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攫われたのは皇帝の孫娘でした。  作者: こもれびの空


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27/29

2つの密会

あと少しで完結です。もう少しお付き合いください。

 船は無事にルーンフェル王国に到着した。

 港には歓迎の旗が飾られ、お父様と護衛隊が迎えに来てくれている。

 勿論 ルーンフェル王も多くの騎士を護衛として派遣してくださっている。

 けれど、ここでは着々と私を攫う準備がされているのだから、

 お父様も 側近たちもピリピリしている。


「お父様、お迎えありがとうございます」


「元気そうだな、リゼ。道中何事もなかったか?」


 お父様はそう言いながらジロリとアーサーを睨む。


 私の婚約者なのだから、そう意地悪をしないでほしいのだけれど。

 ここでアーサーを庇えば、お父様はますますヒートアップしそうだから、

 アーサーには悪いけど知らん顔をしておく。


 子供たちは馬車に乗り込み、お父様はそのまま護衛隊と同行するのかと思ったら

 お父様も馬車に乗り込んでしまった。


 お父様と私と側近のミーナとベルク。

 アーサーとノアと近習2名

 サトリと侍女4名

 馬車の割り振りはこうなった。


 馬車を増やすことになったけど、周囲も諦め顔だ。

 お父様が私に甘いのは有名すぎる話だから。

 本当は警護対象は一つにまとめたほうが、警護しやすいのだけれど。


「王都までは一本道です。街道は広く整備されていますから、快適に移動いただけます。」


 騎士の説明に近習が質問している。


「時間はどれくらい掛かる?」


「はい、休息を入れて5時間です」


「休息は無しだ。4時間で王都までまっすぐ行く」


 お父様が命じた。休息なしはきついと思う。馬も人間も。

 けれども皇子の命令には逆らえない。こうして一行は進みはじめた。


「お父様、私は何をすれば?」


「まず転移でルーンフェル王 エルディンに会う。顔だけ覚えてくれればよい」


 次の瞬間、私たちは私室にいるエルディン王に会った。

 挨拶もなしに私がエルディンの顔を認識したかと思ったら、また転移。

 今度はずいぶんお年を召した方だ。


「サンクス法王だ。すぐに異空間に法王とルーンフェル王を召喚しろ。我々も同席する」


 目まぐるしいが必要なことなのだろう。

 異空間ではサンクス法王にエルディン王が抱き着いている。


「ようやくお会い出来ました。お救いできずに申し訳ございません」


 サンクス法王は優しい顔で王を見ている。

 私はあわてて、ゆったりとしたソファーセットをだした。

 エルディン王が抱えるようにして法王を座らせている。


 私がお父様の顔を見ると


「エルディン王は若くして父王を亡くしておられる。

 サンクス法王はエルディン王にとっては父親のような存在なのだ」


 なるほど。私たちは邪魔にならないように、隅に控える。

 法王がいた部屋には幻影を置いているし、

 この異空間は法王の部屋と繋げてある。

 もし人が来たら法王はすぐに部屋に戻せる。


 そのために私はこの空間の隅にいる。必要だから。

 法王と王は静かに話をしている様子だ。やがて王が私たちを呼んだ。


「助かったぞ。礼をいう。お前がリゼか?妹にそっくりだな。

 私の力が及ばずつらい思いをさせたな。」


 そう言われて初めて私は、エルディン王が叔父様なのだと実感した。


「いいえ、叔父様。お会いできてうれしゅうございます。

 私はお母さまに似ておりますか?」


 私が悲しむと思うのか、お母様の話をしてくれる人がいなかったから、

 お母さまと似ていると聞いて嬉しかった。


「あぁ、サラの幼いころによく似ている。

 髪色が銀髪なら見分けがつかぬほどだ」 


「サラ王女の夫君と娘御か? こたびは世話をかける。我が教団に巣食ったネズミどもは一網打尽にしてくれる!」


 おおう、サンクス法王が気炎をあげている。お年を召しても血気盛んなご様子。

 なんだかエルディン王が慕うのが判る気がする。


「詳しい作戦会議は、今夜。こちらの結界で」


 お父様がそう言うとお二人は大きく頷かれた。


 私達がこうして密会している頃。敵の方でも同じように密談していた。



 黒衣の男は、ファイル筆頭枢機卿に呼び出されていた。


「ようやく我等の悲願が叶う時が来た。ここまでくれば、

 あのおいぼれを生かしておく必要もない。

 よいか?あの爺の扉を塗り固めて、誰も出入りできないようにしろ。


 窓も全て塗り込めるのだ。あの、おいぼれめ。

 最後は暗闇の中で、そうだ。音も光も届かぬ闇の中で、

 一滴の水も飲めずに乾き死ぬがよい」


 まるで狂気のような悪意に満ちた言葉に、さすがの黒衣の男もひるんだ。


「しかし、なぜそこまで……」


「忘れてはいかぬなぁ。そのような惨い死に方をさせたのは、

 あのアストラル皇国の仕業なのじゃからのう。

 民はどう思うだろう。そのような悲惨な死にざまを見せてやれば?」


「では、法王の遺骸を民に晒すとおっしゃるので?」


「あのじじいは法王などではないぞ。

 異端者であるルーンフェル王に肩入れしてきたのだからな。

 あ奴は悪魔じゃ。そうであろう?」


「はっ!仰せの通りにございます」


「決行は3日後じゃ。

 あのアストラル小童の洗礼式で奴らの悪行を暴いてやらねば。

 小娘を生贄にする祭壇の準備を怠るなよ」


「大精霊さまは、喜んでわれらの願いを聞き届けてくださるじゃろう。

 しかし、よくもまぁこの時期に大精霊召喚呪文が見つかったものじゃ。

 やはり神は我らと共におわすのじゃ」


 法王の居室では、幾人もの職人が扉を塗り固める仕事をしていた。


「しかし、このような惨い罰を受けるなんて。

 一体どんなことをした奴なんだ?」


「知らないのか?この中にいるのは悪魔だそうだ」


「なんだと。悪魔だと。悪魔が存在するなんて!」


「だから、しっかり悪魔が逃げないように、隙間なく埋めるんだ」


「へい!わかりました」


 すべての隙間は封じられた。

 もしかしたら、法王は発狂するかもしれないと、黒衣の男は思った。

 だとしたら、遺骸はむごたらしいものになるだろう。



 法王の居室が塗り込められた頃

 ルーンフェル王の居室では、

 のどかにチェスを楽しむ法王とエルディン王の姿があった。


「師匠は、相変わらずお強いですなぁ」


「おだてても待ってはやらんぞ」


「そんな」


「しかし、シオンも考えたものだ。

 わしの部屋とお主の部屋を転移門でつなぐとはな」


「転移門は、動かせるらしいですから、この件が片付いても、

 師匠の部屋と繋げてもよいでしょう?」


「王がなにを甘えたことを」


「しかし、師匠。師匠と互角にチェスができるのは、私しかいませんよ。

 チェスやりたくないんですか?」


「しょうがない。仕事をさぼるでないぞ」


「はい、師匠」


「ところで、エルディン。シオンに頼まれていた結界は、もう張っているのか?」


「はい、民には国家行事のため3日間は、国境を封鎖するよう通達しています。

 出ることはかなわなくても、入るのは自由なので、

 商人たちからも文句は出ておりません」


「そうか、まぁ奴らが逃げられぬならよいわ」


「師匠は、かなりお怒りですね」


「当たり前だろう。人を塗り込めるなど。鬼畜の所業じゃ。

 それにリゼを生贄にしようなどと。あんなに愛らしい子供を」


「まことに、私の姪は愛らしいですからなぁ」


「リゼは私の娘ですからね」後ろからいきなり声が掛かる。


「おや、シオンじゃないか?どうかしたのか?」


「わが軍師からの確認です。本当に大精霊召喚を行うのか知りたいようなので。

 ノアはそこまでしなくても、問題なく作戦は決行できると言っていますが」


「駄目じゃ。駄目じゃ。わしの教団が起こした不始末じゃ。

 最後はわしが片付けるに決まっておろうが」


 シオンはふぅとため息をついた。


「義兄上、これでは過剰戦力ではございませんか?」


「よいじゃないか。ここまでお膳立てしてもらったのだ。

 最後はお主らは見学していれば良いだろう?」


 まぁいいか。シオンは小さくつぶやくと消えた。

https://ncode.syosetu.com/n5996ml/  アルフェ大陸物語第2弾です。

「生贄予定のモブですがなぜか神龍さまの番として溺愛されています」

はじめました。

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