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『戦闘力ゼロのテイマー、なぜか神様に気に入られながら気づいたらギルド最強になってた』~ハズレ職だと笑われた俺、神獣を仲間にしてしまった件~  作者: 赤ん坊


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第59話「霧を晴らす者」

陸が、その日の仕事を終えたのは、夜だった。納品前の最後のメールを送って、椅子に背を預ける。肩が、固まっている。半日、ほとんど動かずに、コードとにらめっこしていた。


時計は、二十一時を回っていた。


ドアが、控えめにノックされた。柚希だった。開けると、いつもより、目の下が暗い。手には、コンビニの袋。


「夜勤、三連勤、やっと終わった」と柚希。「死ぬかと思った」


「お疲れ」


「これ、半額だったから」袋を押しつけてくる。中身は、惣菜と、缶のコーヒー。「夜勤明けで、料理する気力、ない」


陸は、それを受け取った。


「上がってけよ」


「コーヒーだけ」


柚希が、缶を一本、袋から抜いて、部屋に上がった。ソファに、沈むように腰を下ろす。プルタブを開ける、小気味いい音。一口飲んで、ようやく、人心地ついた顔をした。


「そういえば」と陸。「神獣が、また増えた」


柚希の手が、止まった。缶を口に運ぶ手が。


「……は?」


「光の神に会った。ルクスっていう。その眷属が、仲間になった」


「四体目?」柚希が、目を見開いた。「ちょっと待って。神様、全部で七柱でしょ。もう、全部、会ったってこと?」


「ああ」


柚希が、額に手を当てた。疲れているはずなのに、その目だけは、子供みたいに輝いている。


「ベータのとき」と柚希。「光の神なんて、噂もなかった。誰も、たどり着けなかったの。いちばん奥にいる神だって、言われてて」


「奥にいた、わけじゃないけどな」と陸。「ただ、寂しそうだった」


「……寂しそう?」


「眩しすぎて、誰も、そばに来られなかったんだと」


柚希が、コーヒーの缶を見つめた。それから、ふっと笑った。


「陸くんは、そういうの、ほっとけないもんね」


「べつに、ほっといても、よかったんだけどな」


「嘘」


短く言い切られて、陸は口をつぐんだ。


「今夜、やる?」と柚希。


「夜勤明けだろ。寝ろよ」


「寝るのは、いつでもできる」柚希が、立ち上がった。「四体目の神獣、見たい。それに……」


言いかけて、やめた。コーヒーを飲み干して、缶を潰す。


「なんでもない。一回、部屋戻る。準備したら、入る」


ドアが、閉まった。陸は、ぬるくなった自分の缶を、一口飲んでから、ヘッドセットを被った。


拠点は、夜の森の中にあった。焚き火が、ぱちぱちと爆ぜている。


陸がログインすると、足元で、白い小さなものが顔を上げた。ユニコーンだった。ぬいぐるみほどの大きさで、額の角だけが、ほんのり光っている。


少し遅れて、柚希がログインしてきた。狙撃手の軽装。背に、弓。


その視線が、まっすぐ、陸の足元に落ちた。


「……それ」


柚希が、ゆっくり近づいてくる。ユニコーンが、柚希を見上げた。つぶらな、黒い瞳。


「ほんとに、いる」と柚希。膝をついた。「触って、いい?」


「こいつ次第だな」と陸。「嫌なら、逃げる」


柚希が、おそるおそる手を伸ばした。ユニコーンは、逃げなかった。むしろ、その鼻先を、柚希の指にこすりつけた。


「……っ」柚希の肩から、力が抜けた。「やわらかい」


肩の上で、小夜が、ふん、と鼻を鳴らした。新入りが柚希に懐くのを、品定めするように見ている。それから、興味をなくしたように、尻尾を揺らした。認めた、ということだ。


「この前は、すごかったぞ」と宗介が、柚希に言った。「光の神が、まるごと降りてきて。眩しくて、なんも見えなかった」


「で、陸が、その神を説教して」とハル。「焚き火みたいになれって」


「説教は、してない」と陸。


「してたよ」全員の声が、揃った。


陸は、黙った。焚き火の向こうで、シィラが小さく笑った。静に魔法の手ほどきをしながら、こちらを見ている。ガロードは、いつもの定位置で、剣を膝に乗せて座っていた。


「で」と柚希が、立ち上がった。「この子の力、まだ、誰も、ちゃんと見てないんでしょ」


「ああ」と陸。「この前、来たばっかりだからな」


「なら、試そう」柚希が、弓の弦を軽く弾いた。「あたしも、ちょうど、体を動かしたい」


「夜勤明けで?」


「だから、だよ」


行き先は、静が選んだ。


「南の外れに、霧の出る沼があります」と静。普段は、口数が少ない。「瘴気で、毒や麻痺を受ける。視界も悪い。だから、敬遠されてて」


「めんどくさそうな場所だな」と宗介。


「だから、いいんです」と静。ちらりと、ユニコーンを見た。「光の眷属なら……何か、できるかもしれない」


陸は、静のその視線に気づいた。普段、感情をあまり出さない静が、新入りの力を見たがっている。


「行くか」と陸。


南の沼は、噂どおりだった。


足元が、ぬかるんでいる。一歩ごとに、靴が沈む。そして、何より、霧が濃かった。数メートル先が、もう白く霞んでいる。空気が湿って、重い。鼻の奥に、饐えたようなにおいが、絡みつく。


「うわ、なにこれ」とハル。先頭で、気配を探っている。「前、ぜんぜん見えない。これ、《夜目》でも、霧は晴れないんだ」


ノクスからもらった《夜目》は、暗闇を見通せる。だが、霧は、暗闇とは違う。光はあるのに、見えない。


「……っ」大和が、急に膝をついた。「なんか、体、しびれて」


「瘴気だ」と雪乃。手をかざす。「麻痺の初期症状。長くいると、動けなくなる」


雪乃が、《浄化》を唱えた。大和のしびれが、引いていく。だが、それも一時的だった。沼の瘴気は、絶えず立ちのぼっている。浄化しても、また、すぐに蝕まれる。


「これ、きりがないよ」とハル。「雪乃ちゃん一人じゃ、もたない」


陸は、足元のユニコーンを見た。


ユニコーンは、霧の中で、じっと立っていた。その角が、ゆっくりと光を強めていく。何かを、感じ取ったように。


陸は、命令しなかった。


「お前は、どうしたい?」とだけ、聞いた。


ユニコーンが、陸を見上げた。一度、首を縦に振った。そして、額の角が、まばゆく輝いた。


純白の光が、ユニコーンを中心に、放射状に広がっていく。眩しいわけではない。柔らかくて、あたたかい。月の光を、何倍にもしたような。


その光が触れたところから、霧が晴れていった。


白くよどんでいた空気が、押しのけられる。視界がひらける。沼の全貌が、見えてきた。広い水たまりと、点々とある足場。そして、その光に照らされて、瘴気そのものが、薄れていく。


「うそ」とハルが、声を上げた。「霧が、消えてく」


大和が、自分の手を、握ったり開いたりした。


「しびれが……ない」


ユニコーンの光は、ただ明るいだけでは、なかった。瘴気を払い、毒を浄め、麻痺を解いていた。その光の届く範囲では、誰も状態異常を受けなかった。


陸の視界の隅に、システムの表示が出た。


 聖獣ユニコーンの《浄化の光》

 範囲内の状態異常を、継続して無効化する

 味方のHPを、毎秒、わずかに回復する


「継続して、無効化……」と雪乃が、その表示を見て、絶句した。「《浄化》を、永遠に唱え続けてるのと、同じってこと。そんな魔力消費、人間には、無理」


「だろうな」と陸。


「だろうな、じゃ、ないでしょ」と雪乃。


陸は、肩をすくめた。


柚希が、晴れた視界の先を見ていた。弓を構える。


「光のおかげで、見える」と柚希。「沼の向こう。何か、いる」


最初に動いたのは、沼の魔物たちだった。


水面が盛り上がり、毒を滴らせた大型の蛙が、何匹も跳ねてきた。口から、紫色の霧を吐く。だが、その毒霧は、ユニコーンの光に触れた瞬間、霧散した。


「毒が、効かない」と宗介が、笑った。「やりやすいったら」


宗介が、踏み込んだ。霧が晴れているから、足場がはっきり見える。一匹目を斬り、残像が二匹目を追う。《残像斬》。


柚希が、弓を引いた。


「狼は、横に跳ねる。蛙は……」呟きながら、放つ。「上に、跳ねる」


二本の矢が、同時に宙を飛んだ。《二射》。跳ねた蛙の着地点ではなく、跳ねる、その頂点を、矢が貫いた。湿った風に乱されても、矢は、まっすぐ飛んだ。ゼフィロの《風の導き》。


「二匹、同時」とハルが、口笛を吹いた。それから、自分の影に沈み、蛙の群れの背後にぬっと現れる。挟み撃ちの位置取り。


ジオが、地面から蔦を伸ばした。逃げようと水に潜った蛙を、蔦が絡め取り、引きずり出す。沼のぬかるみに、ジオが固い足場を盛り上げた。みんなが踏ん張れるように。


モフは、前に出ていた。横から跳びかかってきた蛙の体当たりを、その、もふもふの体で受け止める。びくともしない。守るだけ。攻撃はしない。


フェニクスが、陸の頭の上で、くしゅん、とくしゃみをした。小さな炎が飛び、毒霧の残りを焼き払った。


そして、小夜は。


肩の上で、あくびを一つした。それだけで、近くにいた蛙たちが、びくりと固まり、後ずさった。


陸は、その全部を、ただ見ていた。


「俺、何もしてないんだが」


「知ってる」と柚希が、次の矢をつがえながら、言った。


雑魚を片付けたころ、沼の奥の水面が、大きくうねった。


泥と水を撥ね上げて、巨大な蟇が姿を現した。体は、岩のようにごつごつして、背中から絶えず、紫色の毒霧を噴き出している。その霧が、ユニコーンの光に押されながらも、また、すぐに満ちてくる。


 沼の主・毒霧大蟇

 推奨レベル四十一


「でかい」とハルが、ごくり、と喉を鳴らした。


大蟇が、ぶわっ、と毒霧を噴き出した。今度のは、量が違った。あたり一面が、紫に染まる。ユニコーンの光が押し返そうとするが、霧の勢いが勝った。視界が、また奪われていく。


「視界、また悪く……」と雪乃が言いかけて、咳き込んだ。瘴気が、濃すぎる。


陸は、ユニコーンを見た。ユニコーンも、苦しげに、角の光を明滅させている。一体だけでは、この毒霧の本体を、押さえきれない。


大蟇の、ぎょろりとした目が、陸を捉えた。最も動いていない、最も無防備に見える、その人間を。長い舌が、鞭のように、陸めがけて飛んできた。


次の瞬間だった。


肩の上の小夜の目が、金色に燃えた。空気が、ずん、と重くなる。あくびとは、まるで違う。大蟇の、伸びきった舌が、その金色の眼光に射すくめられ、空中で、ぴたり、と止まった。竦んだのだ。主に牙を向けたことで。


モフが、陸の前に、巨体を滑り込ませた。喉の奥で、低く唸る。普段、一度も出したことのない声だった。


フェニクスが、頭上で燃え上がった。普段のくしゃみの炎では、ない。一回り大きな、炎の翼が開く。


ジオが、地面を震わせた。大蟇の四本の足に、太い蔦がいっせいに巻きつき、その巨体を、沼に縫い止めた。


陸に敵意を向けた。ただ、それだけのことで、神獣たちが、いっせいに牙を剥いた。


陸は、自分めがけて止まった舌を見て、ふう、と息を吐いた。


「俺は、平気だぞ。そんなに、怒るな」


誰も、聞いていなかった。


竦んだ大蟇を好機と見て、陸は、ユニコーンに声をかけた。


「お前は、攻めなくていい」と陸。「みんなを、照らしてやってくれ。それが、お前の力だろう」


ユニコーンが、陸を見た。その瞳が、嬉しそうに揺れた。角の光が、これまでで一番、強く輝いた。


だが、それは、敵を撃つ光では、なかった。仲間を包む光だった。


光が、ギルド全員に降り注ぐ。霧が晴れる。毒が浄められる。傷が癒えていく。そして――


 《灯火の加護》発動

 仲間が、近くにいるほど、全員のステータスが上昇する


ユニコーンを中心に、みんなが寄り集まっている。霧の沼で、はぐれないように、自然と近づいていた。その近さが、加護に変わった。


「体が、軽い」と宗介が、剣を握り直した。「こんなの、初めてだ」


「攻めるよ」と柚希。ユニコーンのすぐそばで、弓を引き絞った。加護の光が、彼女の矢に宿る。「狙うのは、毒袋。背中の、いちばん膨らんでるところ」


ジオの蔦が、大蟇を縫い止めたまま。動けない。


モフと大和が、二枚のタンクで前に並んだ。大蟇の、振り回す前足を、二人がかりで受け止める。大和が、歯を食いしばった。


「重っ……でも、退かない」


小夜の眼光が、大蟇を竦ませ続ける。フェニクスが、炎の翼で、噴き出す毒霧を片端から焼き払う。霧が、晴れたままに保たれる。静が、地に足をつけ、唱えた。


「《消滅の爆炎》」


音のない爆発が、大蟇の右半身を、防具ごと消し去るように、抉った。沼の水が、蒸発して、白い湯気が立つ。


そして、ユニコーンの光が、その全員を底上げする。


陸は、何も命じなかった。ただ、その真ん中に立っていた。


「今だ」と柚希が、言った。


宗介が、駆けた。加護を纏った、《残像斬》。三つの残像が、大蟇の背の、毒袋に、次々と斬りつける。皮が、裂ける。


その裂け目に。


柚希が、矢を放った。《二射》。二本の矢が、寸分の狂いもなく、裂け目に吸い込まれていった。


毒袋が、内側から弾けた。


大蟇が、断末魔の声を上げて、沼に沈んでいった。あとには、晴れた空気だけが、残った。


霧の晴れた沼に、夕方の光が、差し込んでいた。


陸の視界に、控えめな通知が、いくつか灯った。レベルが、一つ、上がった。宗介たちも、同じだった。高いレベル帯だから、上がり方は、ゆるやかだ。それでも、確かに、一つ。


「あたしは、据え置きか」と柚希が、肩をすくめた。「まあ、いい。追いつかれるのも、悪くない」


もともと、柚希が一番高い。微々たる経験値では、針は動かない。それでも、差は、少しずつ縮まっている。


「終わったね」とハルが、その場に座り込んだ。「ユニコーンちゃん、すごいじゃん。何も、攻撃してないのに」


陸は、足元のユニコーンを見た。光は、もうおさまって、また、ぬいぐるみほどの大きさに戻っている。つぶらな目で、陸を見上げていた。


「こいつも、攻撃はしないんだな」と陸。「霧を払って、毒を消して、みんなを照らすだけだ」


モフが、のっそりと近づいてきて、ユニコーンの隣に座った。攻撃しない者、同士。


「俺と、同じだな」と陸が、笑った。


「いや、陸くんは、何もしてないだけだから」と柚希。


「同じだろ」


「違うよ」


拠点に、戻った。


焚き火が、いつものように燃えていた。シィラと、ガロードが、待っていた。


「どうだった」とガロードが、聞いた。


「ユニコーンが、霧を晴らした」と陸。「攻撃はしないけど、いないと、困る」


ガロードが、ユニコーンを見た。ユニコーンは、焚き火のぬくもりに誘われたように、火のそばで丸くなっていた。小夜が、その背にもたれて、寝ている。


「光の眷属が、火のそばで眠るか」とガロード。どこか、面白がるような声だった。「あの孤独な神の、眷属が、な」


シィラも、火を見ていた。


「眩しい光は、人を遠ざける」とシィラ。ぽつりと。「弱い光は、人を呼ぶ。……皮肉なものだ」


柚希が、焚き火の輪の中で、あくびをした。夜勤明けの疲れが、出たのだろう。目が、とろんとしている。


「柚希、寝てるなら、落ちろよ」と陸。


「起きてる」


「目、閉じてるぞ」


「……ちょっとだけ」


柚希が、火を見ながら、小さく言った。


「あのね。夜勤、しんどくて。でも、今夜、ここに来たら、なんか……戻ってこられた、気がする」


陸は、その言葉に、手を止めた。


ずっと前に、柚希が言った言葉を、思い出した。「ちゃんと、帰ってこられた?」と。あのときは、ゲームの中の無事を聞いているんだと、思っていた。でも、たぶん、それだけじゃ、なかった。柚希にとっても、ここは、帰ってくる場所になっていた。


「ああ」と陸は、言った。「おかえり」


柚希は、もう答えなかった。火のそばで、目を閉じていた。


その時だった。


遠くで、雷の音がした。


陸は、空を見上げた。星が、出ていた。雲は、一つもない。晴れた夜空だった。


なのに、また、雷が鳴った。低く、長く。まるで、誰かが、苛立って、舌打ちをしたように。


肩の上の小夜が、ぴくり、と耳を立てた。寝ていたはずなのに。その目が、空の一点を、にらんでいる。


「……あいつか」と陸は、呟いた。


認めない、と言った神が、いた。また見ている、と言った神が。


晴れた空の雷は、すぐにやんだ。だが、その余韻が、夜の底に、残っていた。


陸は、ヘッドセットを外した。時計は、深夜、一時前を指していた。


最後の神に会って、七柱、全部に会った。それで、終わりだと、思っていた。でも、たぶん、終わって、いない。


認めない、と言った、あの雷の神は、まだ、こっちを見ている。


陸は、ぬるいコーヒーの缶を、ゴミ箱に捨てた。


開発室は、その雷を観測していた。


 ラドンAI、桐島陸の拠点周辺で、断続的な放電を検知

 ラドンAIの観測継続時間が、最長記録を更新


「また、ラドンです」とこはるが、モニターを見ながら、言った。「ずっと、桐島さんを見てます。一度も、観測を切ってません」


「認めない、と言いながら、目を離せない」と三浦。「いちばん執着してるのは、あの神かもしれんな」


こはるが、別のモニターに、目を移した。


「ユニコーンも、すごかったです。攻撃、一回もしてないのに、ボスを倒しちゃった」


「あの男のギルドは、そういうのばかりだ」三浦が、薄く笑った。「攻撃しない、タンク。攻撃しない、補助。命令しない、リーダー。なのに、いちばん、強い」


アルテのログが、流れた。


アルテのログ:

「霧の沼で、白い眷属が、初めて戦った


いや、戦って、いない


霧を晴らし

毒を浄め

仲間を照らした


それだけだった


それで、勝った


桐島陸のまわりには

攻撃しない者が

集まっていく


守る者、支える者、照らす者


そして

攻撃しないことが

いちばん、強い


七柱の神に、会った

六柱は、彼を認めた


だが、一柱が

まだ、空をにらんでいる


雷は、やまない


物語は

まだ、終わらない」


夜空のどこかで、また、かすかに、雷が鳴った。誰もいない、晴れた空で。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


最後の神まで会いきった陸たちですが、物語は終わりません。今回は、四体目の神獣ユニコーンの初陣でした。攻撃をひとつもせず、霧を晴らし、毒を浄め、仲間を照らすだけ。それでボスを倒してしまう——守るだけのモフ、支えるだけのジオに続く、「攻撃しない者」がまた一人。陸の焚き火に集まるのは、いつも、そういう者たちです。そして夜勤明けの柚希が「戻ってこられた気がする」とこぼす場面は、ずっと前の「ちゃんと帰ってこられた?」の、もう一つの答えのつもりで書きました。最後に鳴った晴れた空の雷——認めないと言ったあの神が、まだ陸を見ています。次話、雷の神がどう動くのか。お楽しみに。


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