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攫われたのは皇帝の孫娘でした。  作者: こもれびの空


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試しの儀前夜 セレスティア王国第18孤児院

誘拐されたお姫様が孤児院で呪われた娘と馬鹿にされながらも、王女の地位を取り戻し、母を殺し自分を誘拐した犯人をスカッと退治しちゃうお話です。

 

 明日は試しの儀が行われる。

 どの家でも10歳の子供たちとその親は気が気ではない。

 ここセレスティア王国の孤児院でもそれは同じだった。


 セレスティア王国は海に面した豊かな国だ。

 海運業と漁業、商業の地でもあり、珍しく女王を頂点とする

 男女平等の国でもある。


 商人にとって必要なのは商才であり、それに男女の区別はない。

 そうはいっても海の事故など様々な理由で親を亡くす子供は多い。

 女王ミレア・セレスティアは、彼らにも平等に生き残る機会を与えた。


 セレスティアの民は10歳までは、

 飢えることも凍えることもなく王立の孤児院で保護される。

 10歳の試しの儀は、魔力持ちだけではなく、

 どのような分野に才能があるかも判定される。

 その日子供たちは己の進路を決め、

 家業がないものは自分の親方を決めるのだ。


「ねぇ、キャンディ、ルーク、

 あなたたち明日はどんなタレントが得られると思う?」

「ルークは船乗りになると思うな。

 うちの孤児院で一番すばしっこいうえに力持ちだ」

「ならキャンディは裁縫師ね。針仕事が一番うまいもの」

「そうだな。呪いっこのリゼは、きっと魔女だって分かるんじゃないか。

 あいつはこのセレスティア王国の人間じゃないしな」

「冗談でしょ。きっとアストラルでも呪いの子だから捨てられたのよ。

 魔力持ちのはずがないわ」


 その言葉に皆はクスクスと笑い出す。

 リゼは不気味な髪色をしている。


 セレスティア王国の人々の多くは美しい空色の髪が多い。

 たまに薄いクリーム色や黄緑色の人もいるが、

 それだってつややかで、海風に吹かれてもくすむことはない。


 リゼは隅っこのベッドでそんな喧噪を黙って聞いていた。

 リゼの髪はおばあさんのように艶のないくすんだ灰色だった。

 灰色だけならまだよかったが、

 ところどころ白や黒がまばらに生えているせいで、

 よけいに気味悪い様相を示している。


 しかもリゼは密入国者だ。

 船が港に着いた時、商品である樽の中から小さな女の子が現れたときには、

 港は大騒ぎだった。

 密入国は犯罪で本来なら厳しく罰せられる。

 だがリゼは「家は知らない。気が付いたらここにいた」

 と言い張るばかり。


 わかったのはリゼという名前と5歳だということだけだ。

 奇妙なことに幼女は何も覚えていなかったのだ。


 しかたなく孤児院に送られたが、そこでの扱いはあまり良いものではなかった。

 子供たちは少女がこの国の人間じゃないということを聞いて、仲間とは認めなかった。


 どうしてあんな老婆みたいな髪なんだ?

 きっと呪われたんだよ。

 呪われて捨てられた子だ。

 いつの間にか少女は呪いっ子と呼ばれるようになってしまった。


 孤児院の大人たちも、あえてそれを止めようとはしなかった。

 少女に朧気に生える黒髪が、魔女を思い出させ 

 あのいまいましいアストラル皇国を思い出させるからだ。


 今では魔女や魔法使いは異能だとわかっている。

 けれどそれは祖先が無実の者を虐げてきたということだ。


 それを認めるのは嫌な気持ちがした。

 そのうえ今やアストラル皇国が世界を統べているのも、

 なんとなく気に食わない。

 セレスティア王国は陽気で豊かで自由の国だというのに。


 あれだけアストラル皇国が公女リゼを探していたというのに。

 そして見つかった時期も年齢も名前すら同じだというのに。

 誰もリゼが公女だとは思いもしなかった。


 あんなくすんだ髪の公女がいるだろうか?

 公女ならもう少し威厳があるだろう。

 しかもアストラル皇国が公女の似顔絵を世界中にばらまいたのが、

 かえってよくなかった。

 似顔絵の中の公女はバラ色の頬と美しい銀色の髪をしていたのだから。


 さてリゼである。

 リゼの心中は複雑だ。

 リゼの中の人はリゼではなかったのだから。


 リゼ――いや中の人である太田 理恵子は

 リゼにいきなり飛びつかれた日のことを思い出していた。

アルファポリスでも、投稿してきましたが、シリーズにしたくてこちらにも投稿させて頂きます。

アルフェ大陸にある4つの国。

その過去や未来。時空を超えてお話を紡いでいきたいと思っています。

例えばあの主人公の過去は?

とか、亡くなった祖母はどんな人だったとか。

未来の子供達の物語などです。

よろしくお願いいたします。

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