【章間】とある病院の一室
重い扉で仕切られた病棟。
両開きの扉を両手で押し開き中へと進む。
扉をくぐった先は、外の空気と全く違っていた。
鍵付きの個室。
監視カメラが設置された病室。
ベッド以外何もない簡素な部屋。
一人、上半身を起こして窓を見る女がいた。
ここ数日の雨が今日も続く。
雨が窓を打ち付ける。
夏の暑さが急に身を潜め、気温が一気に下がっていた。
カチャ
「仙堂さん今日はお加減いかがですか?」
扉の鍵が開き、看護師が病室に入ってきた。
仙堂と呼ばれる女性は、看護師を見る。
しかし、また窓の外に視線を戻した。
「体温はかりますね」
女はされるがままに体温計を脇に挟んだ。
「三十六度五分、いつも通り平熱ですね」
看護師は検診を終えると、また鍵をかけて出て行った。
ナースセンターに戻った看護師は報告する。
「九号室の仙堂さん。問題ありません」
「ご苦労様、何も異常なしね。報告書では昨晩は大変だったみたいよ」
「そうなんですか」
「昨日停電で、普段電気をつけたままにしてるから――」
「非常電源は?」
「切り替わったけど、数秒の暗闇で駄目だったみたい」
「仙堂さんどれくらい入ってるんですか?」
「私がここに赴任した年だから、四年になるかな」
「昔から電気をつけたままなんですか?」
「さあ、私も新人だったから直接見てないのよ」
後輩の看護師が突然思い出したように話し出す。
「そうそう、定期面会では必ず面会に来る人いましたよね」
「そういえば、いたわね」
「どういう関係なんでしょう」
「患者のことをとやかく言わない」
看護師長の注意を受け、看護師たちは普段の業務に散っていった。




