表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベルアップする世界 ーこの世界はレベルを上げなければ生き残れない。ー  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/13

第十二話:最初のプレイヤー

白い。

視界のすべてが、果てのない白に塗り潰されていた。

音もない。

風もない。

重力すら感じない。

あるのは、自分の意識だけ。

貴教はゆっくりと目を開く。

「……ここは」

返事はない。

その代わり、白い空間の中央に一人の人影が現れた。

黒でも白でもない。

まるで世界そのものを人の形へ切り抜いたような存在。

顔は見えない。

それなのに、その存在を見ただけで本能が叫ぶ。

──この世界で、一番危険な相手だ。

影は静かに口を開いた。

「ようやくここまで来たか。」

穏やかな声。

だが、その一言だけで空間が震えた。

貴教は睨み返す。

「お前が……王座にいた奴か。」

影は静かに首を振る。

「王ではない。」

少しだけ間を置いて告げる。

「私は――最初のプレイヤーだ。」

その言葉に、貴教の思考が止まった。

「……プレイヤー?」

影は頷く。

「そして、この世界をゲームへ変えた存在でもある。」

空気が凍る。

やはり。

予感は当たっていた。

貴教は拳を握る。

「全部、お前が始めたことか。」

影は否定しない。

ただ静かに語り始める。

「この世界は、何千年も前から終わりを迎えていた。」

白い空間に映像が浮かぶ。

枯れ果てた大地。

滅びゆく文明。

静かに崩壊していく世界。

「誰も進化しない。」

「誰も挑戦しない。」

「世界は、ゆっくりと死んでいた。」

映像が消える。

「だから私はルールを書き換えた。」

「強くなれば生き残れる世界。」

「戦えば進化する世界。」

「それがお前たちの見ているシステムだ。」

貴教は笑った。

怒りを押し殺すような笑みだった。

「ふざけるな。」

一歩踏み出す。

「そのせいで何人死んだと思ってる。」

「家族を失った奴もいる。」

「街も世界も壊れた。」

「それを『進化』で片付ける気か。」

影は静かに答える。

「数え切れない。」

その一言に感情はなかった。

だからこそ、貴教の怒りは限界を超える。

「命を数字で数えるな!!」

叫びと同時に踏み込もうとした。

だが。

右腕がない。

《蒼天の剣・改》も、光を失いかけている。

それでも貴教は止まらない。

「なら教えろ。」

「なんで俺なんだ。」

「なんで《適応者》なんだ。」

影はゆっくりと手をかざす。

白い空間に無数の映像が浮かび上がる。

そこに映っていたのは――

九条貴教。

いや。

違う。

貴教と同じ紋様を持つ人間たち。

何十人。

何百人。

何千人。

その全員が倒れていた。

呼吸もない。

動きもない。

まるで時間だけを止められたように。

貴教は息を呑む。

「……何だ、これ。」

影は淡々と言う。

「適応者計画。」

「君は一二七四人目だ。」

世界が止まった。

「……は?」

「前にも、適応者はいた。」

「しかし全員失敗した。」

「世界に適応できず、停止した。」

貴教の背筋が凍る。

自分は特別ではなかった。

数え切れない屍の上に立っていただけだった。

その瞬間だった。

「……やっぱりな。」

聞き慣れた声が響く。

「蓮!」

振り返ると、神代蓮が白い空間の中へ現れていた。

だが様子がおかしい。

無数の光の鎖が身体へ突き刺さっている。

まるで、この空間そのものに繋がれているようだった。

「悪い。」

「隠してた。」

蓮は苦笑する。

「俺も適応者じゃない。」

「正確には――」

少しだけ目を伏せる。

「一二七三人目だ。」

貴教の瞳が揺れた。

「……一つ前?」

「そう。」

「俺だけ生き残った。」

「でも成功じゃない。」

「半分だけ世界に取り込まれた。」

光の鎖が強く輝く。

蓮が苦しそうに顔をしかめる。

「だから俺は……管理者側にも、人間側にもなれない。」

貴教は拳を握る。

「そんなこと……。」

影が静かに続ける。

「蓮は限界だ。」

「そして次は君の番。」

その瞬間。

白い世界が大きく揺れた。

ゴォォォォォォ!!

紅蓮の竜の咆哮。

塔の外で、世界はまだ戦っている。

空間に巨大な亀裂が走る。

そこから燃え盛る空が見えた。

影が静かに手を上げる。

世界管理システム

最終フェーズ開始

世界初期化まで

00:09:59

「なっ……!」

十分。

世界の終わりまで、あと十分しかない。

蓮が叫ぶ。

「やめろ!!」

「リセットしたら全員死ぬ!!」

影は振り返らない。

「違う。」

「最初から存在しなかったことになる。」

その言葉に、貴教の表情が変わる。

死ではない。

存在そのものが消される。

家族も。

仲間も。

救った人々も。

出会った記憶も。

全部。

「認めるかよ……。」

貴教は折れかけた《蒼天の剣・改》を握り締める。

「そんな終わり方。」

剣が淡く青く輝く。

蓮が目を見開いた。

「まさか……。」

貴教は静かに笑う。

「ゲームだろうが。」

「神だろうが。」

「世界のルールだろうが。」

「全部まとめて――」

剣を構える。

その瞬間。

画面いっぱいに、見たことのない黄金の文字が浮かび上がった。

最終解放条件達成

唯一適応者を確認

隠しクラス《創世者》解放可能

YES/NO

貴教は迷わなかった。

ゆっくりと右手を伸ばす。

「……YES。」

その瞬間。

世界中に、かつてない轟音が響いた。

そして、最初のプレイヤーが初めて表情を変える。

「……あり得ない。」

「そのクラスだけは――存在しないはずだ。」

貴教の身体から、蒼と金の光が天を貫く。

世界そのものが、新しいルールを書き始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ