第三話:逆転のレベルアップ
棍棒と棍棒が激突した。
ガァァン!!
衝撃で店内のガラスが一斉に砕け散る。
九条 貴教は数メートル後ろへ押し戻されるが、今度は倒れなかった。
鈍器術 Lv.1 → Lv.2
「戦うだけで……上がるのか!」
理解した瞬間、背筋に冷たいものが走る。
この世界は、“努力”ではない。
“戦闘そのもの”が成長だ。
オーガキングが再び突進する。
九条は真正面から受けない。
横へ滑るように回避。
振り下ろされた棍棒が床に突き刺さる。
「今だ!」
死角。
左膝。
全力で叩き込む。
ドゴォッ!!
クリティカル!
94ダメージ!
「通る……!」
オーガキングが片膝をついた。
だが──笑った。
「グルァ……」
胸元に黒い紋様が浮かび上がる。
第二形態へ移行します
赤い光が全身を包む。
骨が軋む音。
折れた角が再生し、皮膚は黒い甲殻へと変わる。
オーガキング・ベルセルク
Lv.20
「まだ上がるのかよ……!」
圧が変わった。
“強い”ではない。
“殺意そのもの”だ。
連撃が始まる。
一撃、二撃、三撃。
空気ごと潰すような攻撃。
九条は紙一重でかわし続ける。
回避成功
敏捷が上昇しました
敏捷:24 → 25
回避 Lv.1 を獲得しました
「戦いながら進化してる……!」
世界の“ルール”が見え始める。
戦えば経験値になる。
使えば熟練度が上がる。
追い詰められるほど、新しい何かが開く。
「だったら──」
九条は踏み込んだ。
あえて、距離を詰める。
「グオオオ!!」
拳が迫る。
ギリギリで潜り抜ける。
そして──腹部へ。
棍棒を叩き込む。
ズドォォン!!
162ダメージ!!
オーガキングが大きくのけぞる。
その瞬間。
視界に金色の文字が浮かんだ。
称号獲得
『格上喰らい』
自分より高レベルの敵へのダメージ+20%
「称号まであるのかよ……」
九条は、思わず笑った。
「この世界、奥が深すぎるだろ」
戦闘はすでに10分を超えていた。
店内は瓦礫の海。
オーガキングのHPは、わずかに残る。
HP:83 / 2000
あと一撃。
そのときだった。
天井が崩れた。
「きゃあっ!」
少女が落ちる。
反射だった。
九条は棍棒を捨て、飛び出す。
受け止める。
軽い衝撃。
その瞬間──
隙。
「しまっ──」
ドゴォォォン!!
爆煙が視界を覆う。
少女は震えながら目を開ける。
「……助けてくれて、ありがとう」
煙の中。
そこにいたのは──
片腕で鬼の拳を受け止める九条だった。
全身が金色に光る。
レベルアップ!
Lv.9 → Lv.10
節目レベル到達
一次クラス選択が可能です
視界に並ぶ選択肢。
剣士
魔法使い
格闘家
聖騎士
暗殺者
狩人
錬金術師
?????
最後の一つだけ、名前がない。
ただ“?????“だけが、脈動するように輝いている。
空気が、わずかに歪んだ。
説明が出る。
隠しクラスの解放条件を満たしています
九条は、その文字を見つめる。
「……これ、普通じゃないだろ」
少女の手が、かすかに彼の服を掴む。
「お願い……死なないで……」
オーガキングが吠える。
まだ終わっていない。
だが、世界はすでに変わっていた。
“勝つ方法”ではなく。
“選ぶ世界”へと。
九条はゆっくりと手を伸ばす。
その指先が──
????? に触れようとした瞬間。
画面が一瞬だけ、ノイズを走らせた。
そして、誰もいないはずの場所から“声”がした。
──「選択を確認しました」




