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2050  作者: 落川翔太
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六月三十日。東京・亀戸(かめいど)


 それから三日後。その日、真平は休みだった。

 その日の夜、真平は田宮さんに彼女の実家でご飯に誘われていた。真平は楽しみにしていた。

 夜六時を過ぎた頃、真平は亀戸駅に着いた。彼女の実家は、そこから十分ほど歩いた所にあった。

 田宮という表札を見つけて、真平はその家のインターフォンを鳴らす。すぐに「はい」と、聞き覚えのある声が聞こえた。田宮さんだ。

「永尾です」

 真平が応えると、「どうぞ」と彼女は言い、すぐに玄関の扉が開いた。

「永尾さん、こんばんは!」

 田宮さんが笑顔で出迎えてくれた。「どうぞ」と、彼女が中へ案内する。それから、彼女にダイニングに案内された。

「永尾さん、いらっしゃい」

 カウンターキッチンから田宮さんのお母さんが笑顔で出迎えた。茶髪のパーマヘアで、黒のワンピースを着ていた。

「こんばんは。今日はお招きして頂き、ありがとうございます」

 真平がそう挨拶すると、「いいのよ! 旦那はいないけど、ゆっくりしていってちょうだい」と、彼女のお母さんは笑って言った。

「永尾さん、こっちに座って!」と、田宮さんにダイニングの椅子に座るように言われた。真平は、彼女に言われた席に着く。

「永尾さん、何飲みます? ビール? ハイボールもありますけど?」

 田宮さんにそう訊かれ、「じゃあ、ビールで!」と、真平は答えた。

 それから、田宮さんが冷蔵庫から缶ビールとグラスを二つ持ってやって来た。彼女はグラスを真平の前に置くと、プルタブを開けてそこへビールを注いだ。

「ありがとう」

「じゃあ、乾杯!」

 グラスを鳴らした後、真平はビールを一気に飲む。

「ぷはー」

 そのビールは美味しく感じた。

 田宮さんも一口飲む。

「はー、おいしい!」と、彼女も美味しそうな顔をした。

 テーブルには美味しそうな料理が並べられていた。ローストビーフ、カルパッチョ、バーニャカウダ、ガーリックトースト、それから、チーズフォンデュである。

「す、すごい豪華ですね!」

 真平がそう言うと、「でしょ?」と、田宮さんが得意げに言った。

「これ、全部、田宮さんが作ったの?」

 真平がそう訊くと、「私とお母さんで作りました!」と、彼女は言った。

「へー、すごい!」

「さあ、食べて食べて!」

「いただきます」

 早速、真平は手を合わせて、ローストビーフを一枚箸で取り、それを頬張る。そのローストビーフはしっとりとしていて、肉のうまみがしっかりと感じられて美味かった。

「うん、うまい!」

 それから今度、ガーリックトーストを一口齧る。トーストのサクッとした食感と、バターやにんにくの風味が感じられて、これも美味しかった。

 美味しくて、真平は頷く。

「これも食べてみて下さい」と、田宮さんがカルパッチョを指す。

「これは、(たい)?」

「そうです」と、田宮さんが言った。

 真平はそれを一口食べてみる。すると、弾力のある鯛の歯ごたえと、どこか柑橘っぽい風味がした。

「どうですか?」と、田宮さんが訊いた。

「うん、おいしい。これ、柑橘系の味がするね」

「レモンとオレンジを混ぜたソースが掛かっています」

「へー、そっか! だから、こんなフルーティで、さっぱりしてるんだね」

「そうです」彼女はそう言って、微笑む。「あ、あとこれも」

 そう言って、彼女は野菜スティックを指す。

「これって、バーニャカウダだっけ?」

「そうです。この野菜を、こっちのソースに付けて食べてみて下さい」

 そう言って、田宮さんがスティック状のニンジンを特製のソースに付けて食べて見せる。

 その後、真平も同じように一口大のアスパラにそのソースを付けて一口食べた。

「うん、おいしい」

 みずみずしいアスパラの食感と、そのクリーミーな特製ソースがマッチしていて、美味しかった。

「ですよね?」

「うん、これならいくらでも野菜が食べられますね!」

 真平がそう言って笑う。

「ええ、ワインとかのお酒とも合いますよ」

 それから、彼女がそう言った。

「ああ、確かに」

 真平は言い、残りのアスパラをそのソースに付けて食べる。その後すぐにビールを飲む。確かにビールとも良く合った。

 それから、田宮さんのお母さんも交じり、三人で料理を食べながら雑談をして盛り上がる。

 それらを平らげた後、デザートにティラミスと紅茶を頂く。気が付けば、午後九時を回っていた。

「じゃあ、そろそろ」

 真平はそう言って、帰ることにした。

「永尾さん、待って」田宮さんが言う。「私、駅まで送りますよ」

 彼女がそう言って、真平はそうしてもらうことにした。

「じゃあ、帰りは気を付けて下さいね」

 田宮さんのお母さんが玄関まで見送ってくれた。

「はい。今日は色々とご馳走様でした」

 そう言って、真平は田宮さんのお母さんに頭をペコリと下げる。それから、田宮さんが玄関の扉を開け、二人で外へ出た。


「田宮さん、今回は誘ってくれてありがとう」

 帰り際、真平は改めて彼女にお礼を述べた。

「いえ、いいんです」と、田宮さんが言った。「私も楽しかったですよ」

「僕もです」

 それから、彼女が黙って歩く。真平も黙って歩いていた。

「あの」

 少しして、田宮さんが口を開いた。

「うん?」

「あの、永尾さん……。今度、永尾さんが良ければ、二人で遊びに行きません?」

 それから、彼女がそう言った。

「遊びに? いいけど、どこ行く?」

「永尾さん、映画とかお好きですか?」と、彼女が訊いた。

「いや、あんまり観ないけど……」

「そうですか……。じゃあ、カラオケとかボーリングはどうです?」

「カラオケか……」

 そう言って、真平は考える。真平は今のカラオケ事情を思い出す。今年に入って、例の制度に代わってから、日本の全カラオケ店では日本語の曲が歌えなくなっていた。今では、海外の曲しか歌えずにいるのだった。正直、それで真平はカラオケに行きたいと思わなくなっていた。

「カラオケはいいや……」と、真平は言った。

「じゃあ……」

「ボーリングならいいよ」

 真平がそう言うと、「分かりました。じゃあ、ボーリングに行きましょう!」と、田宮さんが笑顔で言った。「次の休みに行きましょ!」

「うん」

 しばらく歩いていると、亀戸の駅に着いた。二人はそこで一度立ち止まる。

「田宮さん、ありがとう」と、真平は言った。

「いえ。じゃあ、また」

 彼女はそう言って、手を振った。

「また」と真平も手を上げて言い、改札をくぐった。

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