<幕間>先生
日本の思念体外力場研究は遅れている。
だからといって、日本に能力者がいないわけではない。
むしろ、能力研究先進国のような、磨かれた宝石ではなく、多くの原石が眠っている国といえる。
海外からの視線は熱い。
毎日のように、能力研究の関係者、エージェントが来日する。
しかし、同時に問題も起きていた。
能力者を無理やり海外へ連れ出そうとしたという報告も、警察や関係各所に多数寄せられていた。
日本政府は対策に乗り出した。
拉致、脅迫といった犯罪の取り締まりを強化した。
しかし、合法的な勧誘にはほとんど打つ手がなかった。
早い者勝ちの囲い込み合戦に、日本は連敗中であった。
*
「ステフィーヌ、準備はいいか?」
「はい、先生」
「その呼び方いつまで続けるんだ。私にはサージニアスという名前がある」
「嫌です。先生こそ私のことステフと呼ぶ約束忘れてませんか?」
サージニアスはステフィーヌの質問に答えず話を進める。
「今回、血液をこちらのものとすり替える」
サージニアスの手には、血の入った採血管が握られていた。
「彼らのことはこの国はおろか他の国にも知られるわけにはいかない」
言い終わると、サージニアスは目の前にある建物に目を向ける。
入口には『児童健康検査機構 第三検査所』と看板が掲げられていた。
二人は施設へと進んでいく。
入口には、監視カメラが設置されていた。
サージニアスは懐から何かを取り出した。
よく見ると、小さな虫の形をした人工物であった。
虫はサージニアスの手を離れ、カメラにはりついた。
「これで、カメラは生成動画を流し続ける」
二人は堂々と正面から施設に入っていった。
鍵のかかった扉やセキュリティシステムが、ステフィーヌのブレスレットのボタン一つで解除されていく。
二人は十数分もかからぬうちに目的を果たし、施設から立ち去った。




