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17. 魔物の愛情 (4)

庭を歩いていた男は建物の中に入ることができず、その場にへたり込んで床に寝転がってしまった。光は遠ざかったが、空の星と月明かりが地面を照らしている。床は思ったより冷たく、その冷たさが彼の意識を呼び覚ましたが、だるい体は意識とは裏腹に動かなかった。


『ベッドじゃないのに。こんなところでそのまま寝ても平気かな?』


すうっと閉じていくまぶたが重い。少し肌寒くはあるが耐えられないほどではなかったため、このまま眠ってしまうこともできた。しかししばらくして、アルビトは妙な視線を感じ、ゆっくりとまぶたを持ち上げた。白いものが見える。


『何だ?』


巨大な白い物体が自分を見下ろし、その重みで押さえつけている。ぼんやりした意識と霞んだ視界のせいで、アルビトはその正体をすぐには認識できなかったが――


「はあ」


熱い吐息とともに右頬に落ちた温かい液体が眠気を吹き飛ばし、一瞬で視界が鮮明になった。そして酔っていた頭は恐怖で凍りついた。


「ティ……ティアラ」


全身が真っ白になっている中、自分を見下ろす瞳だけが不気味なほど赤い。見たくなくても、彼女自身が放つ光がその表情をありありと映し出していた。嬉しくてたまらない、獲物を見つけた飢えた獣が歓喜するような表情だ。


「ここにいたんですね」


牙が突き出ている。溢れる水路の水のように、顎を伝って流れ落ちる唾液が止まらない。首を横に傾け、期待と興奮に呑まれた女の姿を見た瞬間、アルビトは完全に正気に戻った。そして奇妙な事実に気づく。


今はティアラが魔物へ変わる時期ではない。わざわざその時期に合わせて結婚式を挙げたのだから。しかし、なぜ魔物になったのかは重要ではなかった。アルビトは今日一日で自分が犯した致命的な失敗に気づき、激しく後悔した。


結婚式の夜、何もしないまま花嫁を寝かせてしまった。朝になると彼女が目を覚ます前に屋敷から逃げ出した。連絡も残さず、夜遅くまで酒場に入り浸っていた。それだけでも最悪なのに――


彼女と初めて出会った日の恐怖が蘇り、アルビトは怯えて助けを呼ぼうとした。しかし叫んだところで駆けつける者などいないだろう。だが優しく頬を撫でる手に、暴れていた心臓は落ち着きを取り戻した。以前出会った本物の魔物と違い、目の前の怪物の目的は彼を殺すことではないのだから。


これは本物のアラクネではなくティアラだ。ティアラはあくまで体が魔物に変わるだけで、人間を餌とは見なしていない。だから早く失敗を謝罪して許してもらわなければならない。そうすれば純粋な子供のように彼を慕う彼女は、何も起こさないはずだった。


だが彼の単純な期待は無残にも外れた。ティアラの姿は見た目だけが変わったのではなく、どこかひどく不安定に見えた。それどころか、ひどく酔った人間のように首をふらふらと横に揺らし、そのうえ瞬きすらしない。その様子はぞっとするほど不気味だった。


「どこへ行っていたんですか?」


アルビトの顔に触れていた指がゆっくりと下へ降り、彼の服を掴んだ。そして力を込めて気持ちよいほどあっさりと引き裂いた。肌が夜気にさらされ体が震えたが、アルビトの視線は依然として酔ったように笑う女の顔へ向けられていた。


「ティアラ?」


消え入りそうな小さな声だった。不安でたまらず、以前のように優しさを演じることができなかったからだ。そして今は何を言っても聞こえていない――そんな確信を抱いたのは、ティアラが下半身を彼の股間に擦りつけ始めた時だった。


髪も体も白く変わっていたが、下半身の形はまだ人間のものを保っている。しかし見た目は白い寝間着姿の華奢な女性であるにもかかわらず、アルビトは捕食者を前にした蛙のように身動きできなかった。


「お腹は空いていないんです。でも、その分どんどん体が熱くなって。アルビト様、あなたに触れたくて、どうしても我慢できないんです」


確かに人間のように話しているのに、アルビトの声は届いていない。食欲ではなく性欲に支配されている状態なのだろうか。あっという間にアルビトのズボンの前をびっしょり濡らしたティアラは、寝間着を脱ぎもしないまま腰を揺らした。


触れ合う部分にはさらに強い圧力が加わり、アルビトも嫌でも勝手に反応して下半身が硬くなるのを感じた。その硬さが気に入ったのか、ティアラは顔の筋肉を緩めた表情で妙な喘ぎ声を漏らした。


「はぁん。あ……もっと」


下半身を押しつける力がさらに強まり、腰を振る速度も速くなる。しかし美女の誘惑に喜ぶどころか、アルビトは正気を失ったティアラの顔に不快な嫌悪感を覚えた。


『急にどうしたんだ? まるで薬にでも酔ったみたいに』


そう思いながらも、自分の意思とは関係なく昂ぶる男根に悪態をつきたくなったが、我を忘れて腰を前後に振っていた女がさらに激しく暴れ始めたため、何も考えられなくなった。ティアラはアルビトの上に跨ったまま、ひいっひいっと息を漏らしながら、自分の陰部を押しつけ擦り続けた。


敏感な部分に強い刺激を受けた彼女は体をぶるぶる震わせて喜び、それでも止まることなく腰を振り続けた。ズボンどころか下着まで濡らす液体が、温かくもどこか馴染みのある失禁臭を放ち、アルビトはわずかに顔をしかめた。


だがそれで終わりではなく、ティアラはこの上ない恍惚とした興奮を浮かべた顔を近づけ、アルビトの唇のすぐそばまで迫った。


「アルビト様。キスしたいです。キスしてください」


結婚式まで挙げた仲でありながら、二人はまだ一度も口づけを交わしたことがない。優しい婚約者を演じてはいたが、そこまで進む雰囲気でもなかったし、できるだけ性的接触は後回しにしたかったからだ。しかしティアラはずっと彼に触れたいと思っていたのだろう。


唾液まみれになった唇が近づいてくると、アルビトはとても仮面を被り続けることができなかった。そしてその表情を覆い隠すより先に、さらに大きな問題が起こった。懇願するように近づいていた女の表情が、唇が重なる寸前で冷たく固まり、興奮の熱が消え去ったのだ。


少し驚いたように目を丸くした彼女の顔からは、紅潮すら消えていた。興奮に染まっていた声も鋭く変わり、まるで初対面の人間のような声で問いかけた。


「化粧品の匂い。女の匂いが二人分。誰?」


安物の化粧品と香水の匂い。そして彼の肌や服に残った痕跡まで。しかも女性が二人いたことまで正確に見抜く恐ろしい嗅覚に、アルビトは自分の呑気な行動を深く後悔した。やはり酒を飲むべきではなかった。


冷たい白い指が再びアルビトの頬をゆっくり撫で、遅れて彼の顔にうっすら残った口紅の跡を確認した。顔も服も隠しようがなく、先ほど傍にいた女が悪戯っぽく残したキスマークがはっきり残っている。


それをすべて確認した女は、殺す勢いでアルビトの首を両手で掴んだ。押し倒された男は想像以上の怪力と恐ろしい気配に、呼吸することさえ忘れた。


「誰なの? 一体誰なの? あなたは私の夫でしょう? 私を愛するはずでしょう?」


理性を少し失ったのか、普段の優しく淑やかな口調ではなく、恨みと非難に満ちた声がアルビトの行動を責め立てた。


「私はまだあなたとキスしたことすらないのに。どうして他の女とはそんなに軽々しく触れ合えるの? どうして?」


何でもいいから言い訳をしなければならなかったが、その手の力は首を折らんばかりに強く、アルビトは一言も発せず酸素を求めた。どうか離してくれと言わんばかりにティアラの手や腕を叩いたが、嫉妬で正気を失った女の手はびくともしなかった。


結局、目が裏返る寸前で無理やり力を込めて首を締める手を引き剥がした男は、横を向いて激しく咳き込んだ。みっともなく唾まで吐きながら苦しんだアルビトは、慌てて体を起こして逃げ出そうとした。言い訳が思いつかなかったからだ。


しかし彼が自分から離れ、振り返りもせず逃げようとすると、ティアラの凄まじい叫び声が暗い庭に響き渡った。


「逃げるな!逃げたら殺してやる!」

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