3-09 問題ないはずだった
空翔が帰宅する。
「ただいま」のあいさつもなしに、そのまま自分の部屋に向かおうとする。
「おかえりなさい。どうしたの、空翔」
扉の開いた音に気付いた唯が空翔を出迎える。
「……ごめん、気分がすぐれない。少し休ませてくれる?」
「いいけど、何かあったの?」
「……わからない」
「わかったわ、今はゆっくり休みなさい」
空翔は部屋に入るなり、着替えもせずにベッドに横たわる。
しばらくすると、そのまま眠りに就いた。
*
空翔が目を覚ました時、既に日は沈んでいた。
額の違和感に手を当てると、冷却シートが貼られていた。
ゆっくりとベッドから起き上がりリビングに向かう。
「空翔、具合はどう?」
リビングで、唯が迎えてくれる。
「食事できそうか?」
賢人も心配して声をかける。
いつもの夕食時間は過ぎており、テーブルには一人分の食事が残されていた。
「うん、少しお腹すいた」
「それじゃ、すぐ温めなおすね」
唯はキッチンに向かった。
空翔は賢人に尋ねる。
「真理亜は?」
「今日は宿題が多いみたいだ……空翔のこと心配していたよ」
「また、後でお礼言っとく」
唯が戻ってきて空翔の前にお皿を並べた。
「いただきます」
空翔が食事をする様子を眺める賢人と唯。
しばらくして、空翔が口を開いた。
「今日、健康診断があってね……」
空翔は、今日の体育館での様子を話し出す。
「最後に血を採るんだけど、その時に頭が痛くなって、吐き気もして。何とか堪えて検査を受けてきた」
「大丈夫?」
「うん、今はだいぶ良くなった」
唯が心配して声をかける。
それに続いて賢人も空翔に問いかける。
「空翔、少し聞いていいか? その時、周りに誰がいた?」
「血を採るお医者さん、後ろに並んでるクラスメートが数人」
「誰から、何を感じ取った?」
「わからない。注射器を見たクラスメートがいつもと違った。あと前から一人しかいないのにいくつも波が来た」
「そうか、疲れてるとこ聞いて悪かった」
「ごちそうさま。ごめん、少し残しちゃった……部屋に戻ってゆっくりさせて」
空翔は唯と賢人を残し、自分の部屋に戻った。
賢人と唯は目を合わせた。
少し沈黙の後、賢人は口を開いた。
「力を使わない。みんなと同じように生活する……普通にしていれば、問題ないはずだった」
「それだけじゃ、駄目なのかもしれないね」
「どちらにしても、採血は避けるべきだった」
「今後悔しても、仕方がないわ。異常が見つかないことを祈るだけよ」
「蟻の一穴堤を破る」
「私たちは油断してたということね」
「行動を起こす時か」
「何か手はあるの? 慎重に行動しないと」
「ああ、彼らに動いてもらう」




