3-07 一穴Ⅱ
とある小学校の体育館に、生徒が四列に並んでいた。
それぞれの列の先には、白衣を着た医師が椅子に座って生徒に一人ずつ対応する。
医師は採血セットを手に血を採取していく。
体育館の入り口から一番近い列で、採血を行ってるのは仙堂美晴であった。
「はい、もう終わりましたよ」
美晴は、かたく目を閉じた、女子生徒に優しく声をかけた。
女子生徒がほっとした表情を浮かべる。
美晴は採取した血液を、用意された採血管へ順番に移していく。
採血管をケースに収めると、ポケットに手を入れ別の採血管を取り出す。
注射器に残った血を、その採血管に移す。
そして、今度は私物のカバンの後ろに隠れたケースに収めた。
夕方、列が小さくなっていく。
そして、最後の一人の採血が終わった。
美晴は周りの様子を伺う。
誰の視線もないことを確認すると、カバンに採血管の入ったケースをしまい込んだ。
「それでは、お先に失礼します」
美晴は早々に後片付けを終わらせ体育館を出た。
「明日が十校目か……」
今日までで九百はいったはず。明日で千に届く。
研究室にいた頃、あれほど検体を集めるのに苦労したのが嘘のよう。
無断で持ち出しているから、最初の小学校ではドキドキしてた。
『国が国民の遺伝子情報を収集している』
周りでも国が研究に利用しているって言ってる。
私だって、大事な研究なんだから許されるはず。
採血で残った血は捨てられるのよ、そんなのあり得ない。
だから、私が大切に扱ってあげるわ。




