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そんじょそこらにいない普通の人  作者: 城日ひろし
第3章 そんじょそこらにいない普通の家族(1)

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3-02 不遇

病院の廊下を、白衣を着た女医が静かに歩いていく。

すれ違う患者たちが軽く会釈をする。

彼女は微笑みを返すが、どこか作り笑いに見えた。


廊下の奥、執務室の扉には『仙堂美晴』と書かれたプレートが掲げられている。

仙堂は執務室に入ると、微笑みは消えた。


「……何故。何故、私が呼ばれないの」


落胆に満ちた声が漏れる。


美晴の脳裏に、つい先ほどの病院の休憩室の様子がよみがえる。


『慶東大学に、思念体外力場、いわゆる異能力を扱う研究所が新設され、明年四月開所を迎えます。この研究所は慶東大学医学部附属病院の一研究室が独立し異能力研究を専門に行う機関として運営されます。異能力研究の先進国である中国、アメリカ、ロシアに対して日本の研究が大きく遅れた状況に、政府として重点的な予算措置が検討されています……』


テレビ画面から流れてくるニュースが過去の記憶を呼び覚ます。


美晴は慶東大学医学部に所属し、異能力研究論文もいくつか発表していた。

論文の評価もそれなりに高かった。

しかし、彼女は一研究室の一研究員という立場から抜け出せなかった。

男尊女卑の考えが残る現場で、美晴には頼れる人脈もなかった。

美晴は追い出されるように研究室を去った。


意にそわない形で、病院の勤務医の立場になってからも、研究の現場に戻りたいとの思いは小さくなることはなかった。

美晴は新設される研究所を強く志望していた。


そんな中、研究所入りが決まった知人の話を聞いた。

その人物に特に目立った実績はない。

研究実績がある自分も選ばれるはずだと信じていた。


だが――美晴に声がかかることはなかった。


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