頼は、小型魔獣の討伐だった。


(これならシェルも喜ぶだろう)


シェルの顔を見ると、目が輝いていた。


「これにしよう!これ!」


「分かってるよ…」


(戦闘狂め)


依頼書に書いてある場所は、この街のすぐ近くの

山だ。


さほど危険ではないものの、放置すると良くないから

定期的に討伐する必要があるらしい。


飛行魔法で行こう…としたが、シェルが魔法の練習

をサボりすぎてまた飛べなくなっていたので

徒歩になった。


「―よーし、ついたな!」


移動中もシェルは上機嫌だった。


(誰のせいで徒歩になったと思ってるんだ)


過去のことをとやかく言ってもしょうがない。

例の魔獣を探そうと、目を凝らす。


「おい、あっちいるぞ」


見つけたのはアンだ。


(そういや、アンは特性(ユニーク)が【極視】

なんだったっけ)


魔獣の見た目は50cmほどあるウサギのようだった。

ただ、その頭部はいつかのイノシシのように

大きな一本角が生えている。


思っていたよりずっと機敏だ。


機敏だ…が、施設のヤツらと比べれば断然遅い。


(殺傷能力ってなると…土魔法か?)


土を尖った形に変える…と、アンに止められた。


「なんだよ」


「シェルにやらせてやれ」


確かに、誰よりも魔獣討伐を楽しみにしていたのは

シェルだ。構えていた腕を下ろす。


(俺もちょっと楽しみだったんだけどな…)


まぁ、依頼書には最低10体と書かれていたし、

俺の番も回ってくるだろう。


そんなことを考えているうちに、シェルは

特性(ユニーク)【瞬発】であっという間に魔獣のそばに

近付いていた。


そして、剣を振り下ろす。


…が、完全には斬れない。表面に少し傷を

つけられたくらいだ。


(確かに施設では何かを斬るはしてなかったしな。

やっぱり素振りと実際にものを斬るのとでは

違うらしい)


魔獣の体から青色の液体が飛び散った。


(魔獣の血は青いのか…!)


流石に一筋縄ではいかないらしい。


シェルは一度離れては【瞬発】で近づき

斬りつける、また一度離れては…ということを

数回繰り返してようやく一匹目を倒した。


かなり返り血で装備が汚れているが、本人はそんな

ことお構いなしにとても嬉しそうな表情だ。


しばらくすると、魔獣は霧となって消えた。

返り血も、いつの間にかなくなっている。


(装備を汚す心配はなさそうだな)


「俺、魔獣倒したぞ!」


シェルは手に魔石…と思われるものを握っている。

もっとも、見た目はほとんど石ころだが。


「はいはい、見てたよ。良かったな」


「次はウチにやらしてくれ」


(俺の番は…)


珍しくアンがやる気なので、大人しく引いた。


俺らには何も見えなかったが、おそらくアンには

認識できたのだろう。アンが白樺の杖を構える。


それから少ししたかと思うと、急に遠くから爆発音

のような音がした。正確には、それより少し鈍く、

低い音だった。


「よし」


アンが小さくガッツポーズをする。


(今ので…仕留めたのか?)


「魔石取ってくる」


少し気になったので、俺もついていくことにした。


ついていくと、大体50mほどの地点に自然に形成

されたとは思えない、とても鋭く土が盛り上がった

場所があった。その上には、また石ころがある。


(まさか…あそこからここの敵を仕留めたのか?)


距離としては、魔法を制御するのには十分だが、

ここは山だ。途中の木々が邪魔になって、まともに

狙いは定まらない。


(これは…アンの【極視】をみくびってたかも

しれないな…)


「次は俺の番だぞ」


「別に奪うつもりねぇよ」


そんなやりとりをしながら、シェルのいる場所に

戻る。


途中で、いい感じの木の棒を見つけた。「アレ」を

するには丁度いい。拾うと、アンがガキだと

言わんばかりの目でこちらを見てきた。


(まぁ見てろって)


アンが再び魔獣を見つける。


シェルは剣士で、アンは魔法使い。…となると、 俺はどちらかと役割が被ってしまう。ただでさえ

人数不足なのだからそれは避けたい。


癒士(ヒーラー)など別の役職になることも考えたが、

あの施設ではその訓練はできなかった。


(せっかく剣と魔法の異世界に来たんだ。どっちも

堪能しなきゃ損だろ!)


さっき拾った木の棒に魔力を込める。

手元から先端までメキメキと氷が伸びていく。


(これが俺の戦闘スタイル…!)


「【魔剣】だっ!」


【魔剣】刀身=氷(アイスブレード)


これは氷の純度が高すぎて中の棒が丸見えなのが

たまにキズだが、それ以外は非常に優秀だ。


振りかぶり、斬る。浅いところで刃が止まる。


(やっぱ斬れないか…)


だが、ここで終わらないのが【魔剣】の強みだ。


もう一度、魔力を込める。氷が刀身から魔獣の

体にまで広がる。


(このまま一気に…!)


さらに魔力を込める。魔力を込め続け…魔獣は、

氷に包まれた。


「よっしゃ!」


ぶっつけ本番な部分はあったが、成功して

一安心する。


成功して…


(凍らせた後どうしよう…。氷砕いたら…また

暴れ出しそうだし、ここで一刀両断!…も多分

無理だし…)


色々考えているうちに、魔獣は霧なった。


(……これも、作戦の内だ)


魔石を拾い上げる。


(俺が、倒したんだよな…)


大きな高揚感を覚える。


「凄かったな、今のどうやったんだ?」


「この棒に魔法をくっつけただけだよ。2人と違う

戦い方をしたくて開発したんだ!その名も

【魔剣】!」


「でもよ、どちらかというとソレ棍棒って

感じじゃねぇか?」


アンに痛いところを突かれてしまった。


「本当は、こんな棒じゃなくて剣でやるはず

だったんだよ…」


「ふーん」


アンはあまり興味がなさそうだが、シェルは

興奮している。


(やはりシェルには分かるか…!この男の

ロマンが!)


「おい、今度は3匹来てるぞ」


クッ、シェルにこのカッコよさを語ろうと

思っていたのに…。


(まぁ、見せた方が早いだろう)


「一対一だな」


「誰が1番速く倒せるか勝負しようぜ!」


「ウチはすぐ終わっちまうぞ」


―そんなこんなで、俺たちは

初めてのちゃんとした依頼を終えた。

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