3-13 あれが来る
(体育館で感じたあれがいる)
空翔は悪寒を感じた。
校門を出ようとしていた足を止める。
学校の外に、あれを感じる。
空翔は踵を返し、校舎へ戻った。
しばらく歩いて、足を止める。
まだ、あれの存在を感じる。
もう少しだけ離れる。
(体育館で感じたのと少し違う。黒が強くなってる)
あれがかろうじて分かるところで、空翔は足を止めた。
そして、その存在が消えるのを待った。
三十分以上、空翔はその場を動かなかった。
同様に、あれの動きもない。
「空翔、何してるの?」
声をかけてきたのは、真理亜だった。
その隣に、美樹もいた。
「私の帰り待ってたの? 一緒に帰る?」
「ううん」
「真理亜、何かあったんじゃない?」
「えっ? そうなの空翔?」
美樹は、いつもと違う空翔の様子に気づいていた。
「あれがいるんだ」
「あれ?」
「先週、体の調子がおかしくなった時のあれ」
「なんですって」
真理亜の表情が険しくなる。
「わかった、私が様子見てくる」
「真理亜、私もつきあうよ」
「ダメ」
空翔の制止を聞かず、二人は校門へと向かった。
空翔はその場から動けず、離れていく二人を見送った。
「あっ」
二人が校門を出た瞬間、空翔はあれの波が大きく揺れるのを感じた。
黒が、さらに強くなる。
「真理亜! 美樹!」
空翔は校門まで走り、二人を呼び止めた。
二人が空翔の方を向く。
それと同時に、あれの波も空翔に向かう。
また黒が強くなる。
空翔は校門を出て、二人とは反対方向へ走り出した。
(あれが来る)
角を曲がったところで、空翔は止まった。
あれは空翔との距離を縮めている。
再び走り出す空翔。
しかし、あれを振り切ることが出来ないでいた。
途中、雑居ビルが立ち並ぶ場所に出る。
二つのビルの間には、空翔がようやく通れるくらいの隙間があった。
体を横にして、その隙間を通り抜ける。
その後、右に左に曲がりながらしばらく走り続けた。
ようやく、あれが感じられなくなったところで走るのを止めた。
大きく迂回して、真理亜と美樹に合流した。
空翔は一度、後ろを振り返る。
「早く帰ろう」
空翔は二人の背中を押して、逃げるように家に帰った。




