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そんじょそこらにいない普通の人  作者: 城日ひろし
第3章 そんじょそこらにいない普通の家族(1)

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3-10 僥倖

机の上には、人の名前が連なる紙。

その大半に赤い取消線がひかれている。

遠心分離機が回り続ける音が響く。

その様子をじっと見つめる女医がいた。


美晴は使える機材が限られていることに、もどかしさを感じていた。


遠心分離機が止まった。

美晴は次の検体をセットし、スタートボタンを押した。

そして、分離した血液の検査を始める。


「この学校は全滅ね」


紙一枚分のリストが全て取消線で埋まる。

それまでの学校からは一つか二つ、EかD判定の検体があった。

美晴が欲する、C判定以上の検体はまだ出ていない。

未検査の検体数がどんどん減っていく。


「やっぱり駄目なのか……もっと検体が必要ね、別の地域はまだ採血やってるのかしら」


残った検体が遠心分離機にかかる中で、美晴はつぶやいた。

それから数分後、遠心分離機が動きを止める。

最後の十本を機材から取り出し検査する。



そして、奇跡が起こる。



「……A?」


美晴が手を止める。


「違う……これ、A判定じゃない」


美晴はその検体を取り上げ、すぐに再検査を行う。


「Aより上……? これは、S……S判定よ」


歓喜の声が検査室に響き渡る。

美晴は、指で検体の採取者の名前をなぞる。


『四条空翔(しじょうそらと)』


世界から否(いな)を突き付けられた美晴が、世界を覆せる証拠を手に入れた。


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