3-12 懇願
「仙堂美晴と申します」
「慶東大附属病院の医師ですか……」
美晴は名刺を唯に渡して自己紹介する。
唯はそれ以上何も言わず、玄関越しで美晴は話を進める。
「四条空翔君のことなんですが……」
「空翔に何か?」
「採血の際、顔色が悪かったので、少し心配になりまして」
(それは、あなたに採血されたのが原因よ)
「念のため、その後の体調を確認しておいた方がいいと思いまして」
「それで住所を調べて家まで来たんですか?」
「それは……、何かあったら大変なことになりますので……」
美晴は考えなしに訪問したことに気付き、言い訳を考える。
「……学校の方が親切に、教えてくれたんです」
咄嗟に口から嘘を吐く。
(そんなわけ、あるはずないじゃない)
唯は美晴の嘘を見破る。
「空翔くんの様子はどうですか?」
「問題ありません」
間髪入れずに返す唯。
美晴は気押されて黙った。
二人に緊張が走る。
「お願いします。空翔くんの検査を……」
美晴は絞り出すように声を出した。
そして、まくしたてるように説明する。
「とても重要な研究に空翔くんの協力が必要なんです。空翔くんは素晴らしい可能性を秘めています。絶対に悪い話ではありません」
(やはり、目的は空翔なのね)
「お断りします」
唯は毅然と言い放つと扉を閉めた。
「お願いします。少しだけでいいんです。私には、どうしても確かめなければならないことがあるんです」
扉越しに訴える美晴の声は、唯の心を動かすことはなかった。
美晴はその後、調べてもらった連絡先に何度も電話をする。
しかし、一度も繋がることはなかった。




