兄と弟 皇太子私邸にて
誘拐されたお姫様が孤児院で呪われた娘と馬鹿にされながらも、王女の地位を取り戻し、母を殺し自分を誘拐した犯人をスカッと退治しちゃうお話です。
アーサーがシオンの執務室に入ってきたとき、
シオンはマリア姉上にしてやられたとイラついていたところだった。
マリアの提案が最も簡単に周囲を納得させられることなど、
男たちだって知っている。
それでも誰もそれに触れないのは、5年も親元を離れていたリゼのためだ。
「10歳だぞ。まだ10歳なんだ」
「叔父上、皇后陛下の結婚は確か7歳だったと聞いております。」
シオンの目の前にリゼを抱えたアーサーがいた。
魔力強化を使ってはいるだろうが、
アーサーは軽々とリゼをお姫様抱っこしているのだ。
「リゼ!」
慌ててシオンは甥から愛娘を取り返した。
「何があった!」
思わず漏れた殺気は子供の耐えられるものではなかったろう。
だがアーサーは何事もないように答えた。
「僕の婚約者は、魔力を使いすぎたようです。
それでなくとも先ほどの話し合いは、リゼの心には負担でしょうからね。
叔父上。僕の婚約者をすぐに休ませてください」
シオンはアーサーを睨むとすぐに部屋を出て行った。
アーサーはクスクスと笑った。
「このぐらいの煽りで殺気を漏らすなんてね!
だから叔父上、あなたは甘やかされていると言われるのですよ」
「しかも執務室に一人置いておくなんて」
「そうとも限りませんよ」
アーサーの後ろで声があがった。アーサーは振り向きもしない。
「お前の親分は皇帝のはずだろう?」
「はい。皇帝陛下からシオン皇子の守護を命じられております」
「わかった、わかった、出ていくけどね。僕はどうやって家に戻ればいいのかな?
まさか馬車を仕立てろとでも?」
バタン。大きな音をたててドアが開く。
「兄上からの命令だ。お前は私が転移で連れ帰る」
シオンは言うが早いか、いきなり転移魔法を行使した。
「叔父上、僕はまだ子供ですよ。もう少し丁寧に扱っていただきたい」
「ぬかせ!」
シオンはポイっとアーサーを私室に放り込むと、そのまま皇太子の部屋に転移した。
部屋ではすでに夜着に着替えたレオンが
酒瓶をずらりと並べてシオンを待っていた。
「これは、これは。これほどの一品、さては父上をゆすりましたか?」
「いいや、父上から先ほど届いた。
どうせお前が来ることもわかっていたんだろう」
兄と弟は、しばらく黙って酒の味を楽しんだ。
せっかくの酒だ。楽しまないでどうする。
「で……?」
シオンが聞く。
「アーサーは謹慎だ。そしてリゼは病気でしばらく休むことになる」
「なるほど。病弱な姫君と暗愚な後継者か。いい組み合わせだ」
またしばらく無言が続く。
この兄弟にとって無言は信頼の証だ。
言わずともなすべきことはわかっている。
「動くか?」
「この程度で動いてくれるなら楽なんだがな」
「それもそうだ」
グイっと酒を飲み干してシオンが立ち上がる。
シオンが消えるとレオンが零した。
「フィクトスを動かすと後が面倒だぞ」
その脳裏には愛しくも恐ろしい妻の顔が浮かんだ。
「としても動かせる駒は、ノアなんだよなぁ」
今頃シオンはフィクトス邸で古狸と、
あの計算マシーンのようなノアと会っているのだろう。
「リゼ あの腹黒ノアを選ばなくてよかったと思うぞ」
そう呟いて頭を振った。我が子の執着心を甘く見ていた。
どうせ妻をうまく転がしたのはアーサーだ。
リゼから逃げ場を奪った。
それだってリゼは自分で選んだと信じているだろう。
「まぁ、どっちもどっちだったな。もう選べないけどな」
ほんの少し姪が気の毒になるレオンであった。
アルファポリスでも、投稿してきましたが、シリーズにしたくてこちらにも投稿させて頂きます。
アルフェ大陸にある4つの国。
その過去や未来。時空を超えてお話を紡いでいきたいと思っています。
例えばあの主人公の過去は?
とか、亡くなった祖母はどんな人だったとか。
未来の子供達の物語などです。
よろしくお願いいたします。




