再会
誘拐されたお姫様が孤児院で呪われた娘と馬鹿にされながらも、王女の地位を取り戻し、母を殺し自分を誘拐した犯人をスカッと退治しちゃうお話です。
シオンは最愛の娘を抱き上げると、周囲を一瞥することもなくアストラル皇国へと転移してしまった。
一瞬の出来事にその場にいた人々は、何が起きたか理解できず、ぼんやりするばかり。
しかしさすがに執政官は、すぐに気を取り直し、叫びたてた。
「何をしておる。すぐに女王陛下に報告するのだ。アストラルの王女が見つかった。すでにシオン殿下が連れて帰られたと」
その言葉でようやく周囲は理解した。
今、目の前で起きたことは現実だったと。
異能とは、魔法とはかくもけた違いなのだ。やはり同じ人間業とは、思えなかった。
「帰ったか!」
レオニス・フォン・アストラル十三世皇帝は、転がるようにシオンとそこに抱えられたリゼのもとに駆け寄った。
試しの儀の朝から、レオニス・フォン・アストラル十三世皇帝はずっと待っていたのだ。孫娘が帰ってくるのを。
昼頃にはルーンフェル王国から知らせがきた。
「銀髪に紫の瞳の少女が現れた」と。
レオニス・フォン・アストラル十三世皇帝はそれを一笑に付した。
銀髪? 魔力顕現前の幼子ならともかく、試しの儀の後ならありえないことだ。
アストラルの直系は、みな黒髪だ。
魔力が高いほど髪色が濃くなるのだ。
大量の魔力を抱えるアストラルの王女が銀髪。ばかげている。
いそいそと報告にきた伝令こそ気の毒だった。
誤報を持ち込んだと放り出されたのだから。
そこからは空気がよどみはじめ、近習たちすら近づけなくなった。
試しの儀は、つつがなく行われているはず。
だというのに、リゼは現れなかった。
空が茜色に染まったとき、一匹の小さなコウモリが飛び込んできた。
「お父様、リゼが戻りました」という伝言を携えて。
その瞬間シオンは転移した。コウモリが示した座標に向かって。
そして瞬きひとつしないうちにシオンはリゼとともに戻ったのだ。
「おじい様、ただいま戻りました。遅くなって申し訳ございません」
「待っていたよ。リゼ。お前が無事ならいいのだ。お帰り」
レオニス・フォン・アストラル十三世皇帝の目に光るものがあるのは気のせいに違いない。
なにせ冷徹、果敢、何事にも動ずることのない皇帝陛下なのだから。
父親に抱き上げられて祖父にそっと髪をすかれ、リゼも目がうるむ。
そこに皇太子がやってきた。
「リゼ、お帰り。疲れたろう。湯あみをして着替えておいで。それからみんなで食事をしよう」
皇太子の後ろには侍女たちが控えている。
「マリー。またお世話になるわね」
「はい、姫様。はい」
マリーと呼ばれた侍女は必死に涙をこらえてリゼに付き従う。
その様子にシオンは恨めしそうに兄を見る。
ずっとその手に抱いていたかったのに。
「シオン、そんな顔をするな。リゼが見つかった今、身分を整える必要がある。シオンは皇族に復帰してもらいたい。
大公領と大公位はそのままに、皇子の称号を戻したい。
そうしなければリゼに王女の称号を与えられないだろう?
そうですよね。父上」
「あぁ、そうだとも。シオンもリゼもアストラルの一員だ。レオンもたまには良いことを言う」
そう言われてレオン皇太子は苦笑する。
皇帝はシオンに甘い。それはしかたがない。レオンはいずれ皇帝になるのだから。
けれど。とレオンは思う。
自分の息子アーサーは、自分とリゼの扱いの差をどう感じるだろうか?
それでなくても妻のマリアは、シオンばかりひいきしていると普段から不満を隠さない。
シオンが皇族でなくなった時、マリアが口には出さないが喜んでいたのを知っている。
リゼが戻ったのは本当に良いことだったのか?
そう考えてレオンは慌ててそれ以上考えるのをやめてしまった。
あの第二皇子妃殺害事件。
あれは謎が多すぎた。他国のものがどうして皇子妃にあそこまで近づけたのか?
マリア皇太子妃は、日頃からサラ第二皇子妃とは仲が良くなかった。
馬鹿な。何を考えているんだ。問題があるなら父上やシオンが気が付かないはずがないのだ。そうだ。気が付かないはずがない。
だからこそシオンの皇族復帰は皇太子である自分が主導して行わなければならないのだ。
アルファポリスでも、投稿してきましたが、シリーズにしたくてこちらにも投稿させて頂きます。
アルフェ大陸にある4つの国。
その過去や未来。時空を超えてお話を紡いでいきたいと思っています。
例えばあの主人公の過去は?
とか、亡くなった祖母はどんな人だったとか。
未来の子供達の物語などです。
よろしくお願いいたします。




