アーサーの本性
誘拐されたお姫様が孤児院で呪われた娘と馬鹿にされながらも、王女の地位を取り戻し、母を殺し自分を誘拐した犯人をスカッと退治しちゃうお話です。
誰もいなくなるとアーサーは不機嫌を隠そうともしない。
「この円卓と椅子をしまってソファーでも出してくれ。ゆったりできるようにな。オットマンを忘れるな。勿論クッションもだ。もう疲れたんだ」
はい、はい。さすが皇太孫殿下でいらっしゃること。
リゼは黙って言う通りにしてやった。
そして自分も向かいのソファーに身体を沈める。
誰がこの異空間を維持していると思っているんだ。疲れたのはこっちの方だよ。
アーサーはどっかりとソファーに座るとオットマンに足を伸ばして、
居心地を確かめている。
「おい、茶も出さないのか?」
さすがにリゼも、茶を頭からぶっかけてやろうかと思ったが耐えた。
まずはアーサーの本心を知らなくては。
こんな機会はもう訪れないかもしれないのだし。
空中に温かなハーブティを浮かべると、するするとアーサーの手元へ。
そして自分もカモミールティーを一口すする。
「なんだ、俺はジンジャー入りのミルクティーが好きなんだ。甘くしたやつ」
そういいながらも、お茶を飲んでいるのは、よほど喉が渇いていたのだろう。
リゼだって喉が渇いた。さっきの会話は刺激が強すぎた。
「それで?言いたいことがあったら言いなさいよ。
あんたが話があると言ったのでしょう?」
リゼがそう問いかけるとアーサーは鼻で笑った。
「淑やかそうにしているが、それが素か? お前一体何者なんだ?」
アーサーの質問にリゼは首を傾げた。
そういえば昨日もアーサーは、リゼを偽物扱いしていたが?
リゼがよほど不審な顔をしたのだろう。
アーサーは説明を始めた。
「俺の異能は真贋だ。相手の魂まで見える。お前おかしいんだよ。
いくら試しの儀で魔力が増大したって、
魂の大きさまで倍になるわけないだろうが。
化け物か? お前は」
とうとう化け物呼ばわりですか。
リゼはうんざりしたが、魂が見えるならアーサーの疑問も、もっともだ。
素直に今までの経緯を話す。
黙って聞いていたアーサーはようやくリゼを従姉妹と認識したようだ。
カップを消すとリゼに目を向ける。
「それで?従姉妹殿はどうするつもりだ。この婚姻。受けるのか?」
「どうすると言われても他に方法がないでしょう?
叔母様の提案は、この状況をひとまずは解決できるわ」
「ひとまずは…だな?」
アーサーはそう言いながら立ち上がりリゼの前に立つ。
「一度だけチャンスをやろう。リゼお前は皇族として一生を終えるつもりか?
お前は女だ。もし望むならノアと結婚するという選択肢もある。
公爵夫人として穏やかに生きる。
そんな生き方だって、お前が望むなら俺が必ず叶えてやる。選べ!」
びっくりした。侮っていたアーサーが覇気に満ちている。
皇太孫の称号は伊達ではないということか?
ノアとの結婚。リゼはノアを思い浮かべた。
黒に近い濃紺の髪。穏やかな気性。将来のフィクトス公爵。
たしかにノアとならリゼは穏やかで静かな生活が送れるだろう。
「確かにね。でもそれもアストラル皇国が無事に存続してこそよ。
私は異能の力を知っている。
だからお祖母様が危険を予知したのなら、これからのアストラル皇国は騒乱に巻き込まれる。
私が予言の娘なら逃げたりしないわ」
アーサーは両手でソファーの角をつかむとグイと顔を近づけた。
ちょっと待って!これって壁ドンの変形バージョンじゃない。
リゼはどこを向いていいか分からずオロオロと視線をさまよわせる。
「つまり。お前は今から俺の婚約者で、妻というわけだ。
チャンスは与えた。だからもう逃がしてはやれないぞ」
「な、な、なにを言ってんのよ。第一サトリ姫はどうするのよ?
サトリ姫が好きなんじゃないの?」
アーサーはさらりとリゼの髪に口づけを落としながら
「さっそく嫉妬とは可愛らしい婚約者で嬉しいよ」
と笑う
そのままリゼの頬を優しく撫でると
「サトリはね。まぁ面白いやつだよ」
と呟く。
出ました!面白いやつ発言。これって絶対好きってことだからね。
リゼはもう必死だ。
なにしろアーサーの色気が凄い。
10歳だよね。10歳ですよね。
どうやらそのまま意識を失って、アーサーを皇宮に帰しもできずに異空間が壊れたらしい。
なにしろアーサーに抱えられてお父様の執務室に現れたので、大騒ぎになったんだって。
しかもアーサーは自分の悪行をしれっと隠して、
異能を使いすぎたのでしょうと笑ったというのだから、あんまりだ。
アルファポリスでも、投稿してきましたが、シリーズにしたくてこちらにも投稿させて頂きます。
アルフェ大陸にある4つの国。
その過去や未来。時空を超えてお話を紡いでいきたいと思っています。
例えばあの主人公の過去は?
とか、亡くなった祖母はどんな人だったとか。
未来の子供達の物語などです。
よろしくお願いいたします。




