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レベルアップする世界 ーこの世界はレベルを上げなければ生き残れない。ー  作者: レモンティー


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11/13

第十一話:紅蓮の竜

――塔の天井が消えた。

崩れたのではない。

砕けたのでもない。

最初から存在しなかったかのように、世界から消失した。

開いた空の向こうは、夕焼けではない。

すべてが紅く染まっていた。

雲は燃え、大気は揺らぎ、空間そのものが悲鳴を上げている。

そして――。

ゆっくりと、その姿が現れた。

巨大な翼は雲海を切り裂き、一枚羽ばたくだけで暴風が塔を揺らす。

溶岩のように赤く輝く鱗。

山脈にも匹敵する巨体。

黄金に燃える双眸。

その視線だけで、生き物としての本能が「逃げろ」と叫んでいた。

視界にシステムウィンドウが浮かぶ。

災厄《紅蓮の竜》

Lv.??(測定不能)

「……これが、災厄。」

九条貴教は息をのんだ。

その一歩。

それだけで塔の階層が砕け、何百トンもの瓦礫が奈落へ落ちていく。

隣では神代蓮が肩で息をしていた。

失った右腕はゆっくりと再生しているが、その顔色は決して良くない。

「正直に言う。」

蓮が苦笑する。

「勝率は一割もない。」

「低すぎるだろ。」

「運が良ければ二割。」

「慰めになってねぇ!」

だが、軽口を叩けたのはそこまでだった。

紅蓮の竜がゆっくりと息を吸い込む。

その瞬間。

空気が熱ではなく、恐怖に焼かれた。

「来るぞ!!」

蓮の叫びと同時に――

ゴォォォォォォォォォッ!!

世界が燃えた。

炎ではない。

空間そのものが赤く染まり、存在が焼き尽くされていく。

床が消える。

壁が消える。

光さえ消える。

「避けろ!」

二人は同時に飛び退く。

しかし、逃げた先まで世界が燃えていく。

システムが激しく警告を鳴らした。

HP:190 → 12

再生不能ダメージ検知

通常ルール適用外

「ルール外って何だよ!」

貴教は歯を食いしばる。

回復もしない。

レベルアップも意味を持たない。

この炎だけは、ゲームの法則を無視していた。

蓮は竜を睨みつける。

「やっぱりだ……。」

「こいつはモンスターじゃない。」

「じゃあ何なんだ!」

蓮は静かに答えた。

「世界を終わらせるために造られた存在。」

「世界の初期化装置――それが災厄だ。」

紅蓮の竜が翼を広げる。

バキバキバキッ!!

空間に巨大な亀裂が走る。

その向こうに見えたのは、大地でも空でもない。

何も存在しない、真っ白な空間。

「……世界が、消えてる。」

貴教は言葉を失う。

蓮は静かにうなずいた。

「負ければ終わる。」

「人類も、この世界も。」

「全部リセットだ。」

その時だった。

貴教の胸に刻まれた青黒い紋様が激しく輝き始める。

管理権限(β)

同期開始

頭の奥へ直接声が響いた。

最終プロトコルを検知。

解放条件:

【災厄との直接接触】

適合率確認中……

「これが……最後の切り札。」

貴教は静かに目を閉じた。

そしてゆっくり開く。

迷いはもうない。

「やる。」

蓮が驚いたように振り向く。

「おい、何をする気だ!」

貴教は《蒼天の剣・改》を強く握る。

「賭ける。」

「この世界がルールなら。」

「俺が書き換える。」

紅蓮の竜が再び咆哮する。

その瞬間。

貴教は真正面から駆け出した。

「適応――」

「最大解放!!」

世界が白く弾け飛ぶ。

システムが絶叫するように表示を変える。

管理権限(β)

強制進化

管理権限(Ω)

接続開始

時間が止まる。

違う。

止まったのは時間ではない。

世界を支える"法則"そのものだった。

蓮が目を見開く。

「そんな……。」

「βの先があったのか……!」

貴教は答えない。

静かに剣を振り下ろす。

ズドン――。

音ではない。

"結果"だけが世界へ刻まれる。

紅蓮の竜の左翼が、存在ごと消えた。

災厄HP

100% → 87%

初めて。

災厄が傷ついた。

だが、その代償はあまりにも大きかった。

ボロリ。

貴教の右腕が、肩から先ごと消えていく。

血は流れない。

存在そのものが削除されていく。

「ぐっ……!」

激痛が遅れて全身を襲う。

膝をつく貴教。

「貴教!!」

蓮が駆け寄る。

だが貴教は笑っていた。

「まだ……終われない。」

その笑みに、紅蓮の竜が初めて反応する。

怒りではない。

恐怖。

まるで、自分を傷つけられる存在を初めて見たかのように。

その時だった。

空のさらに向こうから、誰かの声が響く。

低く、威厳に満ちた声。

「ようやく……ここまで来たか。」

貴教は空を見上げる。

「誰だ……?」

声は静かに続く。

「その剣は、《始まりの鍵》。"

「世界を書き換える資格を持つ者だけが扱える剣だ。」

蓮の顔から血の気が引く。

「そんな……。」

「まだ、上がいるのか……。」

次の瞬間。

紅蓮の竜の背後で空間がゆっくりと裂けた。

漆黒の玉座。

世界の外側に存在するような巨大な王座。

そこに、一人の人物が腰掛けていた。

顔は闇に隠れて見えない。

だが、その存在感だけで理解する。

こいつがすべての始まりだ。

王座の人物がゆっくりと立ち上がる。

そして、静かに笑った。

「歓迎しよう。」

「適応者。」

「ゲームは――」

「ここから始まる。」

その瞬間。

貴教の視界が白く染まり、新たなウィンドウが開いた。

■■■■■

解放条件達成

最終継承システムを起動しますか?

【YES】

貴教は震える左手をゆっくりと持ち上げた。

その指先が、"YES"へ触れようとした瞬間――

世界が再び、大きく軋んだ。

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