522回目 誰もやってくれないから、自分でニート生活を作ってるのだ 5
「平和だ……」
何もない日々が続く。
それをトモルは穏やかに受け止めていた。
とはいえ、本当に何もないというわけではない。
ヒライワツミ王国にちょっかいをかけてくる他国の事もある。
他国は相変わらず、ある程度持ち直すと戦争を仕掛けてくる。
その都度敗退し、国力を低下させていく。
そうして停滞と衰退を繰り返し、一向に良くなる気配がない。
戦争などせず、国内の整備でもしてればいいのに、とトモルは思う。
しかし、栄えてる所があれば、そこから奪いたくなるのが人情なのだろう。
その為、不毛な戦争を何度も仕掛けてくる。
その都度、ヒライワツミ王国と、その緩衝地帯の隣国に跳ね返されていく。
そんな事が続いてるうちに、今度は隣国が動き出す。
衰退していった大陸各国。
そこに軍勢を進め、各地を占領制圧していっている。
それにより国土は急速に拡大。
勢力を取り戻そうとしていた。
ただ、そうなるとかつての英雄王の国が黙ってない。
一度は大陸制覇を成し遂げた。
その誇りが侵略をよしとしない。
その版図だった国々も、いつしか偉業を我が事のように誇りにしている。
諸国に分裂した今もだ。
むしろ、諸国に分裂したからこそ、強烈に英雄王の存在を担ぎ出している。
いずれも「我が国こそが、英雄王の後継者」と名乗っているのだ。
それを理由に大陸制覇の理由にしている。
そんな彼らに対して、隣国は敵でしかない。
また、ヒライワツミ王国の属国としか言えない立場だった小国だ。
そんな小国に制圧されるなど、英雄王の末裔を自称する国々が受けいられるわけがない。
隣国と大陸諸国との間に戦争が起こっていく。
その戦争も長く続いていく事になる。
何せ、小さくなったとはいえ、ある程度安定を取り戻した隣国である。
戦乱と荒廃が続く大陸諸国に負けるわけがない。
周辺の何国かをあっさりと制圧し、国土を巨大化させる。
それから今度は防衛に回って敵を撃退。
国力が増進するのを待って、再び侵攻していく。
この繰り返しで、隣国達は急速に拡大していった。
ヒライワツミ王国の隣国からはじまったので、歪な形に国土は成長していく。
しかし、国土面積だけならヒライワツミ王国に匹敵するようにもなった。
そんな隣国も、ある程度の大きさになると侵攻を止める。
十分な国土面積に、資源を手に入れた為だ。
拡大した国土を統治する機構も整備しなくてはならない。
戦乱で荒廃した国土を立て直す必要もある。
侵攻兵力も限界に達した。
これ以上、国土を増やす余裕はない。
そこまできて、ようやく隣国による大陸侵攻も終わった。
これに対して英雄王の国だった諸国もだんだんと団結するようになる。
大きな脅威が迫ってきて、小競り合いをしてる余裕はなくなった。
以後、様々な離合集散を繰り返し、諸国は幾つかの国々に統合されていった。
こうして大陸は再びある程度の大きさを持つ国に分かれるようになる。
ただ、そんな国々も、決してヒライワツミ王国に手を出そうとはしなかった。
どれほどの国力差があるのかを、彼らも熟知している。
負けるのが分かって戦争を仕掛けるほど愚かではなかった。
トモル領もその恩恵を受ける。
ヒライワツミ王国が前に出てるおかげで、余計な争いに巻き込まれる事がない。
思う存分に、国ごと引きこもっていられる。
とはいえ、万が一戦争を仕掛けてきても問題は無い。
今なら以前よりも簡単に敵を撃破できる。
労力を割くのは無駄で手間であるので、なるべく避けたいが。
そういった事態に陥る事なく、何十年と過ぎ去った。
ヒライワツミ王国の外側はうるさいが、トモルの知った事ではない。
そうして外がうるさい間に、トモルは己の望むものに向かっていく。




