第四話:隠しクラス
九条 貴教は迷わず、その選択肢へ手を伸ばした。
?????
指先が触れた瞬間──
画面が黒く染まった。
同時に、世界が“止まる”。
崩れかけた瓦礫。
振り下ろされるオーガキングの拳。
舞い上がる粉塵。
すべてが空中で静止していた。
「……時間が、止まってる?」
声だけが、自分の中に落ちる。
その静寂の中心に、人影が現れた。
白いローブ。
顔は光に覆われ、輪郭すら曖昧。
「最初の試練を越えた者よ」
九条は身構える。
「お前は誰だ」
その存在は、少しだけ間を置いて答えた。
「私はこのシステムの案内人」
「人は《管理者》と呼ぶ」
九条の目が細くなる。
「この世界をゲームにしたのはお前か?」
「違う」
即答だった。
「私は“維持する側”だ」
空気がわずかに重くなる。
「ゲームに変えた存在は、別にいる」
「別に……?」
「いずれ知ることになる」
その言葉と同時に、新たな画面が開いた。
隠しクラス
《適応者》
世界で最初の取得者
クラス効果
・戦闘中の成長速度 大幅上昇
・あらゆる武器適応
・条件付きスキル自動習得
・レベル上限:∞
「……∞?」
通常クラスには「Lv.100」の制限がある。
だがこのクラスだけは違った。
限界という概念そのものがない。
管理者の声が続く。
「この力を得るかどうかは、お前自身が決めろ」
九条は一度だけ、息を吐いた。
そして、笑った。
「決まってる」
「生き残るためなら、どんな力でも使う」
選択確定
《適応者》取得
その瞬間。
時間が動き出す。
世界が“再起動”したように。
オーガキングの拳が迫る。
だが──
九条は片腕でそれを受け止めていた。
「グォッ!?!」
鬼の目が揺れる。
初めての動揺。
ステータスが跳ね上がる。
筋力:42 → 58
適応発動
九条は一歩踏み込む。
棍棒を捨てる。
拳を握る。
「もう十分だ」
右拳。
ただそれだけ。
ドォォォン!!
衝撃波が空間を貫いた。
オーガキングの胸に大穴が開く。
1,204ダメージ!!
鬼は数歩後退し、ゆっくりと膝をつく。
「グ……ァ……」
そして──光の粒となって崩れた。
ボス討伐成功
レベルアップ!
Lv.10 → Lv.15
金色の光が九条を包む。
同時に、巨大な宝箱が出現する。
「これが……報酬」
中にあったのは一本の黒い剣。
《黒曜の剣》
レア度:S
そして一枚の地図。
中央には赤い印。
第二ダンジョン
《竜哭の塔》
その瞬間。
世界中の空に同じ通知が表示された。
世界初のボスが討伐されました
討伐者:?????
「誰だ……?」
「もう倒した奴がいるのか……?」
世界がざわつく。
しかし名前だけが、意図的に伏せられていた。
その頃。
九条は静かに黒い剣を腰に差していた。
「まだ始まったばかりだ」
その言葉は、誰にも届かない。
ただ一人──
暗闇の中で、それを“見ていた者”がいた。
薄暗い空間。
少年。
年齢は九条と同じくらい。
その瞳には、同じように青いシステム画面が浮かんでいる。
彼は笑った。
「ようやく現れたか」
「《適応者》」




