3-05 普通にしていれば……
「ステフィ、ただいま」
真理亜が小学校から帰ってくる。
玄関を開けると、白猫が迎える。
真理亜は自分の部屋に向かうとランドセルをベッドに放り投げると、後からついて来たステフィを抱き上げた。
「真理亜、宿題は?」
「後でする」
「空翔はちゃんとしてるわよ」
「もう、わかってるよ」
唯がやって来て釘をさす。
「また、後でね」
真理亜はステフィを降ろした。
そして、ランドセルを持ちあげると、空翔の部屋に向かった。
「空翔、一緒に勉強しよ」
二人は椅子を並べて座った。
「真理亜、三つ目の問題、間違ってる」
「えっ、ホントだ。空翔ありがとう」
真理亜は消しゴムを手に取り、間違いを消した。
「終わった。お待たせ、晩ごはん行こ」
先に勉強を終わらせていた空翔に声をかけた。
「ただいま」
二人がリビングに向かうと、賢人が仕事から帰ってきた。
「父さんおかえりなさい」
「お父さんおかえり、もう晩ごはん出来てるよ。早く手を洗って来て」
「はい、はい」
空翔が賢人を迎え入れた。
続いて真理亜は賢人を急かした。
四人揃っての夕食はいつもと変わらず和やかに進む。
「だいぶ秋らしくなってきたわね」
唯がしみじみと言った。
「そういえば今年も藤嶺学園の学園祭、文化の日だったかしら」
「そうだよね、今年も美樹を誘って行かないと」
「学園祭、地域の人なら誰でも参加できて、評判がとてもいいのよね」
唯と真理亜が学園祭の話で盛り上がる。
「学園って中高一貫校だよな、真理亜は中学はどうする?」
賢人が会話に加わる。
「普通に近くの中学に行くよ」
「公立の中学校より学園の方が近いわよ」
「学園? お受験なんて考えてないよ」
唯が「近くの」に反応したが真理亜はそれを否定した。
「ぼくは、学園に通いたい」
今まで聞くだけだった空翔が発言する。
「普通に過ごすのに、今のままでは人との付き合いが多すぎるんだ。家の近くでも学校の子に会うから、ずっと気をつけないといけない」
「そうだな、ずっと周りに気を配っていては、生活できない」
「もちろん、力を見せたりしないよ。それでも気づく人はいる」
「人との関係が多くなれば、それだけ注意することも増える」
「学園なら、今より普通にできると思うんだ」
賢人と空翔の間で話が進んでいく。
「よし! わたし、学園行く」
「真理亜、さっきは普通に公立に行くって……」
「空翔、私が先に行って見てくるよ」
真理亜は家族の前で宣言した。




