第2話 ・②「焼豚仙人、最弱認定される。」
それでは第2話・①の続きです。
学院中庭の中央。
巨大な測定魔法陣が淡い蒼色の光を放つ。
学院の教師たちは手際よく測定器具を並べ、生徒たちは興味津々でその様子を見守っていた。
「これより、異例処置:召喚獣適性測定を開始する!」
主任教師ガルドの声が響く。
「測定項目は、魔力量、身体能力、属性適性、契約親和率、危険度、成長性、希少度の七項目!」
「各項目は学院基準に基づき、公平に判定される!」
リシェルは思わず拳を握り締める。
(お願い……。)
(どうか一つでも……。)
(焼豚仙人の良いところが見つかって……。)
一方の焼豚仙人は、のんびりと辺りを見回していた。
「ほうほう。」
「立派な学院じゃのう。」
「庭の手入れもええ。」
「畑でも作れば、もっと良くなるぞい。」
教師が咳払いをする。
「……では最初に魔力量測定です。」
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◎第一測定 魔力量◎
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巨大な水晶柱がゆっくりと光を放つ。
「こちらへ手を。」
焼豚仙人は首を傾げた。
「触ればええんじゃな?」
「ほい。」
ぽん。
小さな手が水晶へ触れる。
学院中が静まり返った。
通常なら、この瞬間に魔力量が数値として表示される。
しかし——
……
…………。
何も起きない。
「……?」
教師が眉をひそめる。
「接触が浅いのでしょう。」
「もう一度お願いします。」
焼豚仙人は今度は両手でぺたっと水晶を抱えた。
「これでどうじゃ?」
……
…………。
やはり反応はない。
「故障か?」
別の教師が魔力を流す。
水晶は眩く光った。
正常だ。
「もう一度。」
焼豚仙人。
ぺた。
……
数字が浮かぶ。
《0》
「…………。」
学院中が静まり返る。
「ゼロ?」
「魔力量ゼロだと?」
「そんな馬鹿な!」
教師たちが慌てて測定をやり直す。
三回。
四回。
五回。
結果は同じだった。
《0》
「あり得ない……。」
「召喚獣なのに魔力が存在しない?」
ざわめきが広がる。
焼豚仙人は水晶をぽんぽん叩き、
「壊れておるんじゃないかのう?」
と首を傾げた。
その一言で、
学院中から笑いが漏れる。
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◎ 第二測定 身体能力: 筋力◎
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次は筋力測定。
巨大な魔導晶石。
押した力を数値化する魔導具だ。
Aランク召喚獣なら三千。
Sランクなら五千を超える。
先ほどのロックジャイアントは六千四百を記録していた。
教師が説明する。
「全力で押してください。」
焼豚仙人。
「よっこいしょ。」
ぽす。
……
数字がゆっくり動く。
《1》
「……。」
一秒。
二秒。
三秒。
「ぶははははは!」
「一だ!」
「赤ちゃん以下だ!」
「猫より弱いぞ!」
学院中が爆笑に包まれる。
焼豚仙人は腕をさすりながら、
「今日は調子が悪いのう。」
と真面目な顔で呟いた。
リシェルは思わず額へ手を当てる。
(仙人様……。)
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◎ 第二測定 身体能力: 敏捷性◎
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魔法陣が展開される。
教師。
「向こうの線まで走ってください。」
焼豚仙人。
「走るのか?」
「はい。」
「転ばんかのう。」
よた。
よた。
よた。
小さな足で一歩ずつ歩く。
生徒たちは失笑する。
「走ってない!」
「歩いてる!」
「おじいちゃんじゃん!」
結果。
学院史上最低記録。
教師が困った顔で記録を書き込む。
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◎第二測定 身体能力: 飛行能力◎
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「飛べますか?」
「飛べん。でも、歩けるぞい?」
「終了。」
「……。」
生徒たちが吹き出す。
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◎第三測定 属性適性◎
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巨大な六属性水晶。
教師。
「属性へ魔力を流してください。」
焼豚仙人。
「火は好きじゃ。」
赤い水晶。
少しだけ光る。
「料理に使うからの。」
教師。
「そういう意味ではありません。」
焼豚仙人。
「水。」
青い水晶。
「飲むのう。」
「違います。」
「風。」
緑。
「涼しい。」
「違います。」
「土。」
茶色。
「畑は大事。」
「違いますッ!!!」
「光。」
「朝日が気持ちええ。」
「違うっつってんでしょう?!次ッ!!」
「闇。」
「夜は寝る。」
学院中が爆笑した。
教師は頭を抱える。
「質問の意味を理解してくださいッ!」
焼豚仙人は不思議そうに瞬きをした。
「全部大事じゃろ?」
その言葉に、一瞬だけ学院長の視線が止まる。
(……全部、大事?)
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◎ 第四測定 契約親和率◎
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リシェルと焼豚仙人が向かい合う。
教師が魔法陣を起動する。
通常なら契約の強さが数値化される。
魔法陣が輝き始める。
80%。
90%。
教師たちが頷く。
「やはり公爵家の契約は高い。」
95%。
97%。
「すごい……。」
99%。
「限界値か!」
しかし。
次の瞬間。
数字は止まらなかった。
100%
101%
110%
150%
教師。
「なっ!?」
200%
300%
魔法陣が悲鳴を上げる。
学院長が立ち上がる。
「止めろ!」
しかし間に合わない。
バチッ!!
魔法陣が砕け散った。
眩い光が辺りを包み込む。
リシェルは思わず焼豚仙人へ手を伸ばす。
仙人も自然にその手を握った。
その瞬間だけ。
二人の間に、誰にも見えない黄金色の紋章が一瞬浮かび上がる。
それは、召喚陣に刻まれていた古代紋章と、まったく同じ形をしていた。
だが、その光景を見た者は誰もいない。
光が消えると、焼豚仙人はいつものように笑っていた。
「ふぉっふぉっふぉ。」
「仲良うするのが一番じゃ。」
リシェルはその手の温もりを感じながら、胸の奥の不安がほんの少しだけ和らいでいくのを感じていた。
しかし、学院長アルフレッドだけは違った。
砕けた魔法陣の破片を見つめ、静かに息をのむ。
(……契約親和率が限界値を超えた?)
(そんな記録は……建国以来、一度も存在しない。)
学院中が「最弱」と笑うその小さな仙人を見つめながら、老学院長の胸には、言いようのない予感が芽生え始めていた。
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(第2話・3/3へ続く)
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