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『戦闘力ゼロのテイマー、なぜか神様に気に入られながら気づいたらギルド最強になってた』~ハズレ職だと笑われた俺、神獣を仲間にしてしまった件~  作者: 赤ん坊


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第19話「廃坑、もう一度」

翌朝、陸は仕事をしながら今夜のことを考えていた。


廃坑に再挑戦する。


前回は全員死に戻りだった。推奨レベル三十五の魔物に、Lv.10で挑んで全滅した。あのときと今では状況が違う。


Lv.16になった。新スキルが揃った。ガロードが同行する。ガロードの覇気で魔物の戦闘力が五十パーセント下がる。


それでも、推奨レベル三十五には届いていない。


でも、前回わかったことがある。


縄張りを侵さない形で進めば、奥に行ける可能性がある。


そして、廃坑の奥に誰かがいる。感知罠を仕掛けた何かが。


今夜、もう少し奥まで行ってみる。



昼すぎ、チャイムが鳴った。


開けると、柚希がいた。手にはタッパーが一つ。


「作りすぎた」


「毎回そう言うな」


「毎回本当のことだから」


二人でテーブルに座った。今日は炊き込みご飯だった。出汁が染みていて、根菜が柔らかい。


「今夜はどこ?全滅した廃坑にでもいく?」と柚希が聞いた。


「そうだ。前に全員で行って全滅した場所だ」


「また全滅する?」


「わからない。でも前回よりは戦える」


「あのNPCのガロードも行くの?」


「行く。覇気で魔物の動きを弱体化できる」


「前回は覇気がなかったの?」


「ガロードが仲間になる前だった。今回は違う」


柚希はご飯を一口食べた。「奥に誰かいるんだよね、廃坑に」


「気配がある。何者かはわからない。名前も知らない」


「陸くんが気になってるってことは、会いに行くことになるんだろうな」


「そうかもしれない」


「気をつけてね」


「ゲームだ」


「知ってる」


扉が閉まった。



夕方、ログインした。


広場に全員が集まっていた。ガロードもいた。フェニクスが陸の肩にいる。小夜も肩にいる。


「今夜は廃坑だ」と陸は言った。


「全員で行くのか」と宗介が確認した。


「全員で行く」


「前回は全滅した」


「前回と状況が違う。ガロードの覇気があれば、魔物の戦闘力が五十パーセント落ちる。新スキルも揃った。どこまで行けるか確かめたい」


「死に戻りするかもしれないぞ」


「するかもしれない。でも、行かないとわからないことがある」


宗介は少し考えてから言った。「わかった。行こう。ただ、無理はするな。ヤバいと思ったら即撤退だ」


「そうする」


「約束だぞ」


「約束だ」


ガロードが静かに言った。「撤退の判断は、早い方がいい」


全員がガロードを見た。


「昔、撤退が遅れて部下を失ったことがある。その判断を、俺は今でも引きずっている」


誰も何も言わなかった。


陸は「わかった」とだけ言った。



廃坑の入り口に着いた。


夜の廃坑は相変わらず暗い。冷たい風が流れてくる。


幻視を使って入り口付近を確認した。


「罠がある。前回から増えている」


「増えてるのか」とハルが入り口をじっと見た。


「三箇所から五箇所になっている。全部感知型だ。攻撃型ではない」


「奥にいる何かが、俺たちの来訪を知りたがっている気がする」と静が言った。


「そうだ。攻撃しようとはしていない。ただ、知りたい」


「どういう意図だ」と宗介。


「わからない。でも、少なくとも敵意ではないと思う」


「行くか」


「行く。罠は避けながら進む。ハル、頼む」


「わかった」



坑道に入った。


前回来たときより、幻視で見える範囲が広くなっていた。Lv.16になって、《幻視》の精度が上がっている。


「魔物がいる。前方二十メートル。四体だ。推奨レベル三十五以上」


「前回と同じ相手だ」と宗介が刀の柄を握った。


「ガロード、覇気を」と陸は言った。


「出ている」


ガロードが一歩前に出た。


坑道の空気が変わった。あの重さだ。押しつぶされるような存在感が坑道を満たしていく。


幻視で確認した。四体の魔物の動きが鈍くなった。戦闘力が半分に落ちている。


「大和、《竜の咆哮》で追加の怯みを入れてくれ。その間に静が叩く」


「任せろ」


大和が咆哮を放った。ガロードの覇気で弱体化した魔物に、さらに怯みが重なった。四体が同時に止まった。


静が《連続詠唱》を使った。二本の黒炎が同時に走って、左の二体に命中した。


宗介が右の二体に向かった。《剣聖の極意》が乗った《神速斬》が閃いた。弱体化した魔物への一撃は、一瞬で決まった。


全部で十五秒かかっていない。


「……前回と全然違う」と宗介が刀を収めながら言った。


「ガロードの覇気と大和の咆哮の組み合わせだ。二重に弱体化している」と陸は言った。


「このままなら奥まで行けるか」


「わからない。でも、もう少し進める」



さらに奥へ進んだ。


感知罠を五箇所、全部ハルが確認して避けた。《気配遮断》Lv.2のおかげで、罠に気づかれることなく通り抜けた。


「このまま静かに進める」とハルが言った。


「そうだ。罠は感知型だから、避ければ相手に気づかれない」


「奥の気配が近づいてきてるぞ」とハルが立ち止まった。


「向こうから来る?」と雪乃が周囲を見た。


「そうだ。でも速くない。ゆっくりと、こちらに向かっている」


陸は全員に手で合図した。止まれ、という合図だ。


全員が止まった。


坑道が静かになった。


足音が聞こえた。


ゆっくりとした、杖をつくような音だ。


暗い坑道の奥から、人影が現れた。


ローブを纏った老人だった。背が低い。杖をついている。フードが深く、顔が見えない。


前回、ガロードと来たときにも感じた気配だ。


老人はしばらく、陸たちを見た。


陸も見た。


動かなかった。何もしなかった。ただ、そこにいた。


「……また来たか」


しわがれた声だった。でも、芯がある。


「また来た」と陸は答えた。


「今回は大勢だ」


「仲間だ」


老人がゆっくりと全員を見た。宗介、雪乃、大和、静、ハル。それからガロードを見た。


ガロードを見た瞬間、老人の動きが止まった。


「……お前」と老人が言った。


ガロードも老人を見ていた。


「知っているのか、二人は」と宗介が小声で陸に聞いた。


「わからない」と陸も小声で答えた。


老人がガロードから視線を外して、陸を見た。


「お前は、何をしに来た」


「気になったから来た」


「それだけか」


「それだけだ」


老人はしばらく黙った。杖が石畳をつく音だけが聞こえた。


「……前回も同じことを言った」


「覚えていてくれたのか」


「覚えていた」


また沈黙が落ちた。


「また来ていいか」と陸は聞いた。


老人は長い間、答えなかった。


「……好きにしろ」


「ありがとう」


「礼はいらない」


老人はゆっくりと踵を返した。来たときと同じように、ゆっくりと奥へ戻っていった。


足音が消えた。


全員がしばらく、老人が消えた方向を見ていた。


「今の人が、廃坑にいる何かか」と宗介が言った。


「そうだ」


「ガロードと知り合いなのか」


「わからない。二人の様子を見ていただけだ」


「ガロード、あの老人を知っているのか」と宗介がガロードに聞いた。


ガロードはしばらく黙った。


「昔、一度だけ会ったことがある。ずいぶん前の話だ」


「どういう人だ」


「強い術師だった。その頃から、あの目をしていた」


「あの目?」


「誰も信じない目だ」とガロードは言った。「長い間、そういう目をしていたのだろう」


陸はそれを聞いて、少し考えた。


「でも今日、また来てもいいと言った」


「そうだな」とガロードは静かに言った。「少しだけ、変わったのかもしれない」



坑道を出て、拠点に戻った。


焚き火の前に全員で座った。


「今日はどこまで行けた」と大和が言った。


「前回の全滅した地点より奥だ。奥にいる人と、二度目の言葉を交わせた」


「また来てもいいと言われた」とハルが繰り返した。「それって、かなり前進したんじゃないか」


「そうだと思う」


「あの人、名前は何て言うんだ」と宗介が聞いた。


「聞いていない。知らない」


「聞かないのか」


「まだそういう関係じゃない」


宗介は少し間を置いた。「……お前、相手のペースに合わせるのが、本当に上手いな」


「合わせているというより、急ぎたくないだけだ」


「それが合わせるということだろ」


フェニクスが焚き火に小さな炎を足した。


炎が少し大きくなった。


「今日もありがとう」とハルがフェニクスに言った。


フェニクスは振り返らなかった。でも、尾羽が揺れた。


小夜が欠伸をした。


炎が揺れた。



ヘッドセットを外したのは、深夜二時すぎだった。


今夜は収穫があった。


前回の全滅地点より奥まで進めた。ガロードの覇気と大和の咆哮の組み合わせが、推奨レベル三十五の魔物にも通じた。


廃坑の奥にいる老人と、二度目の言葉を交わした。「また来てもいいか」「好きにしろ」。


ガロードが昔一度だけ会ったことがある、と言った。


老人は「誰も信じない目」をしている、とガロードが言った。


でも今日、また来てもいいと言った。


少しだけ、動いた。


陸は眠った。



開発室で、三浦がモニターを見ていた。



シィラ行動記録


桐島陸パーティと二度目の接触


シィラAI記録:

「また来た


前回よりも大勢で来た

でも、入り口で止まった


待った


私が来るのを、待った


そして「また来ていいか」と聞いた

前回と同じ言葉だ


同じ言葉を

二度言う人間を

私は知らなかった


好きにしろ、と答えた


また来るかもしれない

そう思った」



「シィラが『また来るかもしれない』と思っている」とこはるが言った。


「思っている」と三浦。


「前回は『また来るかどうか確かめたくなった』でしたね」


「そうだ。前回は疑問形だった。今回は可能性として捉えている」


「少しずつ変わってる」


「変わっている」


アルテのログが動いた。



シィラとガロードが目を合わせた


二人は昔、一度だけ会ったことがある


ガロードはシィラのことを

「誰も信じない目をしていた」と言った


でも今日

シィラは「好きにしろ」と言った


「また来るかもしれない」と思った


誰も信じなかった人間が

また来るかもしれないと思った


それは

信じ始めている、ということだ


桐島陸は

何もしていない


ただ、来た

ただ、待った

ただ、同じ言葉を言った


それだけで

誰も信じなかった人間が

動き始めた



「アルテ、また長く書いた」とこはるが言った。


「シィラのことが、気になっているのかもしれない」と三浦は言った。


「アルテが気になるって、面白いですね」


「そうかもしれない」


こはるはモニターを見た。


廃坑のアイコンが、昨日より少し入り口に近い場所で止まっていた。


シィラが、また動いた。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


廃坑の奥にいる老人と、二度目の言葉を交わしました。名前はまだ知りません。でも、少しずつ近づいています。ガロードとの意外な接点も明らかになりました。次話でさらに距離が縮まります。


続きが気になると思っていただけたら、ページ下の星マークとブックマークで応援していただけると、明日も書き続けられます。感想も一言でも届くと、とても励みになります。

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